米インフレ削減法、EV税額控除の要件に各方面から見直し求める声
(米国、韓国、EU、日本)
ニューヨーク発
2022年09月29日
米国で8月16日に成立したインフレ削減法に盛り込まれている電気自動車(EV)の購入に対する税額控除の要件(2022年8月18日記事参照)に関し、米国内外から見直しを求める声が上がっている。
インフレ削減法では、EV〔バッテリー式EV(BEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、燃料電池車(FCV)を含む〕の購入者が最大7,500ドルの税額控除を受ける要件として、(1)車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われている、(2)バッテリー材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で抽出あるいは処理されるか、北米でリサイクルされている、(3)バッテリー用部品の50%が北米で製造されていることなどが定められている。(2)と(3)の調達価格割合は、2023年以降段階的に引き上げられる。さらに、中国を含む「懸念される外国の事業体」が関与する部品や重要鉱物が含まれる場合、それぞれ2024年と2025年から控除の対象外となるなど、メーカーにとって現行のサプライチェーンを見直す必要のある厳しい要件が設定されている(ブラック ジャック やり方)。
これに対し、民主党のラファエル・ワーノック上院議員(ジョージア州)は9月23日、ジャネット・イエレン財務長官に対する書簡の中で「過度に規範的で負担の大きい連邦規制は(EVを普及させるという)重要な目標を達成する取り組みを妨げることになる。このような規制はEV市場の競争を低下させ、現在大規模な国内投資を行っているメーカーを罰することになり、最終的にはジョージア州の労働者と消費者に損害を与える可能性がある」と述べ、経済成長や雇用創出、気候変動への強靭(きょうじん)性を促進する方法で、できるだけ多くの消費者がEVの税額控除を利用できるような見直しを強く求めた。
ジョージア州では、韓国の自動車メーカー起亜が生産拠点を構えるほか、現代自動車や新興EVメーカーのリビアンがEV工場の新設を予定している(2022年5月23日記事参照)。さらに、韓国のSKオンや現代グループがバッテリー工場の建設を発表するなど、EV関連企業の投資が進んでいる。州政府もEV産業の誘致に注力しており、税額控除の要件が同州の産業に大きな影響を与えるとみられている。
インフレ削減法に関して、米国外からも見直しを求める声が上がっている。韓国の李昌洋(イ・チャンヤン)産業通商資源部長官は9月1日、フィリップ・S・ゴールドバーグ駐韓米国大使との会見で、国際貿易と通商規則に違反する可能性を指摘した。同長官はその後もジーナ・レモンド商務長官を訪れて懸念を伝えるなど、積極的なアプローチを行っている()。EUのバルディス・ドムブロウスキス欧州委員会上級副委員長兼貿易担当欧州委員もキャサリン・タイ米通商代表部(USTR)代表との会談で「EUメーカーに対する差別は、米国で自動車の電動化に貢献することをより困難にし、米国の消費者がEVを購入する際の選択肢を狭める」と述べ、インフレ削減法がWTOに基づくルールに反するとの意を示した(ABCニュース9月1日)。また、日本自動車工業会(JAMA)北米事務所のアニタ・ラジャン所長も「現在の要件は米国の消費者の選択肢を大幅に狭め、税額控除の効果を低下させ、EVの普及を妨げる可能性がある」との懸念を表明している(オートモーティブ・ニュース9月23日)。
(大原典子)
(米国、韓国、EU、日本)
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