米国シリコンバレー銀行が経営破綻、2008年の金融危機後で最大規模の銀行破綻、当局は預金保護を表明
(米国)
ニューヨーク発
2023年03月13日
米国連邦預金保険公社(FDIC)は3月10日、シリコンバレー銀行(SVB)(本社:カリフォルニア州サンタクララ)がFDICの管理下に入ったと発表した。SVBの事業はいったん停止されており、事実上の経営破綻に陥っている。米国での銀行の経営破綻は2020年10月のカンザス州のアルメナ州立銀行以来。2022年12月時点でSVBの総資産は2,090億ドルと全米16位になっている。リーマン・ショック時の2008年9月に総資産3,070億ドルのワシントン・ミューチュアルが破綻しており、それに次ぐ規模の大型の経営破綻となる(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版3月10日)。
SVBは、本社を置いているサンタクララの土地柄、スタートアップとの法人取引が中心だった。新型コロナ禍以降、米国では異例の金融緩和が行われ、大量の資金がスタートアップにも流入した。これに伴いSVBにも大量の預金が集まり、2022年末の資産残高は新型コロナ禍前の2019年末と比べて約3倍に拡大していた。一方で、すでにスタートアップの資金需要は満たされていたことから、SVBは急増した資金の運用を、米国債などの有価証券に充てていた。だが、2022年からの連邦準備制度理事会(FRB)の急速な政策金利の引き上げによって債券価格は大きく下落、保有債券の含み損が拡大し、金融環境悪化にともなうスタートアップ自体の経営悪化による預金引き出しも加わって、SVBのバランスシートや流動性は急激に悪化していたとされる(CNN3月11日)。こうした経営状況に対する市場からの懸念を踏まえ、3月8日にSVBは増資計画を発表したが、これがかえって信用不安を招いて株価が急落(ブルームバーグ3月10日)、結局、増資計画も中止となり、今回、経営破綻に陥ることとなった。
FDICが保護する預金上限額は1口座当たり25万ドルで、3月13日には米国のSVBの本店・支店の営業を再開し、預金者は口座にアクセスできるとしているが、前述のとおりSVBの顧客は法人が中心であるため、預金上限額を超える口座が多数あるとみられる。暗号資産(仮想通貨)発行企業のサークルが、SVBに預けてある33億ドルを引き出せていないと発表するなど、一部で取り付け騒ぎが発生している。3月10日の株式市場では銀行株が軒並み下落し、SVB破綻の影響は金融セクター全体に広がっており、SVBの身売り先が模索されているとも報道されている(ブルームバーグ3月11日)。
こうした状況に対し、FRBは3月12日、財務省、FDICとともに、ジョー・バイデン大統領やジャネット・イエレン財務長官とも協議した上で、「すべての預金者を完全に保護する」との声明を発表した。今後の当局の続報や、ほかの銀行への波及があり得るかなどが、今後注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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