米英がフーシ派拠点を追加攻撃、金融制裁も発動、海運コスト上昇に懸念
(米国、英国、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダ、イエメン、イスラエル、ドイツ)
ニューヨーク発
2024年01月25日
米国防総省は1月22日、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダ、英国、米国の共同声明において、紅海を通過する国際海運や商船、海軍艦艇に対するイエメンの武装組織フーシ派による継続的な攻撃に対処するため、米国軍と英国軍がフーシ派の地下貯蔵庫やミサイルなど8拠点を攻撃したと発表した。また、米国軍は1月24日、フーシ派が紅海南部に向けて発射準備をしていた対艦ミサイル2発を攻撃した。
2023年11月中旬以降、イスラム原理主義組織ハマスとの連帯を掲げるフーシ派は、イスラエル支援の阻止を目的として紅海を航行する商船への攻撃を30回以上繰り返している。これに対し、米国や英国などで構成された多国間安全保障イニシアチブ「繁栄の守護者作戦」の連合軍(関連ブラック ジャック オンライン)は2024年1月11日、フーシ派のミサイルやレーダー施設などを攻撃しており、今回が2回目の攻撃となった。共同声明では、今回の攻撃はフーシ派の能力を混乱、低下させることを目的とし、「継続的な脅威に直面しても、生命と、世界で最も重要な水路の1つにおける商業の自由な流れを守ることを躊躇(ちゅうちょ)しない」ことが表明された。
フーシ派による紅海における商船への攻撃は、海運業に大きな影響を及ぼしている。海事コンサルティング会社のシー・インテリジェンスによると、南アフリカ共和国の喜望峰経由の航路を通ることで航行時間が長くなり、港でコンテナを荷揚げできる船舶数への影響が既に新型コロナ禍のころよりも大きくなっていると指摘した。(CNBC1月18日)。また、輸送コストも急増している。海事調査コンサルティング会社のドリューリーによると、40フィートコンテナ1個当たりの世界平均輸送費は、1月18日までの1週間で23%上昇し、3,777ドルとなった。また、中国から米国ロサンゼルスへのコンテナのスポット輸送費(注1)は、1月18日までの1週間で38%上昇し、3,860ドルとなった(「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙電子版1月21日)。
さらに、これに伴うサプライチェーンへの影響も報告され始めている。例えば、電気自動車(EV)メーカーのテスラは、出荷遅延が見込まれることから、ドイツ工場での2週間の生産停止措置を計画している(ブルームバーグ1月23日)。こうしたサプライチェーンの混乱が続けば、供給不足に伴う財やエネルギーなどにおけるインフレ再燃も懸念される。
なお、イスラエルとハマスの衝突を巡っては、米国政府は制裁を強化しており、米財務省外国資産管理局(OFAC)は1月22日、イスラム原理主義組織ハマスがパレスチナ自治区ガザで構築した金融ネットワークを金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。ガザ地区のハマスに関連する仮想通貨(暗号資産)取引のネットワーク、その所有者、関係者、特に資金移転で重要な役割を果たしてきた金融ファシリテーターを対象とする。ハマスがイスラエルを攻撃した2023年10月7日以降、ハマスに対する制裁発動は、今回で5回目となる(注2)。
(注1)市場における海運業者の供給と荷主の需要のリアルタイムのバランスを反映した、短期の輸送費の一形態。
(注2)これまでの制裁措置は、2023年12月15日記事参照。
(樫葉さくら)
(米国、英国、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダ、イエメン、イスラエル、ドイツ)
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