米国鉄道協会、鉄道停止で1日当たり20億ドル以上の経済損失発生と試算
(米国)
ロサンゼルス発
2022年09月12日
米国内の鉄道で労使交渉が継続する中、米国鉄道協会(AAR)は9月8日、鉄道サービスが停止した場合に1日当たり20億ドル以上の経済的損失が生じると試算した報告書を発表した。
報告書では、労使交渉が決着せず、鉄道サービスが停止した場合、毎日7,000本以上の列車が運休し、小売製品の不足や広範な製造業の操業停止、雇用喪失、数十万人の旅客鉄道利用者への影響を引き起こす可能性を指摘。仮に輸送方法を鉄道からトラックに切り替えた場合、1日当たり46万7,000台の長期輸送用トラックが必要となるが、そのために必要なトラックや運転手を確保できないとしている。
AARの社長兼最高経営責任者(CEO)のイアン・ジェフリーズ氏は、既にいくつかの組合が暫定合意していることに言及した上で、労使交渉の決裂により業務停止に至った場合には、「議会は、従業員に報い、鉄道利用者に不必要な経済的損害と不確実性を阻止するため、大統領緊急委員会(PEB)の勧告を実施するために行動しなければならない」と述べ、鉄道サービス停止の回避に向けて議会の関与を訴えた。
米国鉄道業界では2020年1月から、主に賃上げを争点とした労使交渉が貨物鉄道会社とその従業員の労働組合の間で継続している。連邦政府機関の全国仲裁委員会(NMB)による仲裁が不調に終わったため、ジョー・バイデン大統領は2022年7月15日にPEBを創設する大統領令に署名し(2022年7月20日記事参照)、PEBは8月16日に解決に向けた勧告をバイデン大統領に報告していた()。勧告の報告後30日間で合意に至らない場合には、9月16日からストライキやロックアウト、雇用条件の一方的な変更が可能となる。これまでに交渉に参加している12組合のうち5組合(組合員数2万1,000人以上)が暫定的な合意に達している(関連ブラック ジャック、9月8日記事参照)。
(永田光)
(米国)
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