ANCとDAが統一政府樹立に合意
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2024年06月17日
南アフリカ共和国で6月14日、アフリカ民族会議(ANC)と民主同盟(DA)が、国民統一政府(GNU)の樹立に向けて合意したと発表した。
5月29日に投票が行われた総選挙で(2024年6月3日記事参照)、1994年の全人種参加の民主的総選挙以降、初めて過半数を大きく割り込んだANCは、GNU樹立を目指すと発表(ANC、ブラック ジャック サイト)していた。GNUにはANC、DA以外にも、今のところインカタ自由党(IFP)、愛国同盟(PA)の参加も見込まれており、4党を合わせた得票率は約68%となる。
注目された得票率3位の民族の槍(やり、M.K.)と、4位の経済的解放の闘士(EFF)はGNUには加わらないこととなった。
総選挙結果の発表以降、ANCがどの政党とパートナシップを組むのかさまざまなシナリオが報じられてきたが、ANCがアパルトヘイト(人種隔離政策)解放運動を起源とした政党であり、一方でDAは白人・カラードを支持基盤とする政党であることから、両者の組み合わせは政治イデオロギー的にも困難とする論調が支配的だった(ANC、ブラック ジャック サイト)。そうした中でのこの発表は、驚きとともに、南アの民主化第2章とも言うべき、新たなステージに入ったとする論評が見られる。
DAのジョン・スティーンハイゼン党首は会見で、「合意に基づき、DAは内閣、議会などにおいて、獲得議席数に比例してさまざまな指導的役割を担うことになる」「明確な勝者が出ていないハウテン州とクワズール・ナタール州の州政府にも代表者を置くことになる」と述べた。
また、「南アフリカ共和国は失業率が世界で最も高く、世界で最も犯罪率の高い国の1つで、物流とインフラの衰退が進行し、汚職が蔓延(まんえん)している国」だとし、「これらの問題が一夜にして解決されるとは誰も期待していない。わが国の軌道に戻すには、社会のあらゆるセクターで何年もの継続的な努力、忍耐、成熟、協力が必要だ。しかし、DAは、その道のりのあらゆる段階で、南ア国民の皆さんと共にある。私たちは、南アを衰退の道から救い出し、この新しい章がわが国にとってこれまでで最高の章となるよう、あらゆる方法で貢献することを約束する」と強調した。
このようなかたちで決着したGNU樹立は、おおむね好意的に捉えられている。しかし、政策や主張の細部調整は今後に委ねられ、新政権発足後も安定的な政権運営ができるかどうかは不透明だ。今回の合意で、大統領に再任されることが事実上確定したシリル・ラマポーザ氏は、強いリーダーシップと、政権運営に係る政治手腕が早速問われることとなる。
(的場真太郎)
(南アフリカ共和国)
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