シーメンス、蓄電池セルACCと戦略的提携
(ドイツ、フランス)
ミュンヘン発
2022年10月26日
ドイツの電機大手シーメンスは10月13日、蓄電池セルメーカーのオートモーティブ・セル・カンパニー(ACC)と戦略的提携の覚書を締結したと発表した。
シーメンスは同覚書に基づき、(1)自動化、(2)デジタル化、(3)電動化関連技術におけるACCの優先サプライヤーとなる。シーメンスは2022年6月、顧客とのデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるためのオープンデジタルビジネスプラットフォーム「シーメンス・エクセラレーター」を立ち上げており、今回の提携も同プラットフォームにおける協力の一例となる。
最初の協力として、両社は蓄電池などの生産ラインのデジタルツイン(注)を構築する。これにより、ACCが建設予定のフランス北部のビリー・ベルクロー工場、ドイツ西部のカイザースラウテルン工場(2021年9月9日記事参照)の立ち上げを加速させる。両社の協力にはそのほか、IT技術とオペレーション向け技術(OT)分野での協力、カーボンニュートラルな工場設置のためのエネルギーマネジメントを含めたインフラソリューションなども含まれる。
ACCは現在、自動車大手ステランティス、フランス蓄電池メーカーのサフト、メルセデス・ベンツが共同で出資する蓄電池セルメーカーで、2020年に設立された。ビリー・ベルクロー工場は2023年下半期に操業開始予定で、当初は最低13.4ギガワット時(GWh)、2029年末までに40GWhまで生産能力を高める予定だ。カイザースラウテルン工場は2025年に操業開始予定で、当初は13.4GWh、最大40GWhまでの生産能力となる予定。ACCは、イタリア中部テルモリにも蓄電池工場を設立すると発表している。メルセデス・ベンツの2022年8月の発表によると、ACCは2030年までに欧州内の年間生産能力を少なくとも120GWh以上確保する予定だ(2022年8月23日記事参照)。
欧州では次世代自動車向けを中心に、リチウムイオン電池を製造する工場が続々と建設されている。フラウンホーファー・システム・イノベーション研究所(ISI)の2022年7月15日付発表によると、これまでに40を超える蓄電池セルメーカーが欧州での蓄電池工場建設を発表した(2022年8月16日記事参照)。関連して、蓄電池製造設備ビジネスを獲得するため、欧州企業が協力する動きも盛んだ(2022年9月30日記事参照)。シーメンスも今回の発表時、同社として蓄電池製造分野に力を入れていく点を明言しており、蓄電池製造設備ビジネスにおける競争は今後も加速しそうだ。
(注)デジタルツインとは「デジタル上の双子」の意で、物理的なモノと空間をデジタル上に再現し、シミュレーションや管理などを行うための技術。
(クラウディア・フェンデル、高塚一)
(ドイツ、フランス)
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