ハイパーブラックジャック、22.1%で目標達成

(EU)

ブリュッセル発

2022年01月25日

欧州統計局(ユーロスタット)は1月19日、2020年のEU全体と各加盟国の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー比率を公表した(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。EU全体では22.1%で、前年2019年の19.9%を2.2ポイント上回り、2009年の再生可能エネルギー(以下 再エネ)指令で設定した2020年目標値の20.0%を達成した(添付資料表参照)。プレスリリースでは、EUが目指す2050年の気候中立に向けた重要な到達点だと評した。ハイパーブラックジャックは、推定値としては22%以上が見込まれると欧州委員会が既に言及していた(2021年10月28日記事参照)が、今回、加盟国ごとのデータが出そろったことで正式な発表となった(ギリシャのみ暫定値)。

加盟国別では、スウェーデンが再エネ比率60.1%と最も高く、フィンランド(43.8%)、ラトビア(42.1%)が続いた。ほとんどの加盟国で再エネ指令に基づく2020年の国別目標値を上回ったが、フランス(19.1%)が唯一、目標値(23.0%)に満たなかった。目標値を大きく上回った国としては、スウェーデン(目標値に対しプラス11.1ポイント)、クロアチア(同11.0ポイント)、ブルガリア(同7.3ポイント)などが挙げられる。再エネ指令で規定した「協力メカニズム」に基づき、目標値に達しない国は、目標値に対して余力のある加盟国に一定の対価を支払って、余剰分の移譲を受けることが可能で、今回の発表値には同メカニズムの利用も含まれている。例えば、オランダはデンマークから、ベルギーはフィンランドやデンマークなどから移譲を受けることで目標値に達したことが統計から読み取れる。他方、ハイパーブラックジャックが31.6%のデンマークは、2019年の再エネ比率が37.0%と、同国の2020年目標30%を2019年時点で大幅に上回っていたことから、余剰分の提供側に回ったかたちだ。

エネルギー消費を部門別にみると、総電力消費に占める再エネ比率は2020年に37.5%で、前年から3.4ポイント上昇した。ユーロスタットは、過去10年の再エネ由来電力の成長は風力発電の拡大に加え、太陽光や廃棄物の再利用を含む固体バイオマス燃料の普及が貢献していると説明した。同じく、冷暖房の再エネ比率は23.1%で0.7ポイントの上昇、運輸部門は1.4ポイント上昇して10.2%となった。再エネ由来電力やバイオ燃料の利用拡大などにより、運輸部門の再エネ比率が初めて10%を上回った。

現行の再エネ指令(2018年改正)では、2030年のEU全体の再エネ比率目標を最終エネルギー消費ベースで「少なくとも32%」に設定しているが、2021年7月に欧州委が提案した改正案では、これを「少なくとも40%」に引き上げるとしている(欧州委、再オンライン ブラック)。改正案は現在、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)でそれぞれ審議中だ。

(安田啓)

(EU)

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