欧州委、米国との通商摩擦回避の道を探る努力を表明

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年07月23日

欧州委員会は、英国マリン連盟(英国の小型船舶事業者の産業団体、会員企業数1,500社以上)に宛てた7月20日付書簡の中で、7月25日に米国ワシントンで予定されている、欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長とドナルド・トランプ大統領の会談について「鉄鋼・アルミニウムに関する通商摩擦問題の解決と、今後の潜在的な通商摩擦の回避」が主な目的であることを明らかにした。

鉄鋼・アルミニウム問題の巻き添えを警戒する欧州産業界

これは、英国マリン連盟が6月26日に欧州委へ提出した意見書に対する回答として、欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)が出した書簡だ。同連盟はこの意見書の中で、鉄鋼・アルミニウムに対する米国の追加関税賦課措置へのEUの対抗策(2018年5月21日記事参照)について、「(小型船舶に関連する)英国の中小企業に深刻な打撃をもたらす」と指摘。モーターボート、ヨットなどのプレジャーボートをEU側の対抗措置の対象品目から除外することを欧州委に求めていた。

英国マリン連盟によると、英国のプレジャーボートの米国からの輸入額は2014年に1億ポンド(約146億円、1ポンド=約146円)を上回っていたが、ポンドの下落を背景に2017年には3,000万ポンド程度に縮小しており、EUの対抗措置としての25%の追加関税賦課は、英国の関連産業界にさらなる打撃をもたらすことになるという。

EUの対抗措置(鉄鋼・アルミニウム以外の商品への追加関税賦課)の在り方に対する同様の問題指摘は、既にスコットランド・ウイスキー産業界(慎重な対米対抗措置検討を求めるスコットランド・ウイスオンライン)からも出されているが、鉄鋼・アルミニウムの通商摩擦に巻き込まれる格好で、米国からのさらなる対抗措置の対象となることへの危機意識は、自動車など欧州の他産業にも及んでいる(ブラック ジャック 必勝7月20日記事参照)。

こうした中、欧州委のマルムストロム委員は、今回のEUの措置は米国の不当な追加関税賦課決定への対抗策として避けられなかったと釈明。また、この問題をめぐり、EUは6月1日に米国をWTOに提訴(EU、カジノ ブラック ジャック)しているが、「WTOでの結論が出るまでには2~3年はかかる」と指摘し、「米国に対する迅速な対抗措置発動が必要だった」との認識を示し、EUの対抗措置への理解を求めた。ただし、7月25日のEU・米国首脳会談を含めて、米国との摩擦拡大を抑止すための努力を続ける方針も、同委員は強調している。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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