米国とメキシコ、グッドイヤー工場での労働問題の改善策で合意
(米国、メキシコ)
ニューヨーク発
2023年07月21日
米国通商代表部(USTR)は7月19日、米国タイヤ大手グッドイヤーのメキシコ・サンルイスポトシ州の工場で発生していた労働権の侵害について、メキシコ政府と改善策で合意したと発表した。
USTRはこの件について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で定めている「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、5月にメキシコ政府に対して事実確認を要請していた()。メキシコ政府はこの要請を正式に受諾し、米国政府に対し調査を開始したと6月1日に通知していた(メキシコ政府、USMCAに基づく8件目のブラック)。両国間で合意した改善策によると、メキシコ政府は、グッドイヤーがサンルイスポトシ州の工場でゴム製品製造業の産業別労働協約を適用すること、同協約を反映した給与や福利厚生を提供すること、同協約に基づく権利を説明するガイドラインを発行し従業員を研修することなどを、2024年1月19日までに確実にすることになっている。
RRMのルールによると、グッドイヤーが今後、合意どおりに改善策を履行し、両政府が問題の解決に合意すれば、案件は終了する。一方、合意できない場合、提訴国の米国は15日前の書面通知をもって、グッドイヤーの同工場からの輸入に対し、USMCAに基づく特恵関税の適用停止など制裁措置を発動することができる。ただし、被提訴国のメキシコは、通知を受理してから10日以内であれば、紛争解決のためのパネルの設置を要請することができ、米国はパネル審議が終了するまで制裁の発動を控えなければならない。ただし、これまでRRMが発動され手続きが完了した案件は、全てパネル設置前に解決されている(添付資料参照)。グッドイヤーが半年以内に改善策を履行できるかに注目だ。キャサリン・タイUSTR代表は声明で、「米国は改善策の履行を注意深く監視していく」としながら、「問題となった工場がメキシコの労働法を順守するようしかるべき措置をとり、産業別労働協約が該当する分野全体に適用されることを世に知らしめたことに関して、メキシコ政府を称賛する」と述べている。
(磯部真一)
(米国、メキシコ)
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