ユーザンスの延長措置を2023年6月まで継続、長引く外貨流出の引き締め

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年12月02日

バングラデシュ中央銀行(Bangladesh Bank、以下BB)は11月16日、工業用原材料や農業器具、化学肥料の輸入における支払いユーザンス(輸入代金支払い猶予)を最大180日間から360日間に延長する措置を、2023年6月30日まで継続することを発表したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。本措置は、当初2022年12月31日までの期間で適用されることが発表されていたが(中央銀行、ブラック ジャック)、今般、期間を延長した。

背景には、長引く外貨不足とさらなる外貨流出の引き締めがある。BBは、外貨準備高の水準を維持するための措置として、これまで輸入時にかかる信用状(L/C)開設のための保証金を引き上げ、輸入を抑制する措置(関連ブラック ジャック カード)などを行ってきた。しかし、特にここ数カ月、同措置により実際にL/Cの開設が難しくなっている事例や決済遅延など、L/C 決済に関する日系企業からジェトロへの相談が少なくない。とりわけ、国内向けに販売を行う製品の原材料などの輸入については、輸出志向型企業による輸入よりも厳しいもようだ。国外からコンポーネントを輸入し、国内販売向けに製造を行うメーカー関係者によると、輸入を行う際、複数の銀行にアプローチしてL/Cを開設してくれる銀行を探す必要がある状況だという。

他方、外貨獲得の主な手段である輸出と郷里送金も伸び悩んでいる。輸出振興庁が11月に発表した統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、欧米市場の景気低迷に伴う需要減による衣料品輸出の成長鈍化(目標値に対して0.7%減)を背景に、10月の総輸出額は前年同月比7.9%減となり、郷里送金額も8月以降、減少傾向にある。政府は安定した経済成長の持続や将来の不確実性に備えるため、IMFから総額45億ドルの融資を受けることで合意しているものの(2022年11月28日記事参照)、この金額自体は1カ月の輸入額の7割に満たないため(注)、外貨不足の問題が解決されるのは難しい状況だ。

このような状況に鑑みると、新規のL/C開設が困難な状況は継続する可能性もある。輸入者となる在バングラデシュの日系企業だけでなく、バングラデシュに対して輸出を行う日系企業についても、買い手側がL/Cを開設できない可能性も存在するため、十分な注意が必要となる。

(注)2022年9月単月の輸入額(67億ドル)をベースに算出。

(薄木裕也)

(バングラデシュ)

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