ANC、国民統一政府樹立の方向で各党と交渉へ
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2024年06月10日
南アフリカ共和国の与党・アフリカ民族会議(ANC)党首のシリル・ラマポーザ大統領は6月6日、各政党と協力して国民統一政府(Government of National Unity、GNU)の発足を目指すと発表した。
ANCは5月29日に実施された総選挙で、民主化後初めて得票率が過半数を割った(2024年6月3日記事参照)。ラマポーザ大統領は6日、最高意思決定機関の全国執行委員会(National Executive Committee、NEC)が会合で新政権について議論した結果、GNUで新政権の樹立を目指すという結論に至ったと述べ、声明で既に最大野党の民主同盟(DA)、第4党の経済的解放の闘士(EFF)、インカタ自由党(IFP)、国民自由党(NFP)、愛国同盟(PA)との建設的な協議を開始していると明らかにした。第2党の民族の槍(やり、M.K.)は、選挙結果が不正だと訴えている。
当初、連立を模索していたと思われるANCだが、野党のいずれかを選んだ場合、政治的思想やマニフェストの違いなどによって党内外の反発が大きいことが予想された。そのため、ANCはGNU樹立を選択したと考えられるが、メディアの報道では、DAは、M.K.とEFF、PAが除外された場合のみGNUに同意すると表明しているなど、交渉は難航必至だ。
GNUは、特定政党との連立と比較すると、与党ANCが方針、立場などを維持できるため、特定政党への依存を最小限に抑えることができると考えられる。一方、ANCは今後5年間の政権運営で、多様な政治的思想を持つ複数のパートナーの管理が求められるため、不安定な政権運営となる可能性が高い。
1994年のネルソン・マンデラ政権も民族和解を目指してGNUを選んだ。しかし、当時のANC得票率は半数を超える約63%で、今回のANCが置かれている立場は根本的に異なる。
南ア憲法では、選挙結果が確定してから14日以内に国民議会(下院)を招集することを定めている。つまり、16日(注)までには第1回議会の開催と、大統領、議会議長が選出される予定だ。
(注)16日が日曜日のため、会合などの開催は17日(祝日)もしくは18日にずれ込む可能性がある。
(的場真太郎、堀内千浪)
(南アフリカ共和国)
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