英国のゼロエミッション車の販売割合義務、未到達のリスク
(英国)
調査部欧州課
2024年11月26日
2035年までの新車販売のゼロエミッション化を達成すべく、英国政府は2024年から自動車メーカーに対し、一定割合のゼロエミッション車(Zero Emission Vehicle、ZEV)の販売を義務付ける「ZEVマンデート」を導入している(関連ブラック ジャック カード)。この目標達成に向けた協力のため、複数の自動車メーカーとルイーズ・ヘイ運輸相、ジョナサン・レイノルズ・ビジネス・通商相が11月20日に会合を行なったと報じられた。
同制度は保守党政権下の2024年1月から導入された(添付資料表参照)。2024年7月に発足した労働党政権で、内燃エンジンのみで駆動する乗用車の新車販売の終了時期について、保守党政権下で掲げていた2035年から5年前倒しして2030年とすることをレイチェル・リーブス財務相が10月の秋季予算案で発表した(新政権として初の秋季予算案発表、ブラック)。この前倒しを踏まえ、経済成長とネットゼロの両方の達成に向けた同制度の見直しを今後行うという。
英国自動車製造販売者協会(SMMT)の11月5日の発表では、2024年1~10月の英国の新車販売に占めるバッテリー式電気自動車(BEV)の割合が18%と、政府の割当制度で2024年に義務付けられているZEVの割合22%を下回った。義務付けられた割合に到達しない場合、自動車メーカーは他社からその分のアロウアンス(Allowance、注)を購入、または貯蓄分の利用、または将来分から前借り(borrow)することで補填(ほてん)できる。それらを行っても不足する場合は、1台当たり1万5,000ポンド(約291万円、1ポンド=約194円)を支払わなければならない。なお、2025年はZEVの販売割合目標は28%に設定されている。2024年の目標達成が危ぶまれる中、報道によると、ヘイ運輸相は11月20日の会合に先立ち、目標値は維持するとしつつ、同制度への新たな柔軟性の導入に前向きな姿勢を示した。
欧州ではドイツをはじめ、BEV販売の伸びが鈍化しており(BEVの新規登録台数、ブラック)、その中で英国市場は、SMMTによる11月5日の発表では、10月単月の新車BEV販売は前年同月比で25%増加し、自動車販売全体の21%近くを占めたものの、2024年目標の22%を下回る。なお、SMMTは10月の英国の内燃機関車を含む乗用車新車登録台数が14万4,288台となり、前年同月比6%減少したと発表し、自動車への消費者需要が減退している状況を示した。
(注)各メーカーの販売台数と当該年の目標割合に応じて、アロウアンスが毎年付与される。メーカーは、当該年に販売したゼロエミッションではない乗用車またはバン(非ZEV)1台当たりに対して1つのアロウアンスを使用する。
(坂本裕司)
(英国)
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