米SVBに続きシグネチャー銀行も経営破綻、ただし預金は全額保護、FRBは銀行向けの緊急融資枠を設定
(米国)
ニューヨーク発
2023年03月14日
米国連邦預金保険公社(FDIC)は3月12日、ニューヨーク州金融当局によってシグネチャー銀行(本社:ニューヨーク州ニューヨーク)の事業が停止されたと発表した。10日に発表されたシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻(関連実写 版 ブラック ジャック)による信用不安の影響を受けた経営破綻とみられる。2022年12月時点でのシグネチャー銀行の総資産は約1,104億ドルと全米29位となっており、SVBの資産規模2,090億ドルに次ぐ大型経営破綻が立て続けに起こったかたちだ。
シグネチャー銀行の破綻は、SVBに似た構造となっている。シグネチャー銀行は、主に暗号資産(仮想通貨)関連企業との法人取引が中心だった。新型コロナ禍以降の金融緩和によって大量のマネーが暗号資産関連企業にも流入し、同銀の2022年末の資産残高は新型コロナ禍前の2019年末と比べて2倍以上に拡大していた。しかし、金融引き締めにともない資金が暗号資産から引き上げられ、関連企業の経営悪化の影響を同銀も大きく受けていた。この状況に、SVB経営破綻の影響を受けた信用不安の波及が追い打ちをかけて、預金引き出しが相次ぎ、流動性が急速に悪化したことから、今回経営破綻に陥ることとなったもようだ(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版3月12日)。
FDICが保護する預金上限額は1口座当たり25万ドルだが、3月12日に発表された預金者の全額預金保護については、SVBだけでなくシグネチャー銀行も含めるとしている。また、FRBは金融機関を対象にした新たな短期融資枠(BTFP)を設けると発表した。米国債や住宅ローン担保証券などについて、その時価ではなく簿価の価格を担保として、最長1年の融資を行う。全額預金保護と同融資の資金は、政府の基金から捻出され、国民負担はないとしている。
こうした政府の信用不安解消に向けた動きが功を奏し、3月13日の株式市場ではハイテク企業が多いナスダックはやや上昇に転じた。だが、ダウやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は小幅下落、10日に大きく下落した銀行株については13日も引き続き大きく下落し、市場の混乱は続いており予断を許さない状況だ。経営破綻した2行に共通するのは、金融の緩和と引き締めによって、大きく影響を受けたスタートアップと暗号資産企業との取引が多かったことだ。ただ、似たような銀行はほかにも存在しており、テクノロジー企業などとの取引が多い全米14位のファースト・リパブリック銀行は、当局から財務状況の聞き取り調査を受けたもようだ(ブルームバーグ3月12日)。同行自身は12日に、FRBなどから追加の与信枠を確保したと発表しており、信用不安解消に躍起になっているが、同行の株価は13日に60%以上も下落しており、破綻前のSVBと似た動きに陥っている。ジョー・バイデン大統領は一連の銀行の経営破綻について13日朝に会見を行い、「銀行システムは安全で、皆の預金も安全なので安心してほしい。必要な措置は何でも行う」と訴えるとともに、議会や金融当局に今回の経営破綻を踏まえた銀行への新たな規制の検討を求める考えを示した。こうした状況を受けて、早速FRBは13日午後に、金融機関への監督・規制の見直し案を5月1日までに発表するとの声明を出した。
(宮野慶太)
(米国)
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