米国土安全保障省、AIの責任ある利用に関する新政策発表
(米国)
ニューヨーク発
2023年09月20日
米国土安全保障省(DHS)は9月14日、人工知能(AI)の責任ある利用に関する新たな政策を発表した。DHSは最高AI責任者のポストを新設し、AIに関わる省内の取り組みを推進する。
新政策は、DHSが4月に設立したAIタスクフォース(AITF、2023年4月27日記事参照)が策定し、2つの文書にまとめた。「DHSによるAIと機械学習技術の調達・利用」に関する政策声明では、DHSがAIを利用する際の原則を記した。具体的には、トランプ前政権時の2020年12月に発表された連邦政府における信頼性あるAIの利用促進に関する大統領令の内容に沿うかたちでプログラムや活動を実施することや、プライバシーや市民権、市民的自由(注)を念頭に、合衆国憲法やそのほかの法律に従ってAIの調達・利用を行うことなどを定めた。AIを用いた意思決定支援システムを構築する際は、人種や性別、国籍などに基づくバイアスを防止する。
「顔認証・顔検知技術の利用」に関する行政命令では、DHSの各部門に対し、顔認証・顔検知技術を運用する前に独立したテスト・評価を行い、国立標準技術研究所(NIST)のガイダンスなどに準拠しているか確認するよう求めた。運用中のシステムについても、少なくとも3年に1回評価する。また、法執行に関連しない措置または捜査で顔認証技術を使う場合、米国市民に同技術の利用を拒否する権利を与えるよう定めた。法執行に関連する活動で人物特定を行う場合については、顔認証技術に基づく結果のみを根拠とせず、人間による検証も行う。
DHSは、これらの政策がAIのリスクを管理し便益を享受するというバイデン・ハリス政権のコミットメントに基づくとしている。バイデン政権は民間企業の協力を得ながら、AIの責任あるイノベーションを推進する施策を打ち出している(2023年5月8日記事参照)。7月には、グーグルやオープンAIなどAI開発で先行する企業7社とAIの安全な開発のための自主的な取り組みを発表した(2023年7月25日記事参照)。ホワイトハウスは9月12日、この取り組みにアドビやIBMなど8社が新たに参加すると発表した。
(注)政府によって不当または恣意的に干渉されることなく、国家の法律によって保障された権利を行使する自由。
(甲斐野裕之)
(米国)
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