米税関、繊維・アパレルの少額貨物輸入増加を問題視
(米国、中国、メキシコ)
ニューヨーク発
2024年03月29日
米国税関・国境警備局(CBP)は3月26~28日、ペンシルベニア州フィラデルフィアで貿易円滑化・貨物セキュリティーサミットを開催した。サミットにはCBPや国土安全保障省(DHS)のほか、物流業界関係者や専門家が参加し、輸入規制や通関業務におけるベストプラクティス、サプライチェーン上の課題などを巡って議論が行われた。
基調講演を行ったCBPのトロイ・ミラー局長代行は、CBPの活動実績を振り返る中で、非課税基準額(注1)範囲内の少額貨物の輸入が急増していると指摘。実際にCBPが処理する1日当たりの少額貨物の個数は現在400万個に及び、前年の280万個から増加しているとした。また、こうした少額貨物の中には、簡易的な通関手続きを悪用し米国市民・経済に重大な脅威となる貨物が紛れているとして、特に繊維・アパレル分野で、メキシコや中米諸国を経由して、強制労働を用いて生産された綿や自由貿易協定(FTA)に違反する製品が違法に米国に流入する懸念があると述べた。強制労働に関しては、過去4年間にわたりCBPが取り締まりを強化してきたとした上で、企業がサプライチェーンを見直し、また、デューディリジェンスを強化しているとの波及効果を強調した(注2)。
中国の新疆ウイグル自治区が製品のサプライチェーンに関与する場合に、強制労働を用いて製造されているとの推定の下、米国への輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)では、CBPが取り締まりの重点を置く分野として綿やアパレル分野が明示されている(注3)。CBPのUFLPAに基づく貨物の差し止め件数などを示したデータ(2024年3月1日時点)によると、2022年6月の同法施行以降、28億7,000万ドル相当の7,566件の貨物が差し止められた。うち、3,135件は輸入を許可、3,096件は否認、1,335件は保留となっている。産業別には、太陽光発電モジュールなどのエレクトロニクスが24億4,900万ドル相当の3,703件と、金額・件数ともに最多。件数ベースでは、アパレル・履物・織物が1,327件(5,400万ドル)で続く。アパレル・履物・織物産業で差し止められた貨物の原産国は、中国が689件(2,100万ドル)、ベトナムが415件(2,000万ドル)と2カ国で大半を占める。
繊維・アパレル分野では、UFLPAや中国原産品に対する追加関税などを要因に、そのサプライチェーンがベトナムをはじめとするASEANに移りつつある(米中対立の新常態-デリスキングとサプライチェーンの再構築、)。一方で、米国国際貿易委員会(ITC)は3月11日、衣類などに使用されるポリエステル短繊維(PSF)の輸入が増加しているとして、緊急輸入制限措置(セーフガード)の実施要否や措置内容の検討に向けた調査を開始したと発表している()。米国は過去にも、中国の太陽光発電モジュールなどに対しアンチダンピング税(AD)や補助金相殺関税(CVD)を課して中国企業限定で対処したのち、東南アジア経由の迂回増加などを理由に、より広範な貿易相手国からの輸入を対象とするセーフガードを発動した経緯もあり(2018年1月30日記事参照)、繊維・アパレル分野でも今後の動向が注目される。
(注1)非課税基準額(デニミニス値)である1人当たり1日800ドル未満の米国向け輸入貨物については、簡易的な通関手続きが適用され、関税・消費税が課税されない。
(注2)国務省は3月25日、米国政府が企業に期待する人権デューディリジェンスの取り組みなどを示した行動計画を公開した(バイデン米政権、オンライン ブラック)。
(注3)DHSが2022年6月に公表したUFLPA執行戦略(ブラック ジャック 必勝 法調査レポート参照)では、綿、アパレル、トマト、ポリシリコンの4分野が重点執行分野に明示されている。UFLPAの最新動向はブラック ジャック 必勝 法特集ページも参照。
(葛西泰介)
(米国、中国、メキシコ)
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