米USTR、ハイパーブラックジャック

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年05月23日

米国通商代表部(USTR)は5月22日、メキシコ中部サン・ルイス・ポトシに所在する米国タイヤ大手グッドイヤーの工場で労働権侵害の疑いがあったとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、ハイパーブラックジャック事実確認を要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

RRMは、事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。RRMの手続きはUSMCA加盟国政府が独自に発動できるが、労働組合などの第三者機関が加盟国政府に労働権侵害を提訴することも可能だ。加盟国政府がそのような提訴を受け取った場合は、労働権侵害が疑われる事業所が所在する加盟国の政府に対し、事実確認を要請するか否かを30日以内に判断する。今回の件は、メキシコ労働総同盟(La Liga Sindical Obrera Mexicana)が、ゴム製造業分野に適用される労働協約に違反して、当該工場で同協約より劣る内容の労働協約が締結されたことを理由に、米国政府へ提訴したことが発端だ。

事実確認の要請を受けたメキシコ政府はUSMCAに基づき、調査を行うか否かを10日以内に返答しなければならず、調査を行う場合には45日以内に完了する必要がある。また、今回のUSTRによる確認要請をもって、米国は問題となっているメキシコの事業所からの製品輸入について、両国間で労働権侵害の解消に合意するまで、最終的な税関での精算を留保できる。実際、キャサリン・タイUSTR代表は財務長官に対し、当該工場からの製品輸入にこの措置を適用するよう指示PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

USTRは、2020年7月にUSMCAが発効して以降、RRMによる手続きを積極的に活用しており、今回で8回目となる。その全てが、メキシコ内の自動車・自動車部品工場での労働権侵害の疑いに基づくものとなっている。USMCA締結国の米国、メキシコ、カナダは域内からの強制労働の排除を重視しており、メキシコ政府もRRM手続きが開始されると積極的に協力し、比較的短期間で問題解決に至ることが通例となっている(注)。タイUSTR代表は「メキシコ政府と協力して、労働者がより良い職場環境を求めることを支援する」としている。

(注)本件以外の7件のうち6件は解決済み。それらについては、次の記事を参照。

未解決の1件は、いったんは問題が解決した上記5件目と同じ工場での2回目の違反となり、現在は米国とメキシコ両政府が合意した改善策を履行中となっている(米国とメキシコ、オンライン)。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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