アンケート回答企業の16%が一部生産・雇用の国外移転を進める
(ドイツ)
ミュンヘン発
2023年06月14日
ドイツ産業連盟(BDI)は6月5日、中堅・中小企業向け緊急アンケート調査結果を公表した。同調査は4月24日~5月12日に国内の工業部門の企業に実施したもので、392社から回答を得た。回答企業の従業員数(世界全体)は、41%が100人未満、24%が100人以上250人未満と、小規模企業が中心となっている。
アンケート調査結果によると、回答企業の16%が生産・雇用の一部をドイツ国外に移転することで既に具体的に動いていることがわかった。また、生産・雇用の一部の国外移転計画がある企業も30%に上った。国外の新規投資先としては、他のEU加盟国(29%)、北米(20%)などが候補になっている。
ドイツ自動車産業連合会(VDA)が5月に公表した中堅・中小企業アンケート調査結果(2023年6月2日記事参照)でも、回答企業の5%が国内投資を中止するとし、27%が国外投資に変更するとした。国外投資の拡大を計画している企業は、43%が他のEU加盟国を、30%が北米を投資先としており、今回のアンケート結果と同様の傾向がみられた。
現在抱えている課題(最大3つ選択可)としては、「熟練・専門人材の不足を含む労働コスト」が76%で最大だった。熟練・専門人材の獲得の難しさは、ドイツ機械工業連盟(VDMA)が2023年3月に発表した機械関連企業アンケート調査結果(2023年4月3日記事参照)でも、課題として明らかになっている。その他の課題として、「エネルギー・原材料価格」が62%、「労力と時間を要する許認可取得手続きなどを含む行政事務」が37%と続いた。「ドイツのインフラ(交通・エネルギー・デジタル)の脆弱(ぜいじゃく)性」を選択した企業も25%に上った。
他方、この設問では、「部品などの供給難・遅れ」を選択した企業は11%にとどまった。上述のVDMAの2023年3月のアンケートでも、サプライチェーンが「大いに逼迫」または「中程度の逼迫」とした企業の割合は減少しており(2023年4月3日記事参照)、ドイツ企業にとって、サプライチェーンの課題は山を越えつつあるようだ。
(高塚一)
(ドイツ)
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