欧州委、ウクライナ情勢とエネルギー価格高騰を受け、国家補助ルールのさらなる緩和を提案
(EU)
ブリュッセル発
2022年07月13日
欧州委員会は7月11日、ロシアのウクライナ侵攻により影響を受けた企業に対する国家補助規制の一時的な緩和策である、国家補助に関する暫定危機対応枠組みの改正案を、加盟国に対して送付したと発表(プレスリリース)した。
EUでは、域内競争を不当にゆがめる可能性があるとして、加盟国による特定の企業に対する国家補助は原則として禁止されており、自然災害やその他の非常事態の場合など一定の条件を満たし、域内市場の原則に合致する場合にのみ、例外的に認められている。欧州委は3月8日、ロシア産化石燃料からの脱却計画「リパワーEU」の概要とともに、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰の影響を受けた企業に対する支援策として、国家補助に関する暫定危機対応枠組みを設置する方針を発表()。同月23日には、同枠組みを採択していた。
同枠組みでは、(1)今回の危機により影響を受けたあらゆる産業の企業1社当たり最大40万ユーロまでの補助金や税制上の優遇などの支援(ただし、農業・漁業などは1社当たり最大3万5,000ユーロまで)、(2)政府保証や補助金付き融資による流動性支援、(3)エネルギー料金の高騰に対する補助(高騰するガスや電気料金による負担が多いエネルギー多消費産業の企業などは1社当たり、対象費用の3割以下、最大200万ユーロまでの支援。ただし、営業損失を出している企業に対しては最大2,500万ユーロ、特に影響を受けている業界の企業に対しては最大5,000万ユーロまで支援)の実施を、加盟国に対して認めている。
欧州委は今回、長期化するロシアによるウクライナ侵攻の影響や、省エネ・エネルギー供給の多角化・再生可能エネルギーへの移行の加速からなる「リパワーEU」の詳細()を発表したことから、その実現に向けた施策を考慮する必要があるとして、以下の修正を提案している。
- 農業・漁業を含む、今回の危機により影響を受けたあらゆる産業の企業に対する、直接的な補助金を含む支援上限の引き上げ
- 「リパワーEU」に沿った、グリーン水素などを含む再生可能エネルギーへの投資促進のための追加支援策(迅速な実施が可能な簡易的な入札手続きスキームの設置など)
- エネルギー効率の改善や産業の脱炭素化などに向けた追加支援策(新たな入札に基づくスキームの設置、あるいは一定の上限までの入札によらない直接的な事業支援。中小企業や特にエネルギー効率の良い事業などに対する支援の上乗せなど)
なお、同枠組みは、2022年末までの時限的な措置とされているものの、欧州委は、年末の期限までには延長の必要性を検討するとしている。
(吉沼啓介)
(EU)
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