米最高裁、バージニア州の有権者名簿一部抹消を容認、全米各地の訴訟に影響も
(米国)
ニューヨーク発
2024年11月05日
米国連邦最高裁判所は10月30日、バージニア州の有権者名簿から一部を抹消する同州の制度を容認する決定を下したと発表した。
バージニア州のグレン・ヤンキン知事(共和党)は2024年8月、選挙権がないとみなされる個人を同州の有権者名簿から抹消する制度の実行を指示する行政命令を発表した。これに対して、司法省は2024年10月、同制度が投票日90日以内に組織的に有権者名簿を抹消することを禁止する1993年全米有権者登録法(NVRA)に違反するとして、同州を相手取り提訴していた。下級審の連邦地裁と連邦控訴裁では、同制度を差し止める判断が示されていたが(2024年10月29日記事参照)、最高裁の判断で覆った。最高裁判事9人のうち6人が同制度の容認に賛成し、3人が反対した。
最高裁の判断を受けて、同州の有権者名簿から1,600人以上が抹消される(米国議会専門誌「ザ・ヒル」10月30日)。バージニア州選挙管理委員会によると、2024年10月1日時点の登録有権者数は632万人で、うち抹消対象は0.025%にあたる。
バージニア州では、2008年以降の大統領選挙で一貫して民主党の指名候補者が勝利しており、2024年も「民主党優勢」(米国選挙ブラック ジャック ディーラー ルールサイト「270トゥウィン」11月1日)となっている。今回の有権者名簿の抹消対象は限定的であることから、バージニア州の選挙結果への影響は小さいとみられる。
ただし、全米各地でバージニア州と同様に有権者管理の厳格化、郵便投票や在外投票の制限、手作業集計の義務化などの投開票制度改革を巡る訴訟が起こされている。主に投開票の「不正行為」是正を求める共和党側と、投票機会の選択肢確保などを求める民主党側が対立する構図だ。これまでの訴訟では、おおむね共和党側の主張は退けられてきた(米シンクタンク、ブラック ジャック)。一方で、今後上訴され最高裁に持ち込まれた場合、今回と同様に共和党側の主張に沿う判断が下される可能性も想定される。わずかな票差によって大統領選の勝敗が左右される可能性もある中で、今回の最高裁判決が全米各地の訴訟に与える影響に注目が集まる。
なお、最高裁判事は2024年10月30日時点で、6人が保守派判事、3人がリベラル派判事と保守派が多数を占める構成となっている。このため、保守派の共和党とリベラル派の民主党で主張が対立する判断を巡っては、保守的な考え方が反映される事案も散見される。例えば、最高裁は2022年6月、人工妊娠中絶の権利を巡る訴訟において、1973年の最高裁判決(ロー対ウェイド判決)を覆し、人工妊娠中絶の合憲性を認めない判断を下した(関連実写 版 ブラック ジャック)。
(葛西泰介)
(米国)
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