アクセス向上も、物流に課題
ベトナム北中部の投資環境(後編)
ブラック ジャック 勝ち 方12月23日
北部の首都ハノイ市と、中部の商業都市ダナン市の間に位置する北中部6省(タインホア省、ゲアン省、ハティン省、クアンビン省、クアンチ省、トゥアティエン・フエ省)について、前編では、中国・香港系企業の存在感が高まるゲアン省、有望な候補地として期待の高まるタインホア省やトゥアティエン・フエ省など、外資製造業の進出状況などを中心に各省の現状と特徴を概観した。後編では、延伸されている高速ブラック ジャック 勝ち 方の実走や、工業団地・企業関係者へのヒアリングなどの結果を踏まえ、外資製造業進出の可能性と課題を検証する(図参照)。
高速ブラック ジャック 勝ち 方でアクセス向上
北中部では、南北高速ブラック ジャック 勝ち 方(注)の建設が進み、2024年10月時点で、ハノイ市から南方へ300キロ以上離れたハティン省北部まで延伸している(ブラック ジャック 勝ち 方7月18日付ビジネス短信参照)。2023年4月にタインホア省、同9月にゲアン省、ブラック ジャック 勝ち 方6月にハティン省までの区間が相次いで開通したため、ハノイ市と北中部間の移動時間は、2023年以前と比べ2~3時間程度短縮されたことになる。
実際に、ブラック ジャック 勝ち 方が2024年8月、ハノイ市からダナン市まで、南北高速道路と一般道を組み合わせながら陸路を走行したところ、ハノイ市からハティン省までの約340キロを約5時間で走行することができた(表参照)。しかし、ハティン省からダナン市までの約400キロは、7時間以上を要した。高速道路が未整備のハティン省~クアンチ省は、主に国道1号線を走行することになり、道路幅は比較的広いが、市街地や住宅地の中を走行することがある。特に昼間は、バイクや歩行者も道路を使うため、自動車専用道路と比べ速度は出せない。
省都(省) | 距離 | 所要時間 | 使用したブラック ジャック 勝ち 方 |
---|---|---|---|
タインホア省(タインホア市) | 159km | 約2時間 | 高速ブラック ジャック 勝ち 方 |
ゲアン省(ビン市) | 291km | 約4時間 | 高速ブラック ジャック 勝ち 方 |
ハティン省 (ハティン市) |
336km | 約5時間15分 | 高速ブラック ジャック 勝ち 方+一般道 |
クアンビン省(ドンホイ市) | 一般道 | ||
クアンチ省(ドンハ市) | 608km | 約10時間 | 一般道 |
トゥアティエン・フエ省(フエ市) | 高速ブラック ジャック 勝ち 方、一般道 | ||
ダナン市 | 767km | 約13時間30分 | 高速ブラック ジャック 勝ち 方、一般道 |
注1:ハノイ市内の高速ブラック ジャック 勝ち 方乗り口「Phap Van」を起点とする。
注2:交通状況により所要時間は異なる場合がある。
出所:ブラック ジャック 勝ち 方による実際の走行結果を基に作成
南北高速ブラック ジャック 勝ち 方のブラック ジャック 勝ち 方状況は良好で、トンネルなどを除くほとんどの区間は片側2車線、全4車線になっており、今回の視察時は支障なくスムーズに走行することができた。しかし、路肩が狭く、非常時の停車スペースがないため、故障車両や事故が通行を妨げる可能性がある。6車線への拡張を計画する区間もあるが、現在の路肩の幅や、ブラック ジャック 勝ち 方外の盛り土をみる限り、拡張工事の実現はまだ先になりそうだ。
また、南北高速ブラック ジャック 勝ち 方の北中部内の区間にサービスエリアはなく、高速ブラック ジャック 勝ち 方周辺の用地開発はまだ進んでいない。これまで、高速ブラック ジャック 勝ち 方から少し離れたところを走る国道1号線が幹線ブラック ジャック 勝ち 方として使われ、1号線沿いに住宅地や飲食店が建設されてきたためだ。利便性と安全性の向上のためにも、長距離ドライバーが休息や食事のとれる施設は不可欠だ。高速ブラック ジャック 勝ち 方利用者の需要増に伴う今後のブラック ジャック 勝ち 方周辺の施設開発に期待したい。
国際輸送手段に課題
南北高速ブラック ジャック 勝ち 方の延伸により陸路のアクセスが向上した一方、海路・空路のアクセスは依然として課題が残る。ゲアン省やハティン省は、地方政府が港湾開発を推進する意向を示しているものの、現時点では北中部には国際輸送が可能な港湾はなく、開発スケジュールも不透明だ。このため、国際輸送には北部沿岸のハイフォン市や中部のダナン市の港を使用することになる。しかし、たとえばゲアン省から陸路の場合、ハイフォン市は5時間、ダナン市は9時間ほどかかる。ハイフォン市と、タインホア省の北に位置する北部ニンビン省とをつなぐハイフォン・ニンビン高速ブラック ジャック 勝ち 方がまだ建設中のため、ハイフォン市と北中部を最短距離でつなぐことができる高速ブラック ジャック 勝ち 方はなく、北中部から高速ブラック ジャック 勝ち 方でハイフォン市に向かう場合には、内陸にあるハノイ市手前まで走行する必要がある。
さらに、安定した国内ロジスティクスの確保も課題だ。在ゲアン省のある日系企業は「日本から調達した部材が当社に到着するまで、2週間を要す。さらに、台風などがあると予測がつかない。地場の安い運送業者に依頼し、製品に損失が出たこともあった」という。また、荷主が混載輸送を希望した際に、貨物が集まりにくい場合があるようだ。
また、航空輸送の活用可能性は、現時点では高くない。北中部6省のうちタインホア省、ゲアン省、クアンビン省、トゥアティエン・フエ省の4省は空港を有し、クアンチ省も新たに空港を建設中だ。しかし、稼働中の上記4空港の旅客便の就航路線は、ほとんどはハノイ市や南部ホーチミン市とつなぐ国内線に限られる。ゲアン省のビン空港は、ベトナム航空が深センと結ぶ国際線就航を計画するという報道がある。進出数が多い中国企業や香港企業の需要を踏まえたものとみられる。しかし、貨物輸送で活用するには新たな滑走路や倉庫の整備が必要で、国際空港としての運用にはまだ時間がかかりそうだ。
行政手続きは、自社での対応負荷が増える可能性も
各種行政手続きにあたっては、地方当局による運用や外資系企業への慣れなどの問題から、企業が集積するハノイ市やホーチミン市の近郊に比べ、困難に直面する可能性がある。ブラック ジャック 勝ち 方が2024年8~9月に実施した「」では、ベトナムの投資環境のリスクの最上位に「行政手続きの煩雑さ(許認可など)」が挙げられ、その回答率はASEANの中で最も高い。さらに「法制度の未整備・不透明な運用」や「税制・税務手続きの煩雑さ」などもリスクの上位に入る。
ベトナムでは、中央政府から地方行政への権限移譲が比較的進んでおり、行政の許認可関係の実務の多くは地方当局が行う。当局の熱意や判断次第ではスムーズに手続きが進む場合があるが、当局やその担当者によって法令の運用や解釈が異なるために、必要書類やワークフローが一定でなく、ある省では問題なかった事項が別の省では指摘を受けて停滞する場合もある。行政当局や地場のサービスプロバイダーが、外資系企業への対応や、手続き・制度運用などの実務に不慣れなケースも考えられる。実際に、法人設立の手続きや操業までに必要な各種許認可に想定以上の時間を要すケースや、根拠とする法令や基準が曖昧な行政指導が入るなどの事態を経験した日系企業は多い。ブラック ジャック 勝ち 方にも、こうしたトラブルや困難に直面した進出日系企業からの相談がたびたび寄せられる。
各種手続きに対処する時間と追加コストはベトナム全域の課題であり、自社で解決できない法制度や行政手続きの問題は、たとえば、ベトナム日本商工会議所や在ベトナム日本大使館などのチャンネルを通じ、地方当局や中央政府などに対してレターを出し、打開策を探ることもある。ただし、地方省では、現時点で情報交換できる同じ地域内の日系企業が多くないため、自社で確認や調整をせざるを得ない業務負荷が増える恐れがある。その点は、リスクの1つとして認識しておく必要がある。
前後編で概観したように、ベトナム事業展開において、ハノイ市やホーチミン市周辺に次ぐ新たな選択肢として、北中部6省への進出も検討の価値はある。高速ブラック ジャック 勝ち 方や工業団地の整備により、外資製造業を受け入れる環境が整いつつあり、早期参入でメリットを得ることも期待できる。他方、生活環境、物流や行政手続きにおけるデメリットやリスクは残る。トータルコストを慎重に見極める必要があるだろう。
- 注:
- 南北高速ブラック ジャック 勝ち 方は東側と西側の2路線の計画があり、現在は東側の開発が進む。北部ランソン省から南部カマウ省まで、第1・第2段階の建設区間と、それ以前に開通している区間を合わせて、全長2,063キロを予定。西側は2030年以降の完成を予定する計画があるが、現在は未着工。
ベトナム北中部の投資環境
- ブラック ジャック コツのサービス
- アクセス向上も、物流に課題
- 執筆者紹介
-
ブラック ジャック 勝ち 方・ハノイ事務所 ディレクター
萩原 遼太朗(はぎわら りょうたろう) - 2012年、ブラック ジャック 勝ち 方入構。サービス産業部、ブラック ジャック 勝ち 方三重、ハノイでの語学研修(ベトナム語)、対日投資部プロジェクト・マネージャー(J-Bridge班)を経て現職。