バイデン米大統領、1.9兆ドルの新型コロナ対策法案に署名、ワクチンの普及加速を次の目標に

(米国)

ニューヨーク発

2021年03月16日

ジョー・バイデン米国大統領は3月11日、新型コロナウイルス対策のための「2021年米国救済計画法(H.R.1319外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」に署名し、同法が成立した。公約の筆頭に掲げていたもので、1兆9,000億ドルの予算規模となる。バイデン大統領は同日夜に国民向けに演説を行い、5月1日までに全ての成人をワクチン対象者とするよう各州に指示する方針を示した。7月4日の独立記念日までに、社会活動の一定の正常化を目指す。

米国救済計画法は、バイデン氏が大統領に就任する直前の1月14日に概要が発表され(オンライン ブラック ジャック次期米大統領、1兆9)、その後、連邦議会で審議が行われていた。しかし、共和党から反対があり、上院で議事妨害を抑え込むのに必要な60票を得られる見通しが立たなかったため、「財政調整措置」と呼ばれる特別な法案審議の手続きが利用された(関連ブラック ジャック コツ)。法案は最終的に上院で50対49、下院で220対211と、ほぼ党派構成に沿った投票結果となった。法律の内容は1月発表時とほぼ同一となるが、民主党内の中道派の意見なども踏まえて、主に次の点が変更された。

  • 国民1人当たり1,400ドルの現金給付について、年収が7万5,000ドルを超える場合は段階的に給付額が減少し、年収8万ドルを超える層には給付額がゼロとなる(当初は年収10万ドルまでを対象としていた)。
  • 失業保険の上乗せ給付について、当初は月当たり400ドルを想定していたが、300ドルに減額(給付期限は9月6日まで)。
  • 連邦最低賃金を時給15ドルに引き上げる(現行:7.25ドル)条項を削除(上院の議事運営専門家が、「財政調整措置」を用いた法案に最低賃金に関する条項を含むことは規則違反と判断したため)。

今回の法律成立により、新型コロナウイルス対応への連邦政府・議会の財政出動総額(注1)は約6兆ドルに達する(添付資料表参照)。議会予算局(CBO)は、米国救済計画法は2021年度に1兆1,600億ドルの財政赤字を追加的に発生させると推計PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している。CBOの中長期財政見通しでは、本対策を反映前の2021年度の財政赤字は2兆2,580億ドルと推計されていた(2021年2月15日記事参照)。米国救済計画法の成立により、2021年度の財政赤字は、過去最悪だった2020年度の財政赤字3兆1,320億ドルを超える公算が大きくなっており、金利が上昇している局面の中で、さらなる財政悪化が懸念される。

5月1日までに全米の成人をワクチン接種対象に

バイデン大統領は3月11日夜にテレビ演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行い、次の目標として、全ての州、先住民族、自治領に対して5月1日までに、全ての成人(18歳以上)へのワクチン接種を可能とするよう指示するとした。そのために、今回成立した予算を投じて、ワクチン接種場所の増加などソフト・ハードのインフラを整える(注2)。また、数週間以内に、ワクチン接種が完了した人向けの追加の行動ガイダンスを発表する(注3)。そして、学校を安全に再開させるとともに、7月4日の独立記念日には少人数の集まりができるようにし、「国家としての独立だけではなく、ウイルスからの独立の開始を記念した特別なものにする」と意気込みを示した。

(注1)これまでに米政府・議会が成立させた新型コロナウイルス関連の法案は以下の記事および添付資料を参照。

(注2)詳細はホワイトハウスによるワクチン普及の加速に関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注3)米国疾病予防管理センター(CDC)は3月8日に最初のガイダンスを発表している(米CDC、ブラック ジャック)。

(磯部真一、宮野慶太)

(米国)

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