欧州委、2020年の温室効果ガス排出、1991年比で31%減とする報告書発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年10月28日

欧州委員会は10月26日、2021年版「エネルギー同盟状況報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この年次報告書は、2050年までの気候中立の実現という目標に向けて、エネルギー生産と消費の状況を分析するとともに、EUのエネルギーおよび環境政策を評価するものだ。

報告書によると、2020年のEU域内の温室効果ガス(GHG)排出は、1990年比で31%減となった。2019年比では10%減と前例にない下げ幅を記録した。これは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞による影響が大きかったとみられるものの、長期的な傾向としては、再生可能エネルギーへの移行などの脱炭素化政策による寄与も大きいとした。特に、2020年のEU域内の発電におけるエネルギー源別の比率は、再生可能エネルギー38%、化石燃料37%、原子力25%と、再生可能エネルギーの比率が化石燃料の比率を初めて超えた。発電、冷暖房、交通分野を含む最終エネルギー消費ベースでも、2019年時点で再生可能エネルギーの比率は19.7%に達し、2020年は推定値で22%以上となっている。また、最終エネルギー消費量そのものも、2019年に6年ぶりに減少に転じている。

排出削減にEU ETSが大きく貢献と評価

同時に発表した2021年版「気候行動進捗報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、2020年までの排出削減でEU排出量取引制度(EU ETS)の貢献が大きいとしている。域内排出量の約4割を占めるEU ETSの対象産業(発電や鉄鋼、セメント、石油精製などのエネルギー多消費産業など)の2020年の排出削減率は、EU ETSが開始された2005年比で約43%を達成するなど成果を上げている。しかし、EU ETSの対象となっていない残りの分野(交通、建物、農業、廃棄物など)に関しては、目標こそ達成しているものの、2020年の排出削減率は2005年比で16%にとどまり、特に交通や農業分野での排出がほとんど減っていないと指摘している。

今後の課題については、7月に施行された欧州気候法()により、2030年までのGHG排出削減目標が1990年比で55%となったことから、より一層の排出削減努力が必要だとしている。エネルギー同盟状況報告書では、2021年にEU各加盟国が提出した1990年比での2030年までの排出予測によると、既に決定済みの対策を講じた場合でも41%の削減にとどまり、欧州気候法で規定した55%の削減には不十分としている。エネルギー消費に関しても、2019年の最終エネルギー消費量は2030年目標を16.3%上回っている。そのため、2030年の削減目標の達成には、道路交通や建物などへのEU ETSの実質的な拡大(関連ブラック クイーン ブラック)や、再生可能エネルギーの比率目標の引き上げ、最終エネルギー消費量のさらなる削減(欧州委、再オンライン ブラック)などを盛り込んで、欧州委が現在提案している政策パッケージ(関連ブラック ジャック やり方)の実現が重要であるとした。

(吉沼啓介)

(EU)

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