IoT化が進む欧州家電製品(ドイツ)
2019 IFAとIFA NEXTの出展企業から読み解くトレンド
2019年11月5日
ドイツ・ベルリンで、9月6日から9月11日まで家電見本市IFAが開催された。約2,000社が出展し、来場者数は24万5,000人と過去最多になった。来場者の半分強は国外からで、160カ国から来場したという。各メーカーはイノベーションや技術革新をうたい、来場者やバイヤーを呼び込んだ。今回のIFAでは、第5世代移動通信システム(5G)の急速な拡大に対応した家電製品が席巻し、音声制御、人工知能(AI)、およびネットワークが主要な技術トレンドとなった。
大手家電メーカーの注目製品
韓国のサムスンは、5G対応の折り畳み式スマートフォン「フォールド」を一般公開した。同社は、「フォールド」に搭載された複数のカメラを用いて撮影されたカーレースドライバーの映像を、データ処理のための待機時間なしで瞬時に切り替えができるデモンストレーションを来場者が体験できるブースを設置した。来場者は製品を手に取って見るため、最大20分待ちの列に並ぶ盛況ぶりだった。テレビメーカーはこぞって8Kテレビを展示し、来場者を引きつけた。特に、LGの巻き取り式液晶テレビは、使用しない時は下のボックスに収納でき、インテリアの雰囲気を乱すことなく、大型テレビが設置できると注目を集めた。
家電のIoT化はデフォルトに
IFAの最大のトレンドの1つがスマート家電だった。ドイツのボッシュは、IoT(モノのインターネット)家電のリーディングカンパニーとして、2019年もスマートホームを展示。そこで展示された家電製品はほぼ全てIoT対応だった。今回展示された冷蔵庫には、保存されている食品をスキャンし、レシピをスマートフォンに提案する機能が付加されていた。これは、レシピコンテンツの企業との提携で実現した。ボッシュは、革新的なアイデアを持つ新しいパートナーと積極的な連携を進めており、そこでスタートアップ企業が重要な役割を果たしている。
フィンランドのスタートアップ企業サフェラ(Safera)は、クッキングヒーターのそばの壁に設置する、センサーを活用したIoT調理家電を出展した。クッキングヒーターの温度、人がそばにいるか、電力消費量、気圧などが測定され、ヒーターが高温になったり、消し忘れがあったりした時、換気が必要な時などにスマートフォンに通知する。老舗鍵メーカーのイェール(Yale)は、米国グーグル傘下のネストラブズ(NestLabs)と共同開発した、不在時にもスマートフォンから施錠可能なスマートロックを出展した。
社会課題解決やサステナビリティも潜在的なキーワード
スマート屋内農業ソリューションを提供するドイツのスタートアップである、ベルリングリーン(Berlingreen)は、水やりと収穫の時期を自動測定しながら水耕栽培を行う、スマート植物栽培ボックスを出展した。これは、クラウドファンディング調達した資金で開発・販売されており、食糧不足問題や二酸化炭素(CO2)の削減など、社会的課題を解決すべく、植物を育てる方法に革命を起こそうとしている。
また、サステナビリティ(持続可能性)に着目した製品を出展する企業も見られた。ドイツの家電メーカーのグリュンディッヒ(Grundig)は、洗濯槽に使用済みペットボトルを利用したリサイクル型の洗濯機を、持続可能性のある未来に貢献する商品としてアピールした。英国のインテンポ(Intempo)は竹を利用したスピーカーを、スウェーデンのスタートアップのウィルマ(Wilma)は100%生分解性のスマートフォンカバーを展示した。今回のIFAでこうした企業はまだ少数だったが、環境問題に対する意識の高まりにより、今後は増加するかもしれない。
スポーツ用のスマートウォッチを販売する米国のフィットビット(Fitbit)をはじめとする、ヘルストラッキングの企業の出展は数年前から見られるが、ここ最近のIFAでは、健康と高齢者をターゲットにした製品の展示も増えている。ベルギーのルシメッド(Lucimed)が開発した、眼鏡のように装着するスマートグラスLuminetteは青系統の光を浴びることで、冬の日照時間が少ない北欧での季節性うつ病への効果が期待される。高齢者向けには、イスラエル企業のバヤール(Vayyar)が、高齢者などが転倒した際に家族や介護者にメッセージを送信するWalabot Homeを展示した。3Dセンサーイメージング技術を用いた、装着不要のスマートホームデバイスである。そして、日本のスタートアップのトリプル・ダブリューは、超音波でぼうこうのふくらみを測定することで尿のたまり具合を表示し、トイレに行くタイミングを通知する、世界初の排せつ予測デバイスDFreeを紹介し、現地新聞にも取り上げられた。日本と同様に高齢化に直面するドイツにおいて、ヘルスケアや高齢者向けのスマートデバイスには商機があるといえるだろう。
IFA NEXTではイノベーションを提案
メッセ・ベルリンのクリスチャン・ゲーケCEO(最高経営責任者)は、貿易紛争や政治的な障壁が、消費者やイノベーションに悪影響を及ぼしているが、「異なる産業や業界のイノベーターが、互いに刺激し合う共同イノベーションの力を提示できた」と今回のIFAを総括している。
その象徴的な取り組みが、IFAの中で開催されるIFA NEXTである。スタートアップや専門家などが先端的なアイデアや技術を提案する場として、6年前から開催されている。2019年は、IFA NEXTが初めてパートナー国を設定し、日本が選ばれた。ジャパンパビリオンにはスタートアップ19社が出展し、ジェトロのマッチングサービスを活用して潜在顧客やパートナー候補企業と商談が行われた。6分野で開催されたピッチコンテストでは、3分野で日本のスタートアップが優勝するなど、日本の技術の存在感を示した(2019年8月29日、関連ブラック ジャック ディーラー ルール) 。
IFAはすでに、2020年のIFA Nextを拡大すると発表しており、日本企業やスタートアップにとって、2020年も日本発の革新的な製品のドイツや欧州市場参入への入り口の展示会となるだろう。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ベルリン事務所
ヴェンケ・リンダート - 2017年より、ジェトロ・ベルリン事務所に勤務。