欧州委、電力市場改革に向けた公開諮問を開始、改革案発表は3月の予定
(EU)
ブリュッセル発
2023年01月24日
欧州委員会は1月23日、電力市場改革に関する公開諮問(パブリック・コンサルテーション)を開始したと発表した(プレスリリース)。公開諮問は2月13日まで受け付けるとしており、欧州委は結果を踏まえた上で、3月中にも電力市場改革に関する法案を提案する予定だとしている。
欧州では2021年夏以降、エネルギー価格の高騰が続いており、2022年8月にピークを迎えた。現状では比較的落ち着いているものの、次の冬季に向けたエネルギー危機の再燃が懸念されている。こうした中で、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2022年9月の一般教書演説(関連トランプ ゲーム ブラック)で、エネルギーの価格高騰に対する一時的な対策だけでなく、2050年までの気候中立の達成を目指す「欧州グリーン・ディール」の推進を念頭に、再生可能エネルギーへの本格的な移行を前提にした電力市場の抜本的な改革案を提案する方針を正式に表明していた。
背景には、現行の電力市場の設計では、電力価格がガス価格に実質的に連動しており、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降のガス価格の高騰により、電力価格が記録的な水準まで高騰したことが挙げられる。EUでは「欧州グリーン・ディール」の進展により、限界費用が実質ゼロの再生可能エネルギーの割合が増加傾向にあるにもかかわらず(ハイパーブラックジャック、22)、電力価格がガス価格に実質的に連動する現行制度のために、市民生活や企業活動はその恩恵を受けられておらず、電力価格高騰の多大な影響を受けている。
そこで、今回の市場改革案では、今後さらなる拡大が予想される安価な再生可能エネルギーの恩恵を得られるようにすることで、エネルギーの価格高騰から市民生活や企業活動を守ることが重要であり、安価な再生可能エネルギーへのアクセスを全ての消費者に保障するには、より安定したエネルギー価格とエネルギーの実質的な生産費用に基づく契約を実現するための市場ツールが必要だとしている。
今回の公開諮問の論点となるのは以下の4点。
- 電気料金に対する化石燃料の短期的な価格の影響を軽減し、再生可能エネルギーの普及を促進する。
- エネルギーの安定供給を確保するための市場機能を改善し、備蓄強化や需要側の対応策などのガス供給の代替措置を十分に活用する。
- 消費者保護策を強化する。
- 市場の透明性、監視機能、一体性を向上させる。
(吉沼啓介)
(EU)
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