国連安保理、ガザ地区への人道支援拡大と監視に関する決議採択
(イスラエル、パレスチナ、アラブ首長国連邦、中国、フランス、英国、米国、ロシア、アルバニア、ブラジル、エクアドル、ガボン、ガーナ、日本、マルタ、モザンビーク、スイス)
テルアビブ発
2023年12月25日
国連安全保障理事会は12月22日、パレスチナ自治区ガザ地区に対する人道支援の拡大と監視に関する安保理決議第2720号を採択した。
決議案は非常任理事国のアラブ首長国連邦(UAE)が提出し、常任理事国では中国、フランス、英国の3カ国が賛成、非常任理事国では全10カ国(アルバニア、ブラジル、エクアドル、ガボン、ガーナ、日本、マルタ、モザンビーク、スイス、UAE)の計13カ国が賛成した。常任理事国のロシアと米国の2カ国は棄権した。
安保理がイスラエルとハマスの軍事衝突に関する決議を採択したのは、11月15日の戦闘の一時休止と人質の即時解放を求めた決議(関連ブラック ジャック ストラテジー)に続いて2回目となる。
国連ニュース(12月22日)によると、決議では、安全で妨げのない拡大された人道的アクセスを直ちに許可し、敵対行為の持続可能な停止に向けた条件を整えるための緊急措置を求めるとともに、ガザ地区の民間人への人道支援提供を迅速化する目的で、アントニオ・グテーレス国連事務総長に対し、ガザに送られる全ての人道支援物資の促進、調整、監視、検証する責任を負う「上級人道復興調整官」を任命するよう求めている。
決議案の採択の直前に、ロシアが決議案の文言を「敵対行為の即時停止(urgent suspension of hostilities)」に修正するよう求め、常任理事国では中国、フランス、ロシアの3カ国、非常任理事国ではブラジル、エクアドル、ガボン、ガーナ、マルタ、モザンビーク、UAEの7カ国が賛成したが、常任理事国の米国が拒否権を行使したため否決された。英国、アルバニア、日本、スイスの4カ国は棄権した。
ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は「完全な停戦を求める安保理の明確な要求は依然として必須で、それなしにはガザでの安保理決議の履行は不可能だ」と述べた。米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使は「安保理は、全ての人質が即時かつ無条件で解放されなければいけないこと、人道支援団体が医療面会を含め、人質と面会できなければならないことを明確にした」と評価したが、ハマスが10月7日に行ったテロ攻撃を再び非難できなかったことに「がくぜんとした」と述べた。
パレスチナ自治政府のリヤド・マンスール国連常駐オブザーバーは「この決議は正しい方向への一歩だ。この決議は実施されなければならないし、即時停戦を求める大規模な圧力を伴わなければならない」と述べた。
イスラエルのブレット・ジョナサン・ミラー国連常任副代表は「この安保理はいまだに、ハマスとその残虐行為を非難する声明を1つも出していない。人道支援は毎日ガザに流れ込んでいるのに、ハマスに拘束されている人質は赤十字の面会すら許されていない。これは想像を絶する凶悪な戦争犯罪だ」と非難した。
安保理での決議採択を受けて、外務省の小林麻紀・外務報道官は12月23日に談話を発表し、「戦闘再開以降、ガザ地区の人道状況がさらに深刻化する中で、本件決議が、いまだ残された人質の即時・無条件の解放や人道支援活動の拡大に資することが期待されることなどを総合的に判断し、賛成票を投じた」とした。さらに「わが国は、引き続き、関係国・国際機関と緊密に意思疎通を行いつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、そして事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていく」とした。
国連総会では12月12日、ガザでの即時の人道的停戦を求める決議案を採択していた(国連総会、カジノ ブラック ジャック)。
イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。
(中溝丘)
(イスラエル、パレスチナ、アラブ首長国連邦、中国、フランス、英国、米国、ロシア、アルバニア、ブラジル、エクアドル、ガボン、ガーナ、日本、マルタ、モザンビーク、スイス)
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