米下院議員、一般特恵関税制度(GSP)や対中競争法案の進展を示唆
(米国、中国)
ニューヨーク発
2024年02月22日
米国連邦議会の下院歳入委員会貿易小委員会(注1)で少数党筆頭理事を務めるアール・ブルメナウアー議員(民主党、オレゴン州)は2月15日、首都ワシントンのシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で、通商政策における連邦議会の役割について講演した。
ブルメナウアー議員は冒頭、半世紀以上にわたる政治生活と貿易・国際情勢を振り返り、「貿易が大きな変化をもたらすという考えを信じていた」「私は基本的にほぼ全ての通商協定の成立を支持してきた」と自身の立場を示した。また、トランプ前政権下の2020年に北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉して成立した米国・メキシコ・カナダ(USMCA)協定について、「構想どおりに機能しており、貿易政策の手本だ」と称賛し、他の通商協定もこれにならって改定すべきだと主張した(注2)。
また、同議員は、自身にとっての今118議会(2023年1月~2025年1月)の最優先事項の1つとして、米国への輸入に際する非課税基準額(デミニミス)ルールの改正を挙げた。米国では、輸入貨物の申告額が800ドル以下の場合、原産地などのブラック ジャック 勝ち 方を申告せずに輸入可能となっている。同議員は、これが強制労働に依拠して生産された製品の輸入や、フェンタニルなど麻薬性鎮痛剤の密輸の温床になっていると説明し、これら輸入を制限するような法案を超党派で成立させたいと主張した(注3)。
モデレーターであるCSISシニアアドバイザーのウィリアム・ラインシュ氏から、貿易小委員会のエイドリアン・スミス委員長(共和党、ネブラスカ州)が一般特恵関税制度(GSP)の復活について「前進があった」と述べたことへの反応を求められたのに対し、「私も楽観的だ」と答え、「これほど長い時間がかかっていることにいら立ちも覚える」と続けた(注4)。
ラインシュ氏から、下院中国特別委員会が2023年12月に公表した、中国との経済・技術競争に関する約150の政策提言をまとめた報告書(米下院の中国特別委、カジノ 無料)について発言を求められた際には、ブルメナウアー議員は「既に下院では中国関連法案の提出が予想されている」「法案が可決される可能性は高いと思う」と述べた。
議会と政権との関係について、同議員は、現在政権が交渉を進めるインド太平洋経済枠組み(IPEF)などを念頭に、多くの分野で自由貿易協定(FTA)と同様の機能を持っているにもかかわらず、本来あるべき議会との協議を避けているとして、バイデン政権の議会軽視だと非難した。一方で、現在の連邦議会全体では政権と通商政策で協力関係にないことも課題視し、大統領貿易促進権限法(TPA法、注5)を成立させてその協力関係の基盤を築く必要があると訴えた。
また、議会多数党が上下院でねじれの構造であることを踏まえ、ラインシュ氏から今議会において超党派での合意形成が可能なのかと尋ねられたのに対しては、共和党の中で「統治派(governing-wing)」は少数になりつつあると答えた。一方で、台湾を巡って超党派で連携ができているように、何らか哲学的・政治的要請が一致する場合にはチャンスはあると述べた。
なお、ブルメナウアー議員は今期限りでの政界引退を表明している。
(注1)連邦議会では上院財政委員会と下院歳入委員会が通商を所管し、通商関連法案の審議や公聴会などを主導する。
(注2)USMCAでは、貿易分野に加えて、労働や環境といった社会的課題に対する条項が協定本文に盛り込まれた。米国は、USMCAで定められる締約国間の労働問題解決の仕組みを多用している。直近の事例は関連ブラック ジャック サイト参照。
(注3)連邦議会では、デミニミス・ルールの運用を厳格化する複数の法案が民主・共和両党から提出されている(米下院の中国特別委、カジノ 無料)。
(注4)GSPは、開発途上国・地域に対して関税を減免する国際的な仕組み。米国では2020年12月末に失効して以降、2023年5月現在まで復活(renew)されない状況が続いている。米国のGSP動向については、2023年5月22日付地域・分析レポートも参照。
(注5)貿易協定を迅速に締結させるために、議会が政権にTPAを付与した場合、政権が交渉・合意した通商協定について、議会は協定内容を修正せず、通商協定実施法案の賛否のみを審議する(ただし、議会との交渉妥結前の調整は求められるとされる)。最新のTPA(2015年超党派議会貿易優先事項説明責任法)は2021年7月に失効し(2021年7月2日記事参照)、2024年2月現在、復活していない。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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