バイデン米政権、AIに関する責任あるイノベーション推進へ新施策発表
(米国)
ニューヨーク発
2023年05月08日
米国のバイデン政権は5月4日、人工知能(AI)に関する責任あるイノベーションの推進策を新たに発表した。新たな施策は、責任あるAIの研究開発への投資、民間企業が開発した生成AIの評価、連邦政府によるAI利用に関する指針の策定から成る。カマラ・ハリス副大統領ら政権高官は同日、アルファベット、マイクロソフト、およびAI関連スタートアップであるアンソロピックとオープンAIの4社の最高経営責任者(CEO)と会合を開き、AIがもたらす課題に対処するため、さらなる作業が必要との認識で一致した。
ホワイトハウスが発表したファクトシートによると、連邦政府の独立機関である全米科学財団(NSF)などが、1億4,000万ドルを拠出して新たに7つのAI研究機関を設立する(注)。同研究機関は、高等教育機関や連邦政府機関、産業界と協力して、倫理的で信頼性のあるAIシステムの研究開発やAI人材の開発などを推進する。企業との連携では、グーグルなどAI開発で先行する7社から協力を得て、AIシステムの公開評価を実施する。政権はファクトシートで、「企業には(AI)製品を導入または公開する前に、その安全性を確保する基本的責任がある」と強調した。連邦政府自身の取り組みとしては、行政管理予算局(OMB)が、政府機関がAIシステムを開発、調達、利用する際の指針案を今夏に公表する。
バイデン政権はAIの適正な利用を巡り、これまでも複数の指針を出している。2022年10月にはAI開発に当たり考慮すべき原則をまとめた「AI権利章典のための青写真」を発表(関連ブラック ジャック ディーラー)。2023年1月には、商務省の国立標準技術研究所(NIST)がAI技術のリスク管理のためのガイダンス「人工知能リスク管理フレームワーク」を発表した()。
新たな政策形成も進む。商務省国家電気通信ブラック ジャック ブラック クイーン庁(NTIA)は4月11日、AIシステムの監査・評価・認証に関する政策策定に向け、意見募集を開始した。また、ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)は5月1日、労働者の監視や評価における自動化ツールの使用について、意見募集を始めると発表した。
消費者保護に関わる政府機関も、AI利用に伴うリスクへの監視を強めている。連邦取引委員会(FTC)、司法省、消費者金融保護局(CFPB)、雇用機会均等委員会(EEOC)は4月25日、AIを含む自動化システムの弊害への対処に関する共同声明を発表した。声明では、企業などが雇用や住居、融資などの個人の権利や機会に影響を与える重要な決定を行う際にAIを利用することで、違法な偏見や差別を生む可能性があると指摘(注2)。AIがもたらすこうした問題に対し、4機関は既存の法令を厳格に適用する方針を明確にした。
政府と並行して、連邦議会もAIの規制を探る。上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州)は4月13日、AIの推進と管理に関する立法措置に向けて取り組むと発表した。同じく上院では、マイケル・ベネット議員(民主党、コロラド州)が4月28日、連邦政府のAI政策について、規制や立法面での提言を行う閣僚級のタスクフォースを設置する法案を提出している。
(注1)NSFの発表によると、新たに設立されるAI機関は全米の7つの大学がそれぞれ主導し、(1)信頼性のあるAI、(2)次世代のサイバーセキュリティー対策、(3)気候変動に対応した農業・林業、(4)AIと神経科学、認知科学の学際的研究、(5)意思決定のためのAI、(6)AIを活用した教育機会の拡大と成果の向上、の6つの研究テーマに焦点を当てる。
(注2)声明では、自動化システムが取り込んだデータが偏っていたり、システムの構造が不透明だったりする場合に、差別が起こり得ると記した。
(甲斐野裕之)
(米国)
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