米ジョンソン下院議長、「2025年度の歳出削減を下院の最優先事項に」

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年07月10日

米国連邦議会下院のマイク・ジョンソン議長(共和党、ルイジアナ州)は7月8日、米国シンクタンクのハドソン研究所で「米国主導の国際秩序に対する脅威」について講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ジョンソン議長は冒頭、中国を筆頭に、ロシア、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、キューバといった国々が、米国と他国の貿易ルートを遮断し、米国の技術を窃取し、米軍に損害を与え、米国経済を破壊しようとする集団的な取り組みを行っていると主張した。また中国、イラン、北朝鮮が製造に関わる兵器を、ロシアがウクライナへの侵攻に使用している事例などを挙げつつ、米国主導でこれまで保たれていた国際秩序がバイデン政権下で不安定化していると問題視した。一方で、イラン革命防衛隊司令官殺害などの軍事攻撃や、中国の不公正通商慣行に対する追加関税賦課など、トランプ前政権の強硬な安全保障・外交措置を評価し、新たな「力による平和」(注1)の政策が必要だと訴えた。

また、米国世論の潮流が共和党に与(くみ)する方向に大きく変わってきていると指摘した上で、バイデン政権の政策の方向性を修正するために、下院で今後、優先的に次の事項に取り組むとした(注2)。

  1. 国家安全保障上の最大の課題は政府債務であり、2025年度の歳出削減を最優先事項とすることを約束する(注3)。
  2. 歳出全体では削減を図りつつも安全保障は必要不可欠な優先事項であり、敵対国に対する抑止力を示すために防衛基盤の空洞化に対処する。現在、中国は米国の232倍の造船能力を保有している。海事部門に再投資を行い、船舶建造と造船所建設に取り組む。
  3. 2024年内に対中規制法案パッケージの成立を目指す。法案パッケージには、下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」が提案する、中国への対外投資規制法案、中国のバイオテクノロジー企業と米政府機関との契約を禁止する法案(BIOSECURE法案)、通関手続きが簡素化される少額貨物輸入の対象を中国からの輸入を念頭に厳格化する法案(デミニミス法案、米下院歳入委、オンライン カジノ)を含む。また、2025年以降の次会期においても、中国特別委員会を設置する(注4)。

なお、造船分野を巡っては、バイデン政権が1974年通商法301条に基づく対抗措置の発動要否を判断するための調査を行っているほか(米USTR、オンライン カジノ)、議会からはCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に類似する国内産業振興策を求める声も上がっている()。また、デミニミス・ルールを巡っては、政権・議会の双方から強制労働を利用して製造された製品の流入や、フェンタニルなど麻薬性鎮痛剤の密輸を許しているとして問題視する声が上がっている(関連ブラック ジャック 勝ち関連ブラック ジャック 必勝)。他方で、これら法案が、2024年内に共和党が多数派を占める下院本会議で審議・可決されたとしても、民主党が多数派の上院で実際に審議・可決される可能性は低いとみられている。

(注1)軍事力の抑止効果で平和の確保を図る理念で、トランプ前政権が外国政策の原則に掲げた。トランプ前政権下で国家安全保障担当補佐官を務めたロバート・オブライエン氏も2024年6月に、同原則を肯定的に振り返った論文を発表している(トランプ前政権高官が米誌に寄稿、カジノ)。

(注2)現在会期中の第118議会は2025年1月に閉会する。下院の全議席(435議席、任期2年)は、米国大統領選挙と同じ2024年11月に改選され、次会期の第119議会が2025年1月に開会する。共和党が下院で主導権を握るためには、次議会でも多数派を維持する必要がある。連邦議会選挙の詳細は、ジェトロ「米国大統領選の仕組み~連邦議会選挙の重要性」参照PDFファイル(0.0B)

(注3)2024年度の歳出法を巡っても議会審議は難航した。最終的に歳出法は成立したものの、大幅な歳出削減を求めた共和党保守派の反発を受けて、ケビン・マッカーシー前下院議長(共和党、カリフォルニア州)は解任(関連トランプ ゲーム ブラック)、ジョンソン議長も解任動議が提出される事態となった(2024年3月25日記事参照)。なお、ジョンソン議長の解任動議は否決されている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月8日)。

(注4)各法案の詳細は、中国特別委員会のウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(葛西泰介)

(米国、中国)

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