グローバルな知財紛争解決に「香港ブラック ジャック コツ」の魅力

ライセンスロイヤルティーの支払いや技術・営業秘密漏えいなど、国境を越えた知的財産契約にトラブルが発生した際の紛争解決手段として、国際ブラック ジャック コツ（注1）が注目されている。訴訟なら、契約に関連するビジネスが行われる各国・地域で一つ一つ提起しなければならない。しかしブラック ジャック コツなら、1回の手続きで複数国・地域の紛争を同時にコストパフォーマンス良く解決することが期待できる。また、紛争関連分野の識者をブラック ジャック コツ人として委任することで、高い専門性による正確な判断も期待できそうだ。争点自体も、当事者間で決定できる。訴訟審理が原則として公開されるのに対して、ブラック ジャック コツプロセスは非公開だ。このように、国際的な知財紛争解決では、訴訟よりもブラック ジャック コツの方がしばしば好都合だ。

英国ロンドン大学クイーン・メアリー校は2021年5月6日、「2021年国際ブラック ジャック コツ調査」で、世界の望ましいブラック ジャック コツ地（注2）のランキングを発表した。その中で3位にランクインしたのが香港だ（2021年5月14日付ビジネス短信参照）。香港では、これまでにも多くの商事ブラック ジャック コツが取り扱われてきた。知財紛争は、商事ブラック ジャック コツ案件の争点の1つとして扱われることが多い。また、香港では近年、国際知財紛争解決のブラック ジャック コツ地として魅力を高める取り組みが活発化している（注3）。

そこでジェトロは、経験豊富なブラック ジャック コツ専門家として、ラウス（Rouse）知的財産事務所のダグラス・クラーク（Douglas Clark）氏と、CMS法律事務所のマリエル・ディムジー（Mariel Dimsey）博士の2人にヒアリングした（2021年12月～2022年1月に聴取）。その結果から、国際知財紛争ブラック ジャック コツ地としての香港の魅力を探る。あわせて、香港での知財ブラック ジャック コツの動向を紹介する。

知財ブラック ジャック コツに重点を置き「ブラック ジャック コツ条例」を改正

香港では、知財ブラック ジャック コツの合法性が法律で明示的に認められている。2017年の「ブラック ジャック コツ条例」の改正により、知財章を新設。この新章では、香港または他の司法管轄区の管轄範囲内にある知財紛争について香港でのブラック ジャック コツで解決可能と明記をした。香港では、それまでもブラック ジャック コツを通じて知財紛争を解決すること自体は可能だった。他方で当該修正には、「知財紛争をブラック ジャック コツで解決可能であること」と「知財が関わったブラック ジャック コツ判断の強制執行は公共政策（Public Policy）に反するものではないこと」を明文化。知財ブラック ジャック コツを法律的に裏付けたかたちだ。

さらに当該知財章では、知財紛争と知的財産の定義を例示した（表参照）。さまざまな知財紛争が香港でのブラック ジャック コツで解決できることを示した。

出所：「ブラック ジャック コツ条例」103B、103Cを基にジェトロ作成

「ブラック ジャック コツ条例」103D条4(a)によると、香港内か否かを問わず、当該知財紛争を管轄する権利が与えられた「特定の主体（specified entity）」がある場合でも、香港でブラック ジャック コツ判断を下すことが可能だ。例えば、香港の競争事務審裁処が所掌する不正競争紛争や、中国の特定の行政機関がそれぞれ担当する特許権や商標権の有効性などについて、判断を得ることができる。一方、例えば、中国をブラック ジャック コツ地とする場合、特許権、商標権の有効性判断を行えるのは指定された行政機関に限られる。そのため、ブラック ジャック コツで解決することができない。このように、香港のブラック ジャック コツ廷は広い管轄権を有するため、当事者はニーズに応じた争点を高い自由度で選択することができる。

香港のブラック ジャック コツ制度がよく整備されているのは、知財紛争に特化した新規条文だけではない。例えば、「ブラック ジャック コツ条例」18条1では、当事者双方の合意なしに、ブラック ジャック コツの進行や判断についての資料を公開してはいけないことを明文化している。一部の国・地域のブラック ジャック コツ制度では機密性の保持について明文化せず、ケース・ロー（注4）やブラック ジャック コツ合意での取り決めに頼っているところもある。ライセンス条件や、特許の有効性に関する情報、営業秘密における証拠など、機密情報が多く関わる知財紛争の観点からみれば、機密性保持が明確化されていることは安心材料の1つといえよう。

香港でのブラック ジャック コツでは、当事者に対しさまざまな「暫定措置」命令を発することができる。「ブラック ジャック コツ条例」35条1（2）によると、暫定措置とは、ブラック ジャック コツ判断がなされる前に、現状の維持や、ブラック ジャック コツ手続きに対する妨害の予防、ブラック ジャック コツ判断で示される賠償請求などに充てるための財産保全や、証拠保全などの目的で執行され得るものだ。これにより、例えば、知財ライセンス契約にブラック ジャック コツ合意があるにもかかわらず一方の当事者が関連訴訟を提起することや、損害賠償・ロイヤルティー支払いを回避するための資産の移動、知財侵害の証拠隠滅などを阻止することが可能だ。

なお、「ブラック ジャック コツ条例」63条によると、香港をブラック ジャック コツ地とする場合、当事者はブラック ジャック コツ代理人およびブラック ジャック コツ人を資格・国籍問わず選任することができる。すなわち、準拠法や知財紛争の内容に応じて適切な人材を自由に選べることを意味する。一方、中国で中国法を準拠法としてブラック ジャック コツを求める場合、外国事務所の弁護士が代理人となることが原則として禁止されている。日本でも、以前は当事者の一部または全部が外国に住所を有する場合に限って、外国弁護士をブラック ジャック コツ代理人として参加させることが可能とされていた。この規制は、2020年の「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」（外弁法）改正により条件が一部緩和された。だとしても、一切の規制がない香港の方が依然として自由度が高いといえる。

国際ブラック ジャック コツで中国のゲートウェイとしての役割

クラーク氏やディムジー博士のブラック ジャック コツ経験によると、中国企業と外国企業の紛争におけるブラック ジャック コツ地として、しばしば香港が選ばれるという。中国企業と外国企業との契約に基づくブラック ジャック コツにあたっては、中国企業が中国本土をブラック ジャック コツ地とするように要求することが多い。これに対し、外国企業側は契約相手の「ホーム」での紛争解決を避けるべく、香港をブラック ジャック コツ地として提案することが多い。その大きな理由は、「一国二制度」の下で独立した司法制度を有し、後述するとおり執行性についても期待できるところにある。同時に、中国企業は香港を中国の一部と認識し、香港は中国語が堪能な専門家を多く擁する。そのため、中国企業にとっても受け入れ可能な提案となり得ることになる。

香港をブラック ジャック コツ地とする場合、「ニューヨーク条約」（注5）に基づき、その締約国でブラック ジャック コツ判断を執行することができる。これに加え、中国との間では、2000年発効の「中国本土と香港特別行政区におけるブラック ジャック コツ判断の相互執行に関する手配」と、2020年発効の同「追加手配」の下、香港で示されたブラック ジャック コツ判断は、中国の裁判所での執行が確保されている。すなわち、知財紛争の相手が中国企業だったり、中国に資産や関連事業を有する外国企業だったりする場合でも、柔軟性の高い香港でのブラック ジャック コツを通じて、ブラック ジャック コツ判断や暫定措置を中国で執行することが期待できる。

ただし、留意点もある。クラーク氏によると、特許権の有効性など特定の判断は中国で執行されない可能性がある（注6）。ただし、これを理解しているブラック ジャック コツ人なら、実効的な対処策を示すことができるという。実質的に特許有効性を争点としつつも、ブラック ジャック コツ判断ではロイヤルティー費用・損害賠償の支払いの有無についてだけ最終決定するとのことだ。有効性判断について具体的な決定を避けることで、中国での執行性を確保することが可能になる。

ブラック ジャック コツ判断の執行だけでなく、暫定措置の面でも香港は中国での執行に優位性を持つ。2019年10月に発効した「中国本土と香港特別行政区の裁判所におけるブラック ジャック コツ手続きの暫定措置の相互協力に関する手配」（以下、手配）は、香港ブラック ジャック コツにおける暫定措置の中国本土での執行を確保した。すなわち、香港をブラック ジャック コツ地とする場合、当事者は、特定の要件を満たしたブラック ジャック コツ機関（注7）を通じて、中国の裁判所に財産保全や証拠保全、行為保全の3種類の暫定措置（注8）を申し立てることが可能とされた。

暫定措置の迅速な執行は、さらなる損害の防止や相手側の財産移動を制限し、ブラック ジャック コツ判断の執行性を高めるために非常に重要な手続きになる。中国本土のブラック ジャック コツ以外では、香港でだけで中国の裁判所へ申し立て可能という点は大きなメリットといえる。香港国際ブラック ジャック コツ中心（HKIAC）の統計によると、「手配」が導入された2019年から2021年までに、中国の裁判所への暫定措置申し立てにより127億元（約2,286億円、1元＝約18円）の財産が保全された。この申請者の実に約8割が香港企業または外国企業（日本企業を含む）で、中国籍企業はわずか2割だった。最近の具体例としては、イスラエル企業と中国企業の間の特許権ライセンスロイヤルティー紛争（2021年）がある。この事案では、イスラエルの技術開発企業と中国浙江省寧波市のモジュール組立企業の間で、前者が所有する特許権のライセンスロイヤルティーをめぐって争われた。結局、香港でのブラック ジャック コツを通じた暫定措置命令に基づき、寧波市中級人民法院が当該中国企業の財産保全を執行し、ブラック ジャック コツ判断の支払金が確保された。

香港の裁判所はブラック ジャック コツフレンドリーな姿勢

香港の裁判所は、ブラック ジャック コツについて非常にフレンドリーなスタンスを有しているといわれている。すなわち、ブラック ジャック コツ合意の履行を尊重し、ブラック ジャック コツ人の判断を可能な限り執行している。例えば、ライセンス契約にブラック ジャック コツ合意があっても当事者が訴訟を別途提起する場合、香港の裁判所はブラック ジャック コツ合意の履行を優先する。例えば、2019年には、ブラック ジャック コツ合意が存在しブラック ジャック コツが進行しているにもかかわらず、中国本土の裁判所（異なる司法管轄区）に訴訟を提起した企業に対し、香港の裁判所は訴訟禁止命令（Anti-Suit-Injunction）を出した。

判断の執行地としても、香港の裁判所はブラック ジャック コツフレンドリーだ。裁判所は、ブラック ジャック コツ紛争の実質的な利益やブラック ジャック コツ判断の正確さについては判断せず、ブラック ジャック コツ廷が適法手続きに従わなかった場合にだけブラック ジャック コツ判断を取り消す。実際の状況を見ても、ブラック ジャック コツ判断の執行率は高い。HKIACのデータによると、2020年に香港で51件のブラック ジャック コツ判断が執行され（図参照）、破棄されたのは2件だけだった。

出所：HKIAC「Enforcement of Awards in Hong Kong」を基にジェトロ作成

実績ある国際ブラック ジャック コツ機関が香港に拠点

ブラック ジャック コツ地としての役割以外にも、香港は実績のある国際ブラック ジャック コツ機関を有している。上記の「2021年国際ブラック ジャック コツ調査」で評価の高い国際ブラック ジャック コツ機関とされた5機関のうち3つが香港に拠点を置いている。そのうちの1つが香港に本部を置くHKIACだ。1985年に設立されたHKIACは政府に干渉されない独立機関で、香港の代表的なブラック ジャック コツ機関と目される。2019年にロシアの常設ブラック ジャック コツ機関として初めて認定された国際ブラック ジャック コツ機関でもある（2019年5月21日付ビジネス短信参照）。同センターは知財ブラック ジャック コツにも注力。知財紛争を解決するための「知財紛争ブラック ジャック コツ人パネル」を設置している。

HKIAC以外にも、外国のブラック ジャック コツ機関が香港に拠点を置くことがある。例えば、フランスに本部がある国際商業会議所（ICC）の国際ブラック ジャック コツ裁判所（ICA）や、中国の常設ブラック ジャック コツ機関・中国国際経済貿易ブラック ジャック コツ委員会（CIETAC）などが香港拠点を有する。CIETACは、香港をブラック ジャック コツ地とした場合、CIETACの最高責任者が承認することを条件に、CIETAC所属ではないブラック ジャック コツ人に委任することが可能という特例を設けている。

ブラック ジャック コツにも、デジタル化とコスト削減の動き

新型コロナウイルスが流行する「ウィズコロナ」時代にあって、各分野でデジタル化が進んでいる。国際紛争解決の場も例外ではない。香港の国際ブラック ジャック コツ機関はオンライン紛争解決（online dispute resolution、ODR）を積極的に推進している。そもそもブラック ジャック コツには、訴訟よりプロセスがシンプルで速いという特徴がある。ODRを活用すると、当事者の移動が不要となるためさらに迅速化する。旅費などのコスト削減も期待できる。例えば、HKIACはオンラインブラック ジャック コツ案件管理プラットフォーム「HKIAC Case Connect」を発表し、このサービスの利用を2022年末まで無料として、ODRの普及を図っている。HKIACでオンライン審問を行った経験のあるディムジー博士は、同機関のODRサービスがインターネット環境やモニター設備などインフラを完備している点などを高く評価した。そのほか、リーガルテックを活用した香港発のODR機関、eBRAM国際オンライン紛争解決センターは、中小零細企業（MSMEs）向けに少額越境ODRサービスを提供するなど、オンラインに特化したサービスを提供している。

ODR以外にも、香港でのブラック ジャック コツをコスト面からさらに活用しやすくする動きがある。法律改革に関する課題を研究する政府系機関の「香港法律改革委員会」は2020年、ブラック ジャック コツの弁護士費用制度の改革を政府に提案した。この提案上、香港で現在禁止されている「結果と結びつく費用徴収構造（outcome related fee structures、ORFS）」を可能にすることが挙げられた。ORFSとは、弁護士費用の支払いについて、いわゆる成功報酬制や損害賠償額に基づく費用の支払いなどを指すものだ。ORFSが解禁されると、当事者と弁護士の相談によって費用の支払い方法や比率などを柔軟にカスタマイズできるようになる。

国際ブラック ジャック コツは、一回的解決が望めない国際訴訟に比べると、コストメリットがある。しかしそれも、あくまで比較の問題だ。ブラック ジャック コツ人やブラック ジャック コツ代理人の費用などを考えると、決して低コストでは済まない。香港でのODRやORFSの導入は、中小企業が紛争解決に当たって少額ブラック ジャック コツを選択するハードルを下げる効果が期待できるだろう。

「知財の現状把握の励行を」「紛争解決では本源国法も尊重すべき」

ブラック ジャック コツ人やブラック ジャック コツ弁護士として長年の経験を持つクラーク氏とディムジー博士は、ライセンス契約やブラック ジャック コツについて、日本企業に以下のようにアドバイスする。

• ディムジー博士：
  知的財産権のライセンサーとなる場合、ライセンシーの実施内容の実態を十分にモニタリングしなければならない。特にグローバルライセンスの場合は、現地で視察を行うことのできる人員を確保して定期的にチェックすることが重要だ。これにより不利な状況に陥ることを回避することができる。
  ライセンス契約でブラック ジャック コツ条項を定める際は、国際ブラック ジャック コツ機関のモデルブラック ジャック コツ条項に準ずることが望ましい。
• クラーク氏：
  知財に関連する準拠法やブラック ジャック コツ条項の交渉について、香港をブラック ジャック コツ地とし香港法を契約の準拠法とする場合でも、知財の有効性や侵害に関する判断については、本源国法（lex originis）の下でするように確保すべきだ。すなわち、例えば、米国の特許権は米国法で判断すべき。司法管轄区によって特許や商標などの知的財産権の有効性・侵害における基準が異なるため、本源国法ではない法律に基づいて判定する場合、関連する知的財産権の有効性や侵害判断に異なる結果が出たり、判断の執行を難しくしたりする可能性がある。
  ブラック ジャック コツ条項は契約上、非常に重要だ。知財紛争に伴う交渉にあたっては、他の条項に優先されて然るべきだろう。
  また、当事者はブラック ジャック コツ条項の項目、例えば、異なるブラック ジャック コツ地やブラック ジャック コツ機関を選択する意味や効果などについて、しっかり理解しておく必要がある。

香港は、中国政府の「第14次5カ年（2021～2025年）規画」で「アジア太平洋地域における国際法律および紛争解決の中心地」として位置づけられた。それに対し、香港政府は2021年10月に発表した施政報告で、知財関連のブラック ジャック コツと調停を推進することに言及した（2021年10月11日付ビジネス短信参照）。政策の後押しを受けた香港が今後、国際知財紛争のブラック ジャック コツ地としてどのような発展を遂げるのか、注目に値する。

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注1：

国際ブラック ジャック コツを含め、知財ブラック ジャック コツについては、特許庁「知財ブラック ジャック コツポータルサイト」を参照。

注2：

ブラック ジャック コツ地（seat of arbitration）とは、すなわち、ブラック ジャック コツ判断が下されたとみなされ、かつブラック ジャック コツ手続きを監督し、ブラック ジャック コツに関連して提起された訴訟を受理する権利などの管轄権を有する裁判所の所在する場所。
ブラック ジャック コツの審理手続きなどが実際に行われる場所（venue of arbitration）や、ブラック ジャック コツを管理するブラック ジャック コツ機関（arbitral institution）とは、異なる概念であることに注意。

注3：

現時点で、知財ブラック ジャック コツ件数に関する厳密な統計は存在しない。

注4：

過去の裁判先例の判断に従うこと。

注5：

ニューヨーク条約の締約国は、ブラック ジャック コツ判断を相互に執行する義務がある。締約国リストについては、「締約国一覧」を参照。

注6：

誤解を避けるため付言すると、香港での知財に関するブラック ジャック コツ判断のほとんどは中国で執行可能。ここで例示した「特許権の有効性」などは、あくまでも例外だ。

注7：

2021年9月時点、香港国際ブラック ジャック コツ中心（HKIAC）、国際商業会議所（ICC）の国際ブラック ジャック コツ裁判所（ICA）、中国国際経済貿易ブラック ジャック コツ委員会（CIETAC）、香港海事ブラック ジャック コツ協会（HKMAG）、華南（香港）国際ブラック ジャック コツ院、eBRAM国際オンライン紛争解決センター。

注8：

中国の裁判所に申し立て可能な暫定措置としては、財産保全、証拠保全、行為保全の3種類がある。