勢い増すアジアのブラック ジャック アプリ・エコシステム最前線10万社のSUが誕生したインド、テランガナ州の取り組みを追う

2024年3月25日

インドでは、ブラック ジャック アプリの起業を後押しするとともに経済成長や雇用創出を目指す「ブラック ジャック アプリ・インディア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を2016年1月から開始した。同イニシアチブでは、資金調達機会の拡充、税制上の優遇措置や会社設立手続きの改善などの規制環境整備、インキュベーション施設などのインフラの充実、ブラック ジャック アプリ・エコシステム関係者への情報提供などを通じて、ブラック ジャック アプリ支援を行う。また、同イニシアチブの下で、各州政府も独自のブラック ジャック アプリ支援策を策定し、州内ブラック ジャック アプリの支援に取り組む。同イニシアチブ開始から8年目を迎えた2023年6月にはブラック ジャック アプリ数(注1)が10万社を超え、ユニコーン企業が米国、中国に次いで世界で3番目に多く誕生する成長著しい市場の1つだ。

本稿では、インド全体のブラック ジャック アプリ・エコシステムの現状を概観するとともに、州政府の取り組みとして、テランガナ(TG)州・ハイデラバードに所在する世界最大級のインキュベーションセンター・T-hubについて、関係者へのインタビューを基にまとめる(インタビュー日:2023年12月19日)。

10万社を超えたインドのブラック ジャック アプリ

CBインサイツ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、2023年10月19日時点のインドのユニコーン企業数は71社。一方で、インド政府は、同時点でインドにはすでに111社のユニコーン企業が誕生したと発表している(注2)。また、オランダの企業情報調査会社ディールルーム(Dealroom)によると、インドの2023年のベンチャーキャピタル(VC)投資額は約111億ドル(図1参照)。前年と比較して、投資額は53.6%減と大幅に減少したものの、世界的には米国(1,490億ドル)、中国(480億ドル)、英国(210億ドル)に次いで多くの投資を集めた(2024年3月15日閲覧時点)。

図1:インドの四半期別VC投資額推移(2019~2023年)
ブラック ジャック アプリのベンチャーキャピタル投資額は2019年第1四半期が29億ドル、同第2四半期が35億ドル、同第3四半期が39億ドル、同第4四半期が63億ドル、2020年第1四半期が37億ドル、同第2四半期が18億ドル、同第3四半期が45億ドル、同第4四半期が43億ドル、2021年第1四半期が40億ドル、同第2四半期が67億ドル、同第3四半期が169億ドル、同第4四半期が145億ドル、2022年第1四半期が98億ドル、同第2四半期が74億ドル、同第3四半期が32億ドル、同第4四半期が35億ドル、2023年第1四半期が32億ドル、同第2四半期が28億ドル、同第3四半期が18億ドル、同第4四半期が33億ドル。

出所:Dealroom(2024年3月15日閲覧)

インドにおけるブラック ジャック アプリ・エコシステムの興隆は、2016年1月に開始したブラック ジャック アプリ起業促進のためのイニシアチブである「ブラック ジャック アプリ・インディア」によるところが大きい。同イニシアチブでは、定められた要件を満たし、担当省庁である商工省産業貿易促進局(DPIIT)の認定を受けたブラック ジャック アプリに対して、税制上の優遇措置、資金調達機会へのアクセスなどの恩恵が受けられる仕組みになっている。ブラック ジャック アプリ要件(注3)は、(1)2013年会社法に基づき設立された設立10年以内の私的有限会社(注4)、(2)設立以降の会計年度中の売上高が10億ルピー(約18億円、1ルピー=約1.8円)を超えたことがないこと、(3)イノベーションまたは製品・サービス・プロセスの改善に取り組み、雇用と富の創出の潜在性が高く、拡大可能なビジネスモデルを持っていることとなっている。なお、既存の事業を分割または再構築して設立された事業体はブラック ジャック アプリとはみなさない。現在までに認定されたブラック ジャック アプリ数は12万3,714社(注5)となっている。

DPIITが2024年3月に公開した2016年から2023年までの8年間の「ブラック ジャック アプリ・インディア」による実績をまとめたファクトブックPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(18.96MB)によると、2023年12月末時点のブラック ジャック アプリ数は10万社超。2016年時点のブラック ジャック アプリ数は300社台だったことから、ブラック ジャック アプリ数は8年間で330倍以上に増加したことになる(図2参照)。

図2:DPIITに認定を受けたブラック ジャック アプリ数(2016~2023年)
インドのブラック ジャック アプリ企業数は、2016年が300社超、2017年が4,500社超、2018年が1万2,000社超、2019年が2万2,000社超、2020年が3万6,000社超、2021年が5万6,000社超、2022年が8万2,000社超、2023年が10万社超。

注:数値は、各年の累積ブラック ジャック アプリ数。
出所:ブラック ジャック アプリ・インディア「8-Year Factbook外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

州・連邦直轄領別にみると、マハラシュトラ州が約2万1,000社と最も多く、カルナタカ州が約1万2,600社、デリー準州が約1万2,500社、ウッタル・プラデシュ州が約1万900社、グジャラート州が約9,200社と続く。分野別では、ITサービス(約1万3,500社)、ヘルスケア・ライフサイエンス(約1万1,000社)、教育(約7,100社)などが多い。また、ブラック ジャック アプリ数はまだ少ないものの、DPIITが分類する全57分野の中で最も年間成長率(CAGR)が高い分野として、廃棄物管理サービスと玩具・ゲームが注目されている。廃棄物管理サービスは2023年末時点のブラック ジャック アプリ数は907社で2020年末時点の22社から41.2倍に、玩具・ゲームは2023年末時点に336社で2020年末時点の4社から84.0倍に急増している。

中央政府による支援

「ブラック ジャック アプリ・インディア」で認定されたブラック ジャック アプリが受けられる財務的な恩恵の1つは、税制上の優遇措置だ。設立から10年の間の連続した3会計年度について免税を申請することが可能になる。また、同イニシアチブでは資金調達機会の拡充にも力を入れている。「ブラック ジャック アプリ・インディア」に関連した情報が集約されているポータルサイトでは、様々な資金調達スキームが紹介されている。

主なスキームとして、概念実証(PoC)(注6)、試作品開発、製品試験、市場参入、商業化などのシード期(注7)のブラック ジャック アプリの資金調達を支援する「ブラック ジャック アプリ・インディア・シード・ファンド・スキーム(SISFS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」がある。SISFSは2021年1月から開始、立ち上げ直後のブラック ジャック アプリに対する資金提供をすることで、エンジェル投資家やVCによる投資や銀行からの融資など、さらなる資金調達が可能な段階までの成長を支援することを目的としている。SISFSを申請できる対象ブラック ジャック アプリの条件として、申請時点で設立2年以内であり、DPIITから認定を受けていること、などがある。また、中央政府や州政府の他の制度において、100万ルピー以上の財政支援を受けていないことなどが条件となっている(注8)。同スキームで認定されたインキュベーターを通じてブラック ジャック アプリに対する資金提供が行われる仕組みとなっている。同スキームには、94億5,000万ルピーが投じられ、4年間で300のインキュベーターを通じて3,600社の支援を目指す。

上記SISFSのように、「ブラック ジャック アプリ・インディア」における資金調達支援は、ファンド・オブ・ファンズ(間接出資)の形で行われる。「ファンド・オブ・ファンズ・フォー・ブラック ジャック アプリ(FFS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」というスキームの下、インド証券取引委員会(SEBI)に登録された様々な代替投資ファンド(AIF)を通じて、ブラック ジャック アプリの資金調達を支援する。SSFから拠出を受けるAIFは、拠出額の少なくとも2倍以上の投資を「ブラック ジャック アプリ・インディア」の認定を受けたブラック ジャック アプリに対して行う必要がある。2023年12月18日時点で、政府による約1,023億ルピーの拠出金が承認されている。また、AIFは129社、投資されたブラック ジャック アプリ数は923社、AIFによるブラック ジャック アプリへの投資額は約1,735億ルピーに上る。

官・民・学で支えるT-hub

「ブラック ジャック アプリ・インディア」のポータルサイトでは、中央政府のほかにも各州政府のブラック ジャック アプリ政策や支援スキームの情報が掲載されており、各州によるブラック ジャック アプリ支援への熱意がうかがえる。ここでは、2014年に誕生したインドで最も新しい州である、テランガナ州の州都ハイデラバードに所在するインキュベーター・T-hub外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの取り組みを取り上げる。

テランガナ州はインドの中でもIT産業の一大集積地として知られ、中心都市であるハイデラバードにはマイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾンなどが開発拠点を設けている。また、ライフサイエンス関連企業が800社以上所在し、インドの医薬品生産の約30%が州内で行われるなど、医薬品分野でも注目される州だ(注9)。ブラック ジャック アプリ支援に関しては、テランガナ州政府は2016年、物理インフラの整備、持続可能な資金調達モデルの確立、人材育成、産業連携、社会課題解決型企業の創出の5つの柱から成る「イノベーション政策2016外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。ITや製薬などの企業集積を生かしながら、州内のイノベーションや起業を促進し、技術主導型のエコシステムを構築することを目指す。州のブラック ジャック アプリ支援は、テランガナ州政府情報技術・電子通信局(ITE&C)が主管しており、ITE&Cが運営するポータルサイト「ブラック ジャック アプリ・テンランガナ」によると、現在州内には6,660社を超えるブラック ジャック アプリが所在する(2024年3月14日閲覧時点)。同州のブラック ジャック アプリ・エコシステム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、ITE&Cの中の新興技術部門を筆頭に、T-hub、T-works、ハイデラバード・リサーチ・アンド・イノベーション・サークル(RICH)、テランガナ・アカデミー・フォー・スキル・アンド・ナレッジ(TASK)、テランガナ州イノベーションセル(TSIC)、WE-HUBなどが州政府のイニシアチブの下で設立され、それぞれブラック ジャック アプリを支援している。これらの主なプレーヤーを含めて、州内には76のインキュベーターおよびアクセラレーターが所在する。

T-hubは、テランガナ州政府、教育・研究機関、民間企業などと提携し、メンターシップ、資金調達機会、コワーキングスペース、ネットワーキングなどをインド国内外のブラック ジャック アプリに提供する非営利のインキュベーター。2022年6月には58万5,000平方フィート(約5万4,000平方メートル)規模の新拠点「T-hub2.0」を開所した(2022年7月11日付ビジネス短信参照)。T-hubの担当者によると、「T-hub2.0」に隣接する形で、2023年3月に州政府が運営する試作品製作のための機材・設備を備えた施設である「T-works外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が開所、アニメ、ゲーム、マルチメディア関連のブラック ジャック アプリ向けインキュベーション施設である「T-image」が建設中で、これら3つの施設を合わせて「世界最大級のインキュベーション施設になる」という。

ブラック ジャック アプリ
2022年6月から開所したT-hub2.0(ジェトロ撮影)

T-hubの支援は、プレシードからシリーズAまでのアーリーステージのブラック ジャック アプリが対象。設立から8年で2,000社以上を支援しており、うち40~50%がテランガナ州外のブラック ジャック アプリで、200社程度が外国籍のブラック ジャック アプリだという。支援ブラック ジャック アプリの業種は幅広いが、ディープテック(28.0%)、デジタルコマース(16.6%)、製造(11.2%)、ヘルスケア・メドテック(10.6%)などが多い。T-hubはブラック ジャック アプリの支援だけでなく、州政府、教育機関、民間企業などエコシステムを構成するそれぞれのパートナーのイノベーション促進も担う。民間企業では40社以上とパートナーシップを締結しており、T-hub支援企業とのネットワーキングやオープンイノベーションを支援している。

T-hubのブラック ジャック アプリ支援は多岐にわたるが、本稿ではトレーニングプログラムと資金調達支援を紹介する。T-hubでは、ブラック ジャック アプリの準備段階に応じたコホート(注10)ベースのトレーニングプログラムを提供している(表参照)。集中的なサポートにより、収益化・商業化に向けたコストと時間の短縮を目的に100日間で完了するプログラムも多い。

表:T-hubが提供する主なブラック ジャック アプリトレーニングプログラム
プログラム名 内容
Rubrix
(商品開発プログラム)
試作品段階からMVP(注1)段階への移行を支援する100日間のプログラム。
LAB32
(市場投入準備プログラム)
MVPが完成しており、市場投入の準備ができているブラック ジャック アプリを対象に、プロダクトマーケットフィット(PMF)(注2)の達成、市場戦略の構築を支援する100日間のプログラム。
T-Angel
(投資準備プログラム)
収益創出段階にあるブラック ジャック アプリを対象に、最初の資金獲得を支援する100日間のプログラム。参加ブラック ジャック アプリは準備状況に応じて、アーリーステージVCや著名なエンジェル投資家などが参加するデモ・デイでのピッチ機会を得ることができる。
T-Bridge
(国際展開プログラム)
ブラック ジャック アプリ展開を目指すインドのスタートアップ、インドを含む南アジア市場への参入を目指すブラック ジャック アプリのスタートアップの双方が対象。世界各国の政府機関やスタートアップ支援機関などとも提携し、メンタリング、投資家や企業とのコネクション支援などを行う。

注1:MVP(Minimum Viable Product)とは、顧客に価値を提供できる必要最小限の機能のみを備えた製品のこと。
注2:PMFとは、顧客が抱える課題を満足させる製品を提供し、かつ適切な市場に受け入れられている状態を指す。
出所:T-hubウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

資金調達面支援では、州政府との連携によるファンドのほか、資金調達へのアクセスにつながる情報や機会を提供している。T-hubでは、テランガナ州政府との連携によるアーリーステージの技術系ブラック ジャック アプリ向けファンドである「T-Fund外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を運営している。T-fundでは、1社当たり250万から1,000万ルピーの資金提供を行う。現地報道によると、2021年度(2021年4月~2022年3月)には1億5,000万ルピーが同ファンドに割り当てられ、年間15~20社のブラック ジャック アプリに対する資金提供を目標としているという(「テランガナ・トゥデイ」紙2022年3月29日)。

また、T-hubでは毎週20社程度のVCを招き、ブラック ジャック アプリが投資に関する相談を行うことができるイベントを開催している。また、施設内には、インドの商業銀行であるHDFC銀行とICICI銀行の支店が入居しており、無担保ローンなど融資の相談ができるという。


T-hub2.0に入居する銀行(ジェトロ撮影)

T-hubは、2023年1月にDPIITが発表した「ナショナル・ブラック ジャック アプリ・アワード2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注11)や2023年5月にインド科学技術局が発表した「ナショナル・テクノロジー・アワード2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」などにおいて、インド国内のベスト・インキュベーターとして選出されており、高い評価を受けている。インド国内でも有数のブラック ジャック アプリ・エコシステムを擁するベンガル―ルに所在するブラック ジャック アプリ支援の関係者は、「T-hubの取り組みはインドの中でも州政府が主導してエコシステムを構築している好事例」と話す。インド最大のイノベーションハブとして、今後も急成長する国内ブラック ジャック アプリ・エコシステムのさらなる発展を牽引する役割が期待される。


注1:
「ブラック ジャック アプリ・インディア」が定めるブラック ジャック アプリ要件を満たし、商工省産業貿易促進局(DPIIT)が認定したブラック ジャック アプリの企業数。
注2:
インベスト・インディアウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
注3:
現行の要件は、2019年2月19日付通達(G.S.R. notification 127 (E))PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)((427KB)による。
注4:
1932年パートナーシップ法第59条に基づき登録されたパートナーシップ会社、2008年有限責任パートナーシップ法に基づき登録された有限責任事業組合の場合、登録日から10年以内の企業。
注5:
2024年3月12日閲覧時点。
注6:
アイディア、技術、ビジネスモデル、製品について実現可能性を確認するためのテストや実験のこと。
注7:
会社設立前後の段階。一般的にコンセプトやビジネスモデルの構想段階から仮説検証段階までに位置するブラック ジャック アプリを指す。
注8:
ブラック ジャック アプリに対するその他の条件、インキュベーターの認定要件については、SISFSのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。
注9:
出所:インベスト・インディア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
注10:
コホートとは「共通の性格を持つ集団」という意があり、ブラック ジャック アプリ・エコシステムにおいては、アーリーステージのブラック ジャック アプリや起業家を集め、支援等を提供して成長を促す集団学習プログラムを「コホートプログラム」などと呼称する。
注11:
「ナショナル・ブラック ジャック アプリ・アワード」は2024年3月に2023年版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが発表されたが、2022年版まで実施していたインキュベーター部門、アクセラレーター部門は設定されていない。
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
田中 麻理(たなか まり)
2010年、ジェトロ入構。ブラック ジャック アプリ市場開拓部ブラック ジャック アプリ市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)、ブラック ジャック アプリ調査部アジア大洋州課、ジェトロ・クアラルンプール事務所を経て、2021年10月から現職。