侵攻から半年、在ロシア日系企業景況感は低調続く
(ロシア、日本、ウクライナ)
欧州ロシアCIS課
2022年09月09日
ジェトロが9月7日に発表した、在ロシア日系企業を対象に景況感を尋ねたアンケート結果によると、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から半年が経過した現時点の日系企業の景況感は、依然として厳しい状況にあることが分かった。
前回調査(2022年5月25日記事参照)から多少改善したものの、景況DI(注)はマイナス57(前回比6ポイント増)、また2カ月後の景況見通しDIはマイナス61(6ポイント増)と引き続き低調だった(添付資料図1参照)。現地での生産・販売を停止したことで事業収入が著しく減少していること、現在も続く軍事侵攻や対ロ制裁を踏まえて2カ月後の見通しも明るくない、といった声が多かった。
最近または2カ月後の景況感を「さほど良くない」もしくは「悪い」と回答した企業93社に、自社の景況感に悪影響を与えている要因を尋ねた(複数回答)。最も回答が多かったのは「物流の混乱・停滞」(61.3%)で、次いで「西側諸国による対ロ制裁」(52.7%)だった。前回調査で2番目に回答が多かった「事業継続によるレピュテーションリスクの増大」(43.0%)は14ポイント減少した(添付資料図2参照)。
製品・サービスの自社販売価格DIは前回比3ポイント減の28、製品在庫DIは5ポイント減の60となった(添付資料図3参照)。価格上昇のピークは越えたものの、物流・資源コストの上昇や市中の需給逼迫により、再び価格が上昇することを示唆するコメントがあった。また、在庫が枯渇したとの声が目立った。
資金繰りDIは、前回比15ポイント増のマイナス27となった(添付資料図4参照)。引き続き厳しい状況だが、事業停止に伴い、仕入れを止めたことで資金繰りが改善した、との声もあった。
今回の調査は2022年8月25~31日、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業およびサンクトペテルブルク日本商工会加盟企業202社を対象に実施し、107社から回答を得た。調査結果の詳細はオンライン ブラックに掲載されている。日系企業の現在の事業ステータス、今後の事業見通し、駐在員の退避状況などについては2022年9月9日記事を参照。
(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。景況感DIは「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした企業の比率を引いた数値。製品・サービスの自社販売価格DIは「上昇」から「下降」の比率を引いた数値、製品在庫DIは「不足」から「過大」の比率を引いた数値、資金繰りDIは「改善」から「悪化」の比率を引いた数値。
(菱川奈津子)
(ロシア、日本、ウクライナ)
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