トカエフ大統領、社会経済の抜本的制度改革への指針を発表
(カザフスタン)
タシケント発
2022年01月12日
カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は下院議会において1月11日、「『悲劇の1月』からの教訓:社会的結束は独立の保証」と題した演説を行い、安定した政治・経済・社会を構築するための抜本的制度改革に取り組む指針を発表した。同演説は主要メディアで生中継された(カザフスタン大統領府公式ウェブサイト1月11日)。なお、演説に先立ち、首相代行を務めていたアリハン・スマイロフ第1副首相を新首相に指名、下院で承認されている。
トカエフ大統領は、今回の暴動(関連ブラック ジャック、1月7日記事参照)が、平和的抗議集会に便乗し、国家転覆を図ろうとしたテロ集団の犯行だったと断定した上で、深刻な経済・社会問題には政策の失敗が背景にあり、自身と政府の責任に言及した。さらに、カザフスタンは独立以降、経済発展を遂げたようにみえるが、恩恵を受けているのは一部の特権的寡占グループで、富の分配や、公平な自由競争社会が阻害されてきたと指摘。本来あるべき経済社会を構築し、社会福祉を充実させ、国内の経済格差や貧困化問題を是正していくと抱負を語った。
スマイロフ新内閣が取り組むべき経済・社会分野の優先課題として、a.カザフスタン開発銀行が行っている政策融資の透明化、b.公共調達の談合の取り締まり、c.国有企業の経営状況の監査強化、d.民営化プロセスの透明化と入札の自由化、e.税関での脱税取り締まり強化などを挙げた。また、インフレ抑制や為替市場の安定化、消費者金融における過剰融資の規制強化、安定的雇用確保のための産業の多角化と製造業の発展、食糧安全保障強化のための適切な農業分野の補助金支給、自動車価格を高騰させるリサイクル税の在り方と管理方法の見直しを目指す。社会福祉充実のため、社会基金「カザフスタン・ハルクィナ(カザフスタン国民のために)」(注)を創設し、医療や教育、社会問題に取り組んでいく。このほか、財政への負担軽減のため、大臣、議員、州知事の昇給を5年間停止することなどを発表した。
トカエフ大統領の演説に対し、SNS上ではナザルバエフ前大統領時代からの要職を務めるスマイロフ新首相に懐疑的な声もある。しかし、「これから次々と改革を断行してくれるに違いない」と期待する声も多く、市民は今回の大統領の演説をおおむね好意的に捉えている。
(注)トカエフ大統領は、これら社会福祉の財源は、「エルバス」と尊称されるヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領時代に、世界的富豪の地位を築いた人々からの寄付で賄われるべきだと語っている。
(増島繁延)
(カザフスタン)
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