米政府、EUとインフレ削減法のタスクフォース立ち上げ

(米国、EU)

ニューヨーク発

2022年10月27日

米国のバイデン政権は10月25日、8月に成立したインフレ削減法(IRA)に関して、EUとのタスクフォースを立ち上げると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国国家安全保障会議(NSC)のマイク・パイル大統領副補佐官(安全保障担当)と欧州委員会のビョルン・シーバート委員長官房長が協議を経て、立ち上げに合意した。10月31日の週に第1回の協議を行う予定だ。

IRAについては、法成立以来、その中に含まれる米国内のクリーンビークル〔バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)〕購入者向けの税額控除の要件に関して、EUや韓国など諸外国からWTO違反との懸念が表明されている(関連ブラック ジャック トランプ)。詳細なガイダンスは、財務省と内国歳入庁(IRS)によって2022年末までに公開されることになっている。両省庁は11月4日までパブリックコメントを募集している()。特に懸念されているのが、税額控除の対象となるには車両の最終組み立てを北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていなければならないとする要件だ。EUは早い段階から強い懸念を示しており、直近でも10月13日にバルディス・ドムブロフスキス上級副委員長がキャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表との協議で、この件を議題に挙げている。双方は12月5日に、米EU貿易技術評議会(TTC)の第3回閣僚会合を米国の首都ワシントン近郊で開催する予定となっている。さまざまな通商課題で協力関係を深めるに当たり、障害となっている同件について、それまでに落としどころを探りたいという意向がみえる。

一方、IRAのガイダンス策定を所管する財務省のジャネット・イエレン長官は10月24日、各国の懸念は勘案するものの、「われわれは法律の記載どおりに実施しなければならない」として、ガイダンスで要件を修正する余地が限られていることを示唆している(ブルームバーグ10月24日)。これについて、韓国自動車大手の現代などが工場を置くジョージア州選出のラファエル・ワーノック上院議員(民主党)は9月末、IRAの北米組み立て要件の適用を2025年末まで延期するなどの修正を加える法案を提出しているが、成立の見通しは立っていない。

(磯部真一)

(米国、EU)

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