米西海岸の港湾労使交渉が決着、PMAとILWUが暫定合意発表、西海岸への貨物回帰に注目

(米国)

ロサンゼルス発

2023年06月16日

米国西海岸港湾の労使交渉を巡り、経営者側の太平洋海事協会(PMA)と労働者側の国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)は6月14日、暫定合意に達したとする共同声明を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。両者は新しい労働協約の詳細を明らかにしていないが、契約期間は6年間としている。両者で批准に向けた手続きを進めるが、過去の例では批准プロセスに3カ月を要するため、新たな労働協約の正式な発効は2023年秋ごろになるとみられる(「ジャーナル・オブ・コマース」6月15日)。

米国西海岸の港湾では、労働条件などを定めた労働協約が2022年7月1日に失効して以降、PMAとILWUが交渉を続け、最大の論点だったターミナル荷役施設の自動化について2023年4月に暫定合意に達していた()。その後は賃金交渉を継続していたが、難航して労使の関係が悪化し、6月初旬以降はILWU組合員が一部で出勤を拒否するなど、港湾業務の遅滞行為を行っていた(関連無料 ゲーム ブラック)。

労使間で緊張が高まる中、全米小売業協会(NRF)がバイデン大統領に介入を要請する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするなど、バイデン政権の動向が注目されていた。今回の暫定合意を発表した声明の中では、労働省のジュリー・スー長官代行の関与に言及しており、妥結に当たってバイデン政権が仲介の役割を果たしたとみられる。暫定合意の発表を受け、バイデン大統領は「合意に達した港湾の両当事者に祝意を表する」との歓迎の意を示す声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国では、西海岸港湾での労使交渉の先行きを巡る不透明感が高まり、西海岸から東海岸やメキシコ湾岸の港湾へ貨物の取り扱いがシフトしている。「ジャーナル・オブ・コマース」(6月14日)によると、アジア発米国向けの輸入貨物に占める西海岸のシェアは、2021年1~5月は62%だったが、2023年1~5月は56%に低下した。今回の暫定合意が労使双方で円滑に批准されるかという点とともに、東海岸やメキシコ湾岸の港湾へシフトした貨物が西海岸にどの程度回帰するかが注目される。

(永田光)

(米国)

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