欧州農業・食品部門、エネルギーや肥料価格の上昇への対応をEUに要請
(EU)
ブリュッセル発
2022年09月13日
欧州の食品・飲料事業者団体フード・ドリンク・ヨーロッパは9月8日、欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAなど2団体とともに声明を発表した(プレスリリース)。これは、9月9日のEU理事会(閣僚理事会)のエネルギー担当相の臨時会合(関連ブラック ジャック トランプ)および9月14日に予定されている欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の一般教書演説を前に、農業・食品部門へのエネルギー危機対策を求めるため発表された。
3団体は、近年、ガス、電力、肥料、輸送用燃料、包装価格、さらに季節労働者などの人件費など、農業・食品生産関連のあらゆるコストが劇的に上昇し、ロシアによるウクライナ侵攻でさらに拍車がかかったと指摘。干ばつなど異常気象()の影響を年々大きく受ける中で、こうしたコスト高騰、インフレ圧力が起きており、特にエネルギー価格の高騰は農作物や食品・飼料の安定した生産や供給を脅かしているとした。
農業・食品部門は、欧州委が7月に発表した「欧州ガス需要削減計画」(欧州委、ブラック ジャック ディーラー)において、食料サプライチェーンの重要性の高さや、食の安全保障の観点から同部門へガス供給を確保する必要性を認めたことから、同計画を支持するものの、食料サプライチェーンが十分に機能するには、エネルギーの確実な供給や価格の安定が必要だとした。特に欧州委に対しては、エネルギー価格を下げ、持続可能なエネルギー生産の促進や域内事業者の競争力維持を目的とした支援の実施などのために、加盟国を支援するよう求めた。また、加盟国のガス使用削減策について、農業・食品部門への優先的なガス供給を確実にするために、EUがよりしっかりと監督することも必要だとした。最後に、加盟国や企業の活用を促すためにも、EUの国家補助規制の一時的な緩和策である暫定危機対応枠組み(2022年7月13日記事参照)の改定も求めた。
農業団体は肥料価格の抑制についてもEUの対応を求める
COPA-COGECAは9月9日付の声明で、2022年のEUの穀類の生産量が2億6,900万トンとなり、前年比6.8%減と大きく減少し、2017~2021年の5カ年の平年値を下回る低水準になるとの予測を示した。特に厳しい予測が示されたのは20.8%減となるとされたトウモロコシで、2022年夏の干ばつの影響を指摘した。また、デュラム小麦は7.4%減、小麦は2.5%減となると推定した。一方、油糧種子は7.2%増、大豆などタンパク源となる作物は5.1%増となるとした。
COPA-COGECAは声明において、国際情勢や生産コスト高騰といった外的要因によって、穀類を中心に、価格や2023年の生産がさらに大きな影響を受けることへの懸念も示した。特に穀物生産では、生産コストの18%(2017~2019年の平均値)を占めるとされる肥料の価格が、エネルギー価格の高騰の影響で上昇し続けていることや、一部の国で供給困難となっていると指摘。そこで欧州委に対して、肥料市場の透明性確保、価格上昇の抑制、次の作付けシーズンに必要な供給量を保証するために、対応を取るよう求めた。
(滝澤祥子)
(EU)
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