欧州委、ロシア産ガス供給停止に備え、ブラック ジャック ディーラー ルール
(EU、ロシア)
ブリュッセル発
2022年07月21日
欧州委員会は7月20日、ロシア産天然ガスの供給減によってエネルギー需要が増える冬季に供給不足が懸念されるとして、EU全加盟国が2023年春までにガス需要の少なくとも15%削減を目指す「欧州ブラック ジャック ディーラー ルール」と、削減目標を法制化する規則案を発表(プレスリリース)した。
この計画によると、6月のロシアからEUへの天然ガス供給量は、過去5年の同時期平均の3割以下となっており、今後は供給がさらに削減される可能性が高いとして、供給の完全停止といった事態も視野に、EUはエネルギー危機に備えるべきとしている。欧州委は既にロシア産化石燃料依存からの脱却計画「リパワーEU」(2022年5月20日記事参照)の早期実現に向けて、ロシアに代わる天然ガス供給先の確保に急いでいるが(2022年7月20日記事参照)、現状に鑑み、供給先の多角化だけでは不十分として、ガス需要の削減策が必要としている。
計画ではまず、EU全加盟国に対して、8月1日から2023年3月31日まで、過去5年の同時期平均と比べて自主的にガス消費を15%削減するように求めている。計画には、各加盟国が需要削減策を実施するに当たって、指針とすべき共通の原則と基準を含んでいる。これによると、加盟国が優先して実施すべき措置として、石炭火力への一時的な回帰などを含めた天然ガスの代替となるエネルギー源の最大限の活用や、「リパワーEU」で発表された政策文書「EU省エネルギー」の実施など、一般家庭を含むあらゆる消費者に向けた省エネへの取り組みなどを挙げている。
一方で、既存のEU規則により、一般家庭や病院、学校などの必須の社会サービスは「保護された消費者」としてエネルギー供給が保障されていることから、ガス供給の停止を含む削減策の主要な対象となるのは産業界としている。削減策の対象となる産業の優先順位をつけるに当たって、加盟国は医療・食品などの社会的重要性や、EU全体の重要なサプライチェーンへの影響、供給中断後の生産再開の容易さ、生産延期、域内他地域での生産可能性、輸入による代替品の有無などを考慮すべきとしている。産業界に対する削減方法については、加盟国は市場原理に基づき、需要削減にインセンティブを与える措置を導入すべきとしている。具体的には、加盟国ごと、あるいは共同でのオークションや入札制度を提唱。制度設計にもよるが、企業の追加的な削減量に応じて金銭的補償の提供を想定している。また、緊急時に事前に設定した削減量・期間に応じて金銭的補償を提供することで、エネルギー供給の中断を可能にする契約の活用なども推奨している。こうした措置の実施後もエネルギー需給が改善されない緊急事態では、加盟国は事前に設定した優先順位に応じて特定の産業に対して、エネルギー供給を部分的あるいは全面的に中断し得るとしている。
さらに、計画では、加盟国の自発的な削減策にもかかわらず、エネルギーの需給が逼迫した場合に、規則案に基づいて、欧州委はEUレベルの警報を発動できるとしている。警報が発動された場合、全加盟国は8月1日から2023年3月31日までの期間中、ガス消費を少なくとも15%削減することが義務付けられる。削減方法については、共通指針を考慮した上で、各加盟国が自由に決めることができる。
規則案は、7月26日に予定されているEU理事会(閣僚理事会)で審議されるとみられる。EU理事会は、全加盟国が賛成しない場合でも、特定多数決により規則案を採択することができる。
(吉沼啓介)
(EU、ロシア)
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