2024年度歳出計画、大統領が重視する総合福祉政策の拡充目立つ

(メキシコ)

メキシコ発

2023年09月14日

メキシコ大蔵公債省が98日に国会に提出した歳出計画によると、2024年度(暦年)の歳出は、前年度比実質4.3%増の9220億ペソ(766,870億円、1ペソ=約8.5円)、計画的支出(一般会計)が前年比4.0%増の64,904億ペソ)、金融コストなどの特別会計が25,756億ペソとなっている。一般会計の内訳をみると、経常的経費が前年度比実質7.9%増、年金経費が同7.3%増、投資的経費が11.1%減、全体で4.0%の増加となる(添付資料表1参照)。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が重視する年金や補助金支給を中心とした総合福祉政策の予算が拡充され、2024年度の社会プログラム予算(高齢者年金、奨学金、農村支援など)はGDP比で12.8%に達し、2018年の前政権最終年と比べると、比率が2.7ポイント上昇している(大蔵公債省プレスリリース9月8日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

省庁別予算(添付資料表2参照)をみると、福祉省(25.2%増)とエネルギー省(3.7倍)の予算増額が目立つ。エネルギー省の予算には、石油公社(PEMEX)の財務状況改善に向けた資金支援の拡充などが影響している。総合福祉政策をつかさどる福祉省の予算はAMLO政権下で年々拡大し、連邦省庁では公共教育省を上回る予算規模に達している。年金や補助金支給を中心とする総合福祉プログラムを合計すると、2024年度は7415億ペソに達し、一般会計全体の11.4%を占める。その中でも、現時点で68歳以上(先住民居住区は65歳以上)の高齢者に支給されている高齢者一律年金(2カ月ごとに2,550ペソ)が2024年度からは65歳以上が対象となることから、実質32.2%拡充されて4,650億ペソに達し、歳出全体の7.2%を占める。同年金は、所得水準や他の年金制度の加入状況にかかわらず、全高齢者に一律で支給されるため、メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は貧しい層のみに支援を集中すべきと批判している(COPARMEXプレスリリース911日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

経済界は効率的な歳出と医療や教育予算の拡充を要請

AMLO政権下で進められてきた4大インフラプロジェクトのうち、フェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)は既に運営を開始し(2022年3月23日記事参照)、ドスボカス新製油所建設(2019年6月10日記事参照)はおおむね2023年内に建設工事が完了する予定だ。マヤ観光鉄道(2020年5月25日記事参照)は2023年内に運営を開始する予定だが、2024年度予算でも1,200億ペソの予算が計上されている。テワンテペック地峡開発(2023年7月4日記事参照)は進展が遅れており、前年度比実質2.6倍の211億ペソが計上されている。

COPARMEXは、投資予算が全体として減らされていることに警鐘を鳴らし、実物投資の約15%がマヤ観光鉄道に費やされることを批判している。国家社会政策評価審議会(CONEVAL)の8月3日付レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、メキシコで医療サービスへのアクセスがない国民は2018年の16.2%から2022年に39.1%まで拡大、義務教育を受けることに障害がある国民は19.0%から19.4%に拡大している。COPARMEXはこれらの数字を挙げ、前年比で削られている公共教育省や保健省の予算の拡充を検討すべきだと国会議員に対して訴えている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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