新型コロナ禍で本の祭典「ボイメラ」開催
(バングラデシュ)
ダッカ発
2022年03月04日
バングラデシュでは、同国最大の本の祭典「アマール・エクシェイ・ボイメラ(Amar Ekushey Boi Mela、通称:ボイメラ)が2月15日から3月17日にかけて開催されている。ボイメラは、政府機関のバングラアカデミー(注1)が、ダッカ市内(注2)で例年2月1日から1カ月間にわたり開催する、重要行事の1つだ。今回は2022年1月以降の新型コロナウイルスの感染者の急増(2022年1月24日記事参照)を受け、開催が延期されていた(「プロトム・アロー」紙2022年2月4日」)。
ボイメラには、1952年2月21日の「ベンガル語国語化運動(注3)」による犠牲者を弔うという歴史的背景もある。そのため、本祭典は例年大きなにぎわいをみせると同時に、会期中はナショナリズムが高まる期間でもあり、会場周辺の治安情勢の変化には注意する必要がある(注4)。会場では通常、書籍価格が20~30%程度割引され、多くの来場者を通じた販売利益が見込める。そのため、当地の著者、出版・印刷会社は本イベントに照準を合わせ書籍の出版などを行っており、出版・印刷業界に大きな経済効果をもたらす意味でも重要な催しとなっている。
2021年は、新型コロナウイルス感染の影響で開催が遅れた(3月18日~4月12日)上に、3月下旬から感染が急拡大し、出版・印刷業界は大きな打撃を受けた。「ロックダウンや公共交通機関の停止(2021年4月5日記事参照)などにより、スタッフの移動にかかる費用が倍増。出版部数も減少し、売り上げは前年の20%以下に落ち込んだ」といった出展者の声もあった(「ビジネススタンダード」紙2021年4月12日)。2022年は、当初2月28日までの会期だったところ、出展者からの要請を受け27日に、3月17日まで延長されることとなった(「デイリースター」紙2022年2月27日、「プロトム・アロー」紙2022年2月28日)。
こうした中、書籍販売の地場系eコマース「ロコマリドットコム(Rokomari.com)」は2月6日から、オンラインで独自に「ボイメラ」と銘を打ったキャンペーンを実施している。現地報道によると、新版の書籍が20~25%割引で購入可能とされ、さらにモバイルファイナンスサービス(MFS)で支払う場合、購入者に対し、代金の20%相当分がキャッシュバックされる(「プロトム・アロー」紙2022年2月5日)。引き続きボイメラの開催動向や、関連企業の取り組みに注目が集まる。
(注1)バングラデシュのベンガル語政策を策定・実施する文化省傘下の研究機関。
(注2)バングラアカデミーの敷地内および隣接するスラワルディ公園。
(注3)バングラデシュ(当時の東パキスタン)において、パキスタン(当時の西パキスタン)の母語であるウルドゥー語を国語化するために行われた政府の言語政策に対し、ベンガル語を守るため、学生を中心とする国民が政府と衝突した事件。
(注4)1999年、ユネスコにより2月21日を「国際母語の日(International Mother Language Day)」に指定。
(八百板翼、山田和則、安藤裕二)
(バングラデシュ)
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