米FRB、日欧などの中央銀行と協調行動を発表、市場へのドル供給拡充へ

(米国、日本、カナダ、欧州、英国、スイス)

ニューヨーク発

2023年03月20日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は319日、日欧などの主要中央銀行と通貨交換協定(スワップ協定)を通じて、市場へのドル供給を拡充する協調行動をとると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

具体的には、FRB、欧州(ECB)、日本、カナダ、英国、スイスの各中銀は市場にドルを供給する公開市場操作の実施頻度をこれまでの週次から日次に増やす。翌20日から開始し、少なくとも4月末まで継続するとしている。シリコンバレー銀行などの米国中堅銀行の経営破綻(2023313日記事参照)や、欧州でのクレディ・スイスの経営不安(2023317日記事参照)に端を発して、世界の金融市場が不安定になっていることから、予期せぬ金融機関のドル資金繰りのショートを防ぐ狙いがある。FRBは今回の発表について「世界的な資金調達市場での緊張緩和のための重要な流動性支援として機能し、家計や企業への信用供給の緊張緩和に役立つ」としている。

また、経営不安が生じていたクレディ・スイスについて、スイスの金融機関UBS319日に、30億スイス・フラン(約4,290億円、1スイス・フラン=約143円)で買収することを発表した(2023320日記事参照)。クレディ・スイスは主要国の金融機関で構成する金融安定理事会(FSB)によって、世界の金融システム上重要な金融機関(G-SIB)に指定されている金融機関で、同行が経営破綻した場合の深刻な影響が懸念されていた。この買収について、米財務省とFRBは「金融市場の安定を支援するための発表を歓迎する」ととともに、「米国の銀行の資本と流動性は万全で、米国の金融システムは強固だ」などとする共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。

しかし、財務省とFRBが米国の金融システムの健全さを強調する一方で、米国の金融機関の信用不安は収まりを見せていない。経営不安が生じていた米ファースト・リパブリック銀行について、316日に他行から300億ドルの預金支援(2023年3月17日記事参照)が発表されたにもかかわらず、中堅銀行を中心に流動性不足は続いているとみられ、翌17日の同行の株価(終値)は前日比32.8%下落した。こうした状況に対して、米中堅銀行の業界団体ミッドサイズ・バンク・コーリション・オブ・アメリカは当局に対して、預金保護の上限(現行は25万ドルまで)を今後2年間は預金全額に引き上げるよう求める書簡を送ったとされている。書簡では「銀行業界の健全性や安全性にもかかわらず、大手銀行以外の銀行の信頼が失われている」「銀行システム全体への信頼を直ちに回復させなければならない」としている(ブルームバーグ319日)。FRBは金融機関向けに、米国債などの簿価価格を担保として最長1年間の融資を行う緊急融資制度(BTFP)を始めているが(2023年3月14日記事参照)、BTFPを含めてFRBや米預金保険公社(FDIC)からの金融機関への融資利用残高は315日時点で3,181億ドルと、前週比で約21倍に膨らんでいる。

(宮野慶太)

(米国、日本、カナダ、欧州、英国、スイス)

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