世界銀行、ラオスの公共・公的保証債務がGDPの110%超と推測

(ラオス)

ビエンチャン発

2023年05月31日

世界銀行は519日、ラオスの最新の経済分析レポート「ラオ・エコノミックモニター」を発表した。同レポートでは、2022年のラオスの経済成長率は2.7%と分析。前回レポート(20221128日記事参照)よりも0.2ポイント上方修正した。

中国ラオス鉄道の開通(2021129日記事参照)や、タナレーンドライポート(2020713日記事参照)の操業開始が旅行や貿易を促進したと指摘した。例えば、新型コロナウイルス禍で大きく落ち込んだ外国人観光客数は新型コロナ感染拡大前の25%の水準(約130万人)に回復し、電力やパルプ、農産物の輸出が増加した。ただし、ガソリン不足(2022512日記事参照)や農業資材価格の上昇、中国国境でのトラック渋滞(202217日記事参照)が農産物輸出にマイナスの影響をもたらしたと指摘した。また、現地通貨キープ安(注1)や高インフレ(2022年平均23%)が消費を抑え、小売り・卸の売上高の縮小を招いたほか、相対的に賃金が高くなった隣国タイへの低賃金労働者の出稼ぎを促し、国内の製造業や接客業などの労働集約的産業は厳しい状況に置かれているとした。特に高い公的債務負担という構造的問題がキープ安により悪化し、経済活動の足かせになっていると指摘した。

公共・公的保証債務(注2)は、キープ安の進行や国有銀行の資本増強を目的にした国債発行の影響もあり、GDP比で2021年の89%から2022年には110%を超えたと推定した。また、歳入に対する債務返済(元本と利息)の比率は2017年の35%から2022年には61%に上昇したという。ただし、2020年以降、中国から債務返済の猶予を受けており、累積猶予額はGDP8%程度に達していると推定した。公的債務負担は引き続き重く、財政の持続可能性は主要債権者との債務再編に関する交渉の結果にかかっているとした。外貨準備高は2021年末の12億ドル(輸入の2カ月分)から2022年末には11億ドル(輸入の1.5カ月分)に悪化した。財政面では、公共投資の延期や中止による歳出の抑制と、税収強化により、わずかに歳入が増加したことで、財政赤字は2021年のGDP1.3%から2022年には1.1%と若干改善した。

今後の見通しとして、観光などのサービス部門や輸出の継続的な回復により、2023年の経済成長率は3.9%と推測し、前回レポートより0.1ポイント上方修正した。また、2024年には4.2%に加速すると分析した。対外債務返済額は2026年まで年平均13億ドルとされ、このため財政赤字は増加すると指摘した。マクロ経済を安定化するには、税制優遇や免税措置などの見直しや、付加価値税を現行の7%から10%に戻すことによる歳入の確保、主要金融機関との債務再編交渉の加速、投資や輸出を促進するビジネス環境改善のほか、偶発債務(注3)や銀行への監督管理の強化、教育や保健などの公共サービスに配分する予算の確保などを進める必要があると指摘した。

(注1)同レポートによると、キープの相場は2022年から20234月にかけて対ドルで43%、対タイ・バーツで32%下落した。

(注2)英語でPublic and Publicly GuaranteedPPGdebtという。政府や公的機関が返済を保証した債務。

(注3)偶発債務とは、現実にはまだ発生していないが、一定の条件下で将来、債務となる可能性のある潜在的な債務。

(山田健一郎)

(ラオス)

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