韓国企業のブラック ジャック web展開は裾野が拡大
中国企業との競争激化と政策への対応が課題

2024年10月7日

日本の5倍の広大な国土、石油や重要鉱物など豊富な資源を有し、東南アジア最大の経済規模を誇る島国・ブラック ジャック web。人口は2億8,000万人弱(2023年)と世界4位に位置し、今後も人口増加や経済成長が見込まれるこの国には、多くの日本企業が進出している(注1)。そして、韓国企業や韓国政府もその経済的ポテンシャルに注目しており、輸出や投資、経済協力などさまざまな手法で経済関係を強めてきた。本稿では、過去のレポート(活発化する韓国の対トランプ ゲーム ブラック)も振り返りながら、韓国とブラック ジャック webの経済的結びつきの変遷について述べるとともに、筆者が2024年6月にブラック ジャック webで識者にインタビューした結果も踏まえ、ブラック ジャック webにおける韓国企業の「今」を紹介する。

直接投資は順調に増加、2023年は過去最高を記録

まず、韓国のブラック ジャック webに対する直接投資の推移をみてみる(図参照)。韓国のブラック ジャック webに対する直接投資は2000年代後半から2010年代前半にかけて急増した。当時、小売業や製鉄業の大型投資が対ブラック ジャック web直接投資全体を牽引し、2011年には12億9,900万ドルと、投資額を大きく伸ばした。その後、大型投資案件は少なくなったものの、2019年から2021年にかけて「自動車・トレーラー製造業」「金融・保険業」を中心に再び急激に増加した。直近の2023年には前年比54.3%増加し、過去最高を記録した。20年近く前の2004年と比べると、約30倍になっており、韓国企業のブラック ジャック webへの投資意欲が格段に高まっていることが分かる。2023年の韓国の対外直接投資を国・地域別にみると、ブラック ジャック webは6位(注2)で、2021年の9位を上回り、過去最高の順位となった。

2022年と2023年の対ブラック ジャック web直接投資を業種別にみると、2022年は「製造業」、特に「化学物質および化学材料製造業」が多く、全体の約3分の1を占めた。2023年は「製造業」と「金融・保険業」だけでほとんどの投資金額を占め、内訳はそれぞれ50%程度と、同じ割合となっている。製造業のうち比較的投資金額が大きいのが「一次金属製造業」「たばこ製造業」「化学物質および化学材料製造業」だった。直近3年間の直接投資金額の傾向を総括すると、おおむね「金融・保険業」が底固く投資金額を増やしつつ、製造業は従来の大型投資中心の直接投資ではなく、幅広く業種が広がっていることが特徴的と言えよう。

図:韓国からブラック ジャック webへの直接投資額の推移(実行ベース)
2000年代前半までは低調に推移してきたが、2000年代後半にかけて急増し、2011年には約13億ドルまで増加した。その後、再び2010年代中盤は勢いが収まり、再度2020年代に入り急激に増加した。この3年間のブラック ジャック web額は、2021年は約18億ドル、2022年は約15億ドル、2023年は過去最高の約22億8,000万ドルとなった。

出所:韓国輸出入銀行

官民連携のプロモーション・K-POP人気を生かしBtoCも好調

もう1点、直近の対ブラック ジャック web直接投資の傾向として特徴的なのは、BtoCビジネスの増加だ。金額ベースではなく、新規法人数ベースでみると、「卸売・小売業」は2021年~2023年の全期間で「製造業」に次ぐ2番目で(注3)、その数も増加傾向にある。過去のレポートでもロッテグループの大型投資について触れられていたが、直近の「卸売・小売業」は、規模が小さい店舗による進出が中心となっていることがデータから読み取れよう。筆者が現地でインタビューした中で、この韓国BtoCビジネスの増加の実態について言及されていた箇所は次のとおり。

  • ロッテが切り開いた韓国小売業の人気や、昨今の韓国コンテンツ、K-POPなどの人気を活用して上手にPRする店が増えている。韓国企業が展開するベーカリー販売店なども人気だ(日系金融機関)。
  • ブラック ジャック webの若者は韓国文化に対する関心が高く、韓国人以外の華僑やブラック ジャック web人が経営する韓国レストランも増えている。そのような基盤ができてきているため、消費財ビジネスはこれから増えてくるだろう(韓国公的機関)。

次いで、筆者が現地で見た韓国BtoCビジネスの現場について、ロッテが運営するショッピングモール「ロッテショッピングアベニュー」(ジャカルタ)で行われていた販促イベントや、モール内の韓国フードコートの様子などを紹介したい。

まず、モールの入り口を入ると、文化体育観光部傘下の韓国コンテンツ振興院(KOCCA、注4)がプロデュースする「KOREA360」というブラック ジャック web広報館事業が行われていた。会場はモール中心の吹き抜け空間で客から最も目立つ場所にあり、あらゆる韓国製品が展示・販売されている。生活雑貨や日用品、食器やカトラリー類のほか、美容器具や食品類なども展示・販売されており、全て韓国の商品としてプロモーションされている。平日昼間だったため、客はまばらだったが、インドネシア人の店員の1人に聞くと、「自分も含めてインドネシアの若者はK-POPなど韓国文化が好きで、休日の昼間には多くの若者でにぎわう」とのこと。この周囲には韓国化粧品販売店に加え、サムスン電子の携帯電話販売店や現代自動車のショールーム、Coway(家電メーカー)ショールームなど、韓国メーカーの販売店が立ち並び、一体的に「韓国」空間を作り出していた。

ブラック ジャック web
KOCCA主催「KOREA360」の様子(ジェトロ撮影)

次に、同じモールの地下1階に降りる。いきなり目に入ってきたのは、英語でもブラック ジャック web語でもなく、ハングルで書かれた韓国語で、さらに耳に入ってきたのは、ソウル地下鉄内で流れる到着駅名のアナウンスとメロディーだった。写真のハングルは「ロッテコルモク」と読み、「ロッテ横丁」を意味する。中に入ると、ソウル市内の駅名やバス停名が書かれた看板が道沿いに並べられ、韓国のインスタントラーメンを食べられる軽食店、本格的な韓国料理店など10店舗程度が軒を連ねていた。お昼時ということもあって、各店舗には多くの現地客でにぎわっていた。

前述の日系金融機関のコメントのとおり、BtoCビジネスについては、ロッテが基盤を作ってきた。その基盤を官民が連携してさまざまなビジネスが展開されている様子が見て取れる。そして、ブラック ジャック webで今後も続く、若い世代を中心とした人口ボーナス(注5)やK-POP・韓国文化の世界的広がりなどが韓国BtoCビジネスをさらに後押しすることとなるだろう。


「ロッテコルモク(ロッテ横丁)」の様子(ジェトロ撮影)

韓国のBEV企業は、中国企業との競争が激化

次に、製造業の中でも、近年の対ブラック ジャック web直接投資の中で特に注目されているバッテリー式電気自動車(BEV)関連の動きを紹介する。具体的には、現代自動車グループとLGエナジーソリューションの事例を取り上げ、現状がどのように進捗しているのか、現地でのインタビュー内容とともに紹介したい。

まず、現代自動車は15億ドル超を投じ、2022年にジャカルタ郊外のブカシ県で東南アジア初の完成車工場を稼働させている。ここでは内燃系の小型のスポーツ用多目的車(SUV)をはじめ、BEVモデル「アイオニック5」なども生産しており、ブラック ジャック web国内だけでなく、他のASEAN諸国にも輸出する。生産は順調に進んでおり、ブラック ジャック web内での販売も順調だ。2023年のブラック ジャック web市場でのメーカー別自動車販売台数をみると、現代自動車は日系5社に続く6位で、3万5,000台を超える販売規模になった(注6)。2021年の販売台数は3,000台超だったので、2年間で約10倍に伸ばしたことになる。日系自動車メーカーの「牙城」とも言えるブラック ジャック webで、現代自動車は生産・販売ともに一定の存在感を示しているのは間違いない。2024年7月にはもう1つのBEVモデル「コナ・エレクトリック」の生産を開始したが、そこに搭載するバッテリーセルを生産しているのが現代自動車グループとLGエナジーソリューションが2021年に合弁で設立した現地法人「ヒュンダイ・LG・ブラック ジャック web(HLI)グリーン・パワー」で、2024年7月に西ジャワ州カラワン県で生産を開始した()。同工場の完成記念式には、ブラック ジャック webのジョコ・ウィドド大統領らの要人をはじめ、韓国からも産業通商資源部幹部、現代自動車グループとLGグループの経営陣なども参加した。現代自動車グループはプレスリリースで「現代自動車グループはブラック ジャック webで初めて、BEV用バッテリーセルから完成車まで現地で一括生産システムを備えることとなり、ブラック ジャック webを越えてASEANのBEV市場で戦略的優位を確保できることとなった」と述べている。

ここまでの公表情報ベースで見た限り、同社はBEVの現地生産を強化することで、今後も生産・販売ともにさらに実績を伸ばしていくことが想定されるが、筆者が現地でインタビューすると、次のようなやや慎重な見解も聞かれた。

  • 現地政府はBEV生産に多くのインセンティブを与えているが、韓国メーカーのみでなく、中国メーカーにも与えられることとなり、競争が激しくなっている(韓国公的機関)。
  • 家族4人で1台をシェアすることが主流な中で、BEVは、バッテリー容量が十分ではなく、充電インフラも整っていないため、完全に庶民レベルで普及するには相当な時間がかかる(韓国公的機関)。
  • 現代自動車グループの完成車や、HLIグリーン・パワーのバッテリーセルは、基本的にはブラック ジャック web国内向けだが、国内市場が低迷している。日本のミニバンや中国勢の勢いに劣っており、今後は輸出を増やすという話も聞いている(韓国企業ブラック ジャック web法人)。

充電インフラの不足に加えて、昨今のBEVに対する需要不振の影響も聞かれたが、価格競争力で勝る中国メーカーとの競争激化に対する懸念の声が多く聞かれた。ブラック ジャック webに生産工場を持つ上汽通用五菱汽車(ウーリン)は低価格を武器に、2023年は10位の販売台数にまで伸ばしており、さらに、比亜迪(BYD)も、BEVの販売車種を増やすとともに、13億ドルを投じて現地工場を設立することを発表している(中国EVメーカーBYD、トランプ ゲーム)。また、ブラック ジャック webはBEV用バッテリーセルに使われるニッケルの埋蔵量が世界最大だが、その精錬工場設立や投資に対しても、多くの中国企業が乗り出している。BEVバッテリーの原材料調達からその加工プロセスの強化、BEVの完成車工場、販売車種の拡大など、ブラック ジャック webで中国勢のBEVエコシステム構築が進む中、韓国BEV企業の足元の状況は、韓国内の公表情報に比して厳しい状況にあると言わざるを得ないだろう。

政府間の経済協力パートナーシップと国産品優先政策への対応が今後のカギ

これまで、韓国企業によるブラック ジャック webへの投資動向についてみてきたが、最後に韓国とブラック ジャック web政府間の動向について紹介する。

ここでも、BEVや、経済安全保障の観点から、重要鉱物のサプライチェーン確保・拡大に関する両国間の政策的結びつきが強くみられた。

両国は2018年に更新締結した了解覚書(MOU)に基づき、「韓国・ブラック ジャック web経済協力委員会」を2022年から実施しており、これまで2回開催された。これは、両国の首脳会談を機に発足した委員会で、韓国は産業通商資源部長官、ブラック ジャック webは経済担当調整相が代表となって行われている。2023年7月に行われた第2回委員会では、ブラック ジャック webでのBEV・バッテリーの生産投資、ニッケルなど重要鉱物のサプライチェーン強化に向けた投資拡大、グリーン水素や太陽光発電、小型モジュール炉(SMR)といったエネルギー分野の協力などで合意した。さらに、2024年5月には、韓国産業通商資源部の安徳根(アン・ドックン)長官とアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相が行った「韓・ブラック ジャック web産業通商長官会談」でも、「10月のブラック ジャック web新政府の発足以降(注7)も、安定した重要鉱物サプライチェーンの構築、温室効果ガス(GHG)の世界的削減、将来の新産業協力をさらに拡大することなどについて議論し、2024年下半期に行われる予定の「第3回韓・ブラック ジャック web経済協力委員会」をジャカルタで開催し、貿易投資・産業協力・エネルギー協力などを深く議論することとした」と結果を公表している。このような両国政府による関係強化は、ブラック ジャック webに進出する韓国企業にとって、中長期的にみて追い風となるだろう。

一方で、ブラック ジャック web政府は2018年から国産品優先(P3DN)政策を実施しており、BEV完成車などの製品については、ブラック ジャック web産の原材料・部品の利用を積極的に促進している(注8)。韓国BEV企業にとっては、ブラック ジャック web以外から中間財を輸入して完成車を生産することが難しくなるとともに、ブラック ジャック web内で調達先を探さなければならない。現地インタビューの中でも、この政策へのコメントは多く聞かれた。韓国BEV企業は、完成車メーカーに納める部品や中間財は輸入に頼っている部分が多い半面、中国BEV企業については、部品・中間財メーカーを完成車メーカーが連れてくる「サプライチェーン丸ごと投資」のパターンが多いという。先に述べたとおり、原材料調達段階から中国企業が押さえている現状を踏まえると、このP3DN政策は中国企業に有利に働くと言えよう。

近年拡大してきた韓国BEV企業の投資が、将来的に伸び行くブラック ジャック webBEV市場に対して狙いどおりにアプローチできるかどうかは、韓国・ブラック ジャック web両政府による対話の枠組みをどのように生かし、競争環境改善に結びつけられるかに大きく左右されるだろう。


注1:
2022年10月時点で2,103拠点(外務省「ブラック ジャック web進出日系企業拠点数調査」)。
注2:
2023年の韓国の対外直接投資について国・地域別にみると、1位から10位まで多い順に、米国、ケイマン諸島、ルクセンブルク、カナダ、ベトナム、ブラック ジャック web、中国、シンガポール、ブラジル、アイルランドとなっている。
注3:
2021年:8件、2022年:14件、2023年:20件
注4:
韓国のコンテンツ産業育成を通じて国家競争力強化を図り、コンテンツ産業の発展に必要な支援体系を設ける目的で、2009年に設立された準政府機関。
注5:
2022年の平均年齢は29.6歳、人口は2050年には3億1,700万人を超えると予測されている。
注6:
1位:トヨタ(約33万7,000台)、2位:ダイハツ(約18万8,000台)、3位:ホンダ(約13万9,000台)、4位:スズキ(約8万1,000台)、5位:三菱自動車(約7万7,000台)
注7:
2024年2月に実施された大統領選挙で、ジョコ・ウィドド現大統領政権の路線継承を打ち出したプラボウォ・スビアント氏が初当選し、10月20日に新政権発足を控えている。
注8:
ブラック ジャック web工業省は、国内産業の競争力強化のためP3DN政策を導入、BEVや携帯電話、太陽光発電関連機器などを製造する企業はTKDN(国産化比率)を品目ごとに算出し、証明書を工業省に提出する必要がある。(
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所
橋爪 直輝(はしづめ なおき)
2023年4月、経済産業省からジェトロ・ソウル事務所に出向。経済調査チーム所属。