韓国化粧品OEM・ODMに強み
K-ビューティーの軌跡と展望(2)
2024年7月22日
前編「韓国化粧品が世界に躍進」では、韓国政府の政策とプレイヤーについて整理した。本稿では、韓国化粧品の成長を牽引する化粧品OEM/ODM企業に着目し、成長の要因を分析するとともに、今後の韓国化粧品産業がどこに向かっていくのか、またトレンドについてレポートしていく。
輸出額は年々増加、背景にOEM/ODM企業の存在
まず、韓国の化粧品の貿易動向をみることとする。韓国貿易協会によると、2023年の韓国の化粧品輸出額は前年比6.4%増の84億6,273万ドルと、歴代2位の輸出額を達成した。この額は、フランス(218億8,955万ドル)、米国(110億7,905万ドル)、ドイツ(97億5,357万ドル)に次ぐ世界第4位の規模だ。2013年からの10年間で輸出額は約7倍に成長した(図参照)。
このように韓国化粧品の輸出が拡大した理由の1つに、化粧品OEM/ODM企業の存在が挙げられる。世界的なK-POPやドラマなどのK-コンテンツのブームにより、韓国料理(K-フード)、韓国化粧品などに注目が集まるようになった。その間、韓国化粧品各社はさまざまな商品を短期間で発売し、常に話題を呼び、さらにそこに新商品を発売するという好循環を生み出した。これはまさに、韓国の化粧品OEM/ODM企業の強みである革新的な商品の開発、短期間での新商品の市場投入という部分に支えられた結果であるといえる。さらに、韓国国内のみならず、オンライン カジノ ブラック ジャックの化粧品メーカーやインディーズブランド(注1)などが韓国の化粧品OEM/ODM企業に製造を委託するケースも増えている。
ここで、前述の化粧品メーカーのアモーレパシフィック、LG生活健康、オンライン カジノ ブラック ジャック韓国コルマー、コスマックスの合計4社の2023年の売上高(表参照)を比較する。化粧品メーカー2社の売上高は、オンライン カジノ ブラック ジャック2~3倍の規模感となっている。しかし、2023年の売上高が10年前の2013年に比べてどれだけ増加したかをみると、OEM/ODM2社の成長速度がすさまじいことが見て取れる。一般的にOEM/ODM製品の原価率は25~30%程度だと言われていることから、実際に委託メーカーで販売されている最終製品価格に換算すると、OEM/ODM2社の生産規模は、メーカー2社をも上回る成長と言えよう。このように、韓国化粧品業界の成長にはOEM/ODM業界に鍵があると推測でき、輸出の拡大に一役を買っている。
項目 | 企業名 | 売上高 | ||
---|---|---|---|---|
2013年 | 2023年 |
2023年の対2013年 増加率 |
||
メーカー | アモーレパシフィック | 38,954 | 40,213 | 3.2 |
LG健康生活 | 43,263 | 68,048 | 57.3 | |
OEM/ODM | 韓国コルマー | 1,778 | 21,557 | 1,112.4 |
コスマックス | 3,790 | 17,775 | 369.0 |
出所:各社ウェブサイトを基にジェトロ作成
高水準の研究開発投資が成長を後押し
オンライン カジノ ブラック ジャック韓国コルマー、コスマックスは、これまですさまじい勢いで成長を遂げてきたが、その理由は研究開発への多大な投資と技術提携による技術力の向上だ。
韓国コルマーは、アモーレパシフィックやLG生活健康と契約しており、国内にOEM/ODM方式を定着させた企業だと言われている。実際、同社の売上高研究開発費比率は5%で、日本の資生堂の約3%、花王の約4%と比較しても高い水準にある(注2)。この投資水準は15年前から継続しており、設立当初から同社が研究開発を重要視していたことがわかる。また、同社は2019年に、スキンケア、メイクアップ、ヘア・ボディ、紫外線などに関する11の研究所をソウル市内に集約し、総合技術院を設立した。同社は化粧品関連のみならず、医薬品や健康機能食品の研究所も1つに集約することで研究効率を高め、相乗効果を生み出すことに努めている。
ところで、こうした研究所集約の動きは、韓国コルマーよりも、コスマックスが先駆者だ。コスマックスは会社設立以来、OEM/ODMに集中してきた。コスマックスはOEM/ODM製品の売り上げが売上高全体の98%以上で、化粧品OEM/ODM分野だけでみれば世界トップの事業者だ。韓国コルマーがOEM/ODMの他にも子会社などを通じて専門医薬品とHB&B事業(健康用品・ビューティー・飲料)も扱うのに対して、コスマックスは設立当初から化粧品製造、技術力、研究開発、品質管理に至るまで独自でノウハウを蓄積してきた。1997年の中央研究所設立以降、2005年にはバイオテックラボ、ナノテックラボの設立、2009年には基盤技術研究所を新たに設立、2011年には板橋(パンギョ)に研究開発部門を移転し、コスマックスR&Iセンター(注3)として改編した。コスマックスR&Iセンターは多くの国際認証を取得しており、グローバルスタンダードの研究開発システムを韓国国内で整備するにとどまらず、米国、中国、タイ、インドネシアといったオンライン カジノ ブラック ジャックにもR&Iセンターを設立し、現地に合わせた製品の研究開発に取り組んでいる。コスマックスR&Iセンターは一般的な化粧品研究所とは異なり、基礎化粧品とメイクアップ製品を融合、相互の技術を活用し、研究ができるようになっている。これにより、革新的な製品の開発がより可能となった。
さらに2社は、国内外のさまざまな企業・機関との技術提携にも注力しており、技術力の向上や商品開発などの相乗効果を生み出すことで着実に成長を遂げてきた。この動きは化粧品だけでなく、原料や容器など多岐にわたっている。
K-ビューティーが向かう先、新たな製品の登場に期待
では、将来的に韓国化粧品業界はどこに向かっていくのか。
今後、OEM/ODM企業は、ブランド企画段階から、生産・製造、マーケティングまで全てを担うOBM(Original Brand Manufacturing)方式に注力していくと言われている。OBMとは、容器のデザイン、開発・生産、マーケティングまで一気通貫でサービスを提供する方式だ。化粧品生産能力やノウハウがないスタートアップ企業、オンラインブランド専門企業はもちろん、流通事業者やインフルエンサー、有名美容皮膚科なども「顧客」となる。近年は特に、SNSのインフルエンサーの広報力やブランド力を活用し、販売を促進していく事例も増えており、コスマックスはインフルエンサーなどを対象にしたOBM事業モデルも公開している。一部業界関係者の間では、「インフルエンサーが化粧品市場をリードし、OBM市場は今後成長する」とも言われている。
OEM/ODM分野の企業ランキングを見ると、韓国コルマーとコスマックスに次いで業界3位のコスメカコリアや、近年急成長しているC&Cインターナショナル、コディの存在はあるものの、OBM分野に絞ると韓国コルマーとコスマックスの2強構造が顕著だ。この2社には、過去約30年間にわたり積み上げてきた生産ノウハウと規模、価格競争力、また原料や容器などその周辺材料の確保において圧倒的な優位性がある。さらに、このOBM方式は、韓国国内のみならずオンライン カジノ ブラック ジャック向け商品にも導入されている。コスマックスは2024年5月に日本のマーケティング支援企業Wackerと提携し、日本向けのOBM事業拡大に踏み切った。こうした動きは今後、日本のみならず世界各国でも徐々に浸透していくものと思われる。
次に、韓国化粧品業界でのトレンドに着目してみる。韓国のサミルPwC経営研究院が発表した「K-ビューティー産業の変化」報告書(注4)では、2024年の韓国化粧品産業のトレンドを、「ビューティーテック(Smart Beauty)」「美容家電(Self-care)」「スキニーマリズム(Skinimalism)」「スキンケア・機能性化粧品(Slow Aging)」「クリーンビューティーと持続可能ビューティー(Sustainability)」「SNSマーケティング(Social Marketing)」の「6S」と表現している。
全世界のビューティーテック市場は、2022年の620億ドルから2028年には1,890億ドル規模に成長すると言われており、資生堂、ロレアル、エスティローダーなど世界の著名な化粧品企業がAI、ビッグデータなどの先端技術を取り入れている。この流れを受けて、アモーレパシフィックは唇の状態の診断、ケア、化粧ができるデバイス「リップキュアビーム(Lipcure Beam)」を販売し、この技術が米国・ラスベガスで開催された「CES 2024」で革新賞を受賞(注5)した。
美容家電市場も、2030年までの間に年平均26.1%成長し、898億ドル規模に達するものとみられている。近年は従来の美容家電に比べて比較的安価な製品が多数発売されており、20~30代を中心に消費層が拡大している。韓国では、アモーレパシフィック、LG生活健康など化粧品企業だけでなく、東国製薬などの製薬会社なども美容家電市場に参入している。
「スキニーマリズム(Skinimalism)」とは、スキンケア(Skin-care)とミニマリズム(minimalism)を組み合わせた造語で、スキンケアから化粧までの工程で製品を5つまでしか使わない、いわゆる時短美容を意味する言葉だ。また、「スキンケア・機能性化粧品(Slow Aging)」は、加齢、大気汚染、環境問題などさまざまな話題によりスキンケアに対する関心が高まっており、それに伴い、美白やしわ改善、紫外線対策など機能性化粧品への関心が高まっていることを意味している。なお、機能性化粧品には前述のスキンケア商品だけでなく、脱毛対策、カラー剤など毛髪ケア商品も含まれている。こうした分野においては技術力に強みがあるOEM/ODM企業が頭角を現すであろう。
「クリーンビューティーと持続可能ビューティー(Sustainability)」とは、成分に有害物質を含まない化粧品、動物性原料を含まない化粧品から、再生プラスチックの使用、包装資材の削減、リサイクルしやすい商品の開発など、サステナビリティに配慮した取り組みまで広い意味を持つ。近年はこうした取り組みが増えており、(特集:現地消費者のブラック ジャック 必勝)、化粧品消費者層の大部分を占めるMZ世代(注6)が価値消費を重要視していることから、今後もそうした取り組みがさらに増え長期的なトレンドとなるであろう。
「SNSマーケティング(Social Marketing)」とはその名の通り、インスタグラム(Instagram)、ティックトック(TikTok)などのSNSを活用してマーケティングを行う手法だ。かつては広告としての役割が大きかったSNSも、近年では消費者とのコミュニケーションチャンネルとしての役割も担い、消費者の声を反映した商品開発などに活用されている。また、近年は前述のようなOBMにより、インフルエンサーと製品開発をし、SNSアカウントでの紹介はもちろん、ライブコマース(注7)も韓国で主流となっている。
このように、韓国の化粧品業界は民間主導で成長を遂げてきた中、それを後押しする形で政府支援が始まった。すでに世界的な地位を確立しつつあるK-ビューティー分野は、これまで培ってきた技術力を武器に、革新的で時代に沿った製品を提案し続けることで今後さらに成長すると見込まれる。その成長の中心となるのは、韓国OEM/ODM分野の企業で、国内にとどまらず、世界の市場にも同方式が普及、拡大する可能性が高い。さらにブランド企画から製造までを担うOBM方式で国内外に拡大する傾向が強まるであろう。また、今後は化粧品そのものに時代のニーズに即して、新たな価値が付加され、変化を遂げていくとみられる。
- 注1:
- 一般的な化粧品会社が出すブランドではなく、インフルエンサーなど個人が立ち上げたブランドラインを指す。
- 注2:
-
資生堂公式ウェブサイト(2024年6月14日閲覧)。
花王公式ウェブサイト(2024年6月14日閲覧)。 - 注3:
- コスマックスの設立理念である「Research & Innovation」の頭文字を使用して、R&Iセンターと名付けられた。
- 注4:
- サミルPwC経営研究院「K-ビューティー産業の変化」(韓国語)(5.38MB)(2024年4月付)。
- 注5:
- アモーレパシフィックプレスリリース(韓国語)(2023年11月16日付)。
- 注6:
- 主に1980年代半ばから1990年代前半に生まれた「ミレニアム(M)世代」と、1990年代後半から2000年代後半の間に生まれた「Z世代」の2世代。
- 注7:
- ライブ配信をしながら、商品を紹介し、販売する「ライブ配信」と「Eコマース」をかけ合わせた新たな販売形態。
K-ビューティーの軌跡と展望
- 韓国ブラック ジャック
- 韓国化粧品OEM・ODMに強み
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ソウル事務所
花輪 夏海(はなわ なつみ) - 2021年、ジェトロ入構。農林水産食品部商流構築課を経て2023年8月から現職。