実写 版 ブラック ジャック、増産に取り組む
(ルーマニア)
ブカレスト発
2022年08月29日
ルーマニアはEUでオランダに次ぐ天然ガス生産国(注1)だが、消費量が生産量を上回る冬季には、貯蔵量が少ないため輸入に頼らざるを得ないと専門家は指摘している。
8月20日時点で天然ガスの消費量に対する貯蔵量の割合(注2)は18.3%と、EUで消費量が最大のドイツ(19.5%)や2位のイタリア(19.6%)より低い(添付資料図参照)。作動ガス量(注3)に対する貯蔵量の割合も、ルーマニアは68.5%と、ドイツ(79.5%)、イタリア(79.4%)に見劣りする。現地天然ガス輸送会社トランスガス(Transgaz)の4月1日発表のレポートによると、過去5年間の貯蔵量の年間消費量に対する割合は約22%にとどまっている。初冬にたとえ貯蔵率が100%に達していても、冬期間全体では需要の半分しか満たせないと、ジャーナリストのラドゥ・ピルカェ氏が8月9日付「Wall-Street.ro」で指摘した。
貯蔵量不足を克服するため、ビルジル・ポペスク・エネルギー相は2021年12月7日、EU基金投入により国内の貯蔵容量を現在の30億立方メートルから2025年までに40億立方メートル以上に増加させると述べていた(「AGERPRES」2021年12月7日)。
生産面では、2026年までの生産開始を目指す黒海の第19ネプチューン深海ブロック(2022年5月12日記事参照)に加え、6月15日には黒海石油ガス(Black Sea Oil & Gas)のジョイントベンチャーがルーマニア沖のミディア・ガス開発プロジェクト(MGD Project)で天然ガス生産を開始した。同社は、年内に5億立方メートルの生産、生産開始から3年以内に年間生産量10億立方メートルを見込む。
ロシアによるウクライナ侵攻が引き起こしているエネルギー危機にあって、2021年のルーマニアの天然ガス輸入量35億6,000万立方メートルに対し、輸出量は7億1,900万立方メートル〔出所:EU統計局(ユーロスタット)〕にすぎない。しかし、今後の増産により、モルドバ(2022年8月5日記事参照)をはじめとする周辺国への輸出増強も期待されている。
(注1)EU統計局(ユーロスタット)によると、2021年の天然ガス生産量は、オランダが217億1,800万立方メートル、ルーマニアが89億1,900万立方メートル、これにポーランド55億6,300万億立方メートルと続く。
(注2)Aggregated Gas Storage Inventory(AGSI)のデータを引用。
(注3)working gas volume(WGV)。天然ガス貯蔵施設の通常の商業運転中に注入、貯蔵、回収できる天然ガスの量。ガス貯蔵庫の総容積から施設内の圧力を維持するためのクッションガスを差し引いた量。
(西澤成世)
(ルーマニア)
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