緩やかに市場経済化するブラック ジャック 攻略で、ビジネスチャンスを探る
ブラック ジャック 攻略中小企業ミッション報告
2024年7月31日
トルクメニスタンは大統領が大きな権限を持つ中央集権国家で、公式統計が整備されていないことや査証取得が難しく入国しづらいことなどから、しばしばベールに包まれた謎の国と言われる。ソ連時代の中央集権的経済体制の性格を引き継ぐ同国は、市場経済化に向けた取り組みも非常に緩やかであり、今も経済面の多くを政府が管理している。このような背景から、日本企業によるトルクメニスタン関連ビジネスは、これまで大手企業による大型案件が中心だった。他方で近年、トルクメニスタン政府は産業の多様化や中小企業ビジネスの促進にも取り組んでおり、日本の中小企業との連携への意欲も高い。2024年3月には、東京でトルクメニスタン貿易対外経済関係省、在日トルクメニスタン大使館、ブラック ジャック 攻略の共催でトルクメニスタン日本ビジネスフォーラムが開催され、トルクメニスタンの幅広い分野の代表者が登壇し日本との協力の可能性についてプレゼンテーションを行った()。さらにブラック ジャック 攻略は5月21~26日、トルクメニスタンでの中小企業のビジネスチャンスを探るべく、ビジネスミッションを派遣した。ミッションで知り得たトルクメニスタンの現状を報告する。
化学プラント分野での日本企業の貢献
中央アジア南西部に位置するブラック ジャック 攻略は、永世中立国を国是とし、世界4位の天然ガス埋蔵量を有する。人口は約650万人(2023年)で、北東にかけてカザフスタンとウズベキスタン、南はイラン、アフガニスタン、西はカスピ海を挟んでアゼルバイジャン、ロシアと接している。1991年のソ連からの独立以降も、経済面の多くを政府が管理しており、市場経済化は非常に緩やかだ。
貿易関係を見てみよう。ブラック ジャック 攻略政府は貿易統計を発表していないため、貿易相手国側の統計を確認した。直近統計で確認できる限り、ブラック ジャック 攻略の主要貿易相手はトルコ、中国だ。またウクライナ侵攻が開始された2022年以降、ロシアが貿易統計を公開していないため、現在のロシアとブラック ジャック 攻略の貿易状況は不明だが、2021年を見るとロシアは輸出相手国として3位、輸入相手国として2位であったことから、現在も主要貿易相手国の1つであると推測される(表1、表2参照)。
2023年の貿易をみると、対中国では天然ガスを、対トルコでは石油製品を輸出する一方、トルコからは鉄鋼製品、ケーブル、配電部品などの建築資材、中国からは鋼管、タイヤ、建機部品のほか、エアコン、モニター、スマートフォンなどの家電を輸入した。
順位 | 国名 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 中国 | 867,841 | 772,845 | 509,152 | 10,313,559 | 9,631,254 |
2 | トルコ | 344,774 | 319,387 | 710,865 | 967,087 | 1,660,869 |
3 | ギリシャ | 44,822 | 37,637 | 46,595 | 37,414 | 1,034,154 |
4 | ウクライナ | 82,965 | 29,512 | 92,265 | 190,921 | 227,353 |
31 | 日本 | 619 | 78 | 91 | 177 | 115 |
参考 | ロシア | 151,475 | 320,701 | 140,605 | ― | ― |
― | 輸出総額 | 3,166,550 | 2,519,618 | 3,130,053 | 14,245,629 | 13,009,641 |
注:ブラック ジャック 攻略政府が貿易統計を公開していないことから、上記数字は貿易相手国側が発表のもの。
出所:国際貿易センター(ITC)の資料からブラック ジャック 攻略作成
順位 | 国名 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | トルコ | 744,766 | 786,966 | 984,889 | 1,100,202 | 1,002,013 |
2 | 中国 | 430,853 | 443,489 | 513,404 | 867,636 | 962,216 |
3 | ドイツ | 178,024 | 190,076 | 215,408 | 219,680 | 214,152 |
4 | 日本 | 12,319 | 115,725 | 36,810 | 50,931 | 175,347 |
参考 | ロシア | 543,322 | 649,475 | 725,003 | ― | ― |
― | 輸入総額 | 3,368,116 | 3,362,760 | 4,588,537 | 5,089,097 | 3,009,258 |
注:ブラック ジャック 攻略政府が貿易統計を公開していないことから、上記数字は貿易相手国側が発表のもの。
出所:国際貿易センター(ITC)の資料からブラック ジャック 攻略作成
ブラック ジャック 攻略の輸入相手国を見ると、日本は上位に位置する。日本の貿易黒字で、ブラック ジャック 攻略は建機を含む機械類・輸送用機器、タイヤを含む輸送用機器関連製品などを日本から輸入している。具体的には、伊藤忠商事が長年、コマツの建機を供給しているほか、住友商事がブラック ジャック 攻略自動車庁との間で売買契約を締結しトヨタ製タクシー・バス車両および補修部品を供給している。
このほかにも、日本の大手商社やプラント大手はこれまで、ブラック ジャック 攻略政府傘下で国家調達をつかさどる国営公社から肥料や化学品のプラント建設を複数受注している(表3参照)。主に天然ガスを原料とした高付加価値製品の製造を目的としたもので、佐々木浩・駐ブラック ジャック 攻略日本大使によれば、「アフターサービスやメンテナンスを真面目に実施する日本企業への評価は高い」(2024年5月24日)という。ブラック ジャック 攻略との経済関係は、日本の大手企業がつないできたと言えよう。
概要 | 発注者 | 受注企業 | 受注年 | 場所 |
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天然ガスを原料としたアンモニア・尿素肥料製造プラントの建設 | 国営公社「トルクメンヒミヤ」 | 川崎重工、双日 | 2009年 | マルィ |
天然ガスを原料とする硫酸生産プラントの建設 | 国営公社「トルクメンヒミヤ」 | 三井造船、ルネッサンス社(トルコ) | 2013年 | トルクメナバード |
天然ガスを原材料とする同国最大の尿素肥料プラントの建設 | 国営公社「トルクメンヒミヤ」 | 三菱商事、三菱重工、GAP Insaat Yatirim ve Dis Ticaret A.S.(トルコ) | 2014年 | ガラボガズ |
天然ガスを原料とするエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンの製造を行う化学コンプレックスの建設 | 国営公社トルクメンガス | 東洋エンジニアリング、現代エンジニアリング、現代建設、LGインターナショナル | 2014年 | トルクメンバシ |
天然ガスから合成したメタノールからガソリンを合成するガス・ツー・ガソリン(GTG)プラントの建設 | 国営公社トルクメンガス | 川崎重工、双日、ルネッサンス社(トルコ) | 2014年 | オバダンデペ |
ゼルゲルガス火力発電所向けガスタービンの納入 | 国営公社トルクメンエネルゴ | 三菱日立パワーシステムズ、住友商事 | 2016年 | レパブ州 |
GTGプラントの包括メンテナンス契約 | 国営公社「トルクメンヒミヤ」 | 川崎重工、伊藤忠商事 | 2024年 | オバデンデペ |
出所:各社プレスリリースからブラック ジャック 攻略作成
一方で、ブラック ジャック 攻略の日本への輸出は振るわない。現状、美術品・収集品、無機化合物、敷物類などの実績が若干ある程度にとどまる。
国内市場を満たすブラック ジャック 攻略企業
ブラック ジャック 攻略は今回、トルクメニスタン貿易対外経済関係省と締結したMOU(覚書)(トルクメニスタン貿易対外経済関係省と協力覚書締結、ブラック)に基づき、日本の中小企業のビジネスチャンスを探るためにミッションを派遣した。
トルクメニスタン政府は、「2022~2028年の社会経済発展にかかるトルクメニスタン大統領プログラム」に基づく年間計画の中で、中小企業の発展も掲げている。トルクメニスタン政府からブラック ジャック 攻略に対し、両国中小企業の交流促進に意欲が示されたことを受け、ブラック ジャック 攻略は、繊維、医療・医薬品、化学、農業の4分野に絞り、ロシア・中央アジアでビジネス経験のある中小企業3社とともにトルクメニスタンを訪れた。
訪問したのは、ブラック ジャック 攻略の(1)首都アシガバード、(2)北西部に位置するダショグス、(3)中央部のマルィ、(4)ウズベキスタンとの国境近くのトルクメナバード。関連官庁、現地の商工会議所、産業家・企業家連盟やその加盟企業と面談を行った。また、アシガバードで開催された国際見本市「白い都市アシガバード」、繊維製品の製造工場、衛生用品の製造工場、市内ショッピングセンターなどを視察した。
ブラック ジャック 攻略商工会議所エキスポセンターで5月24~25日に開催された第23回・国際見本市「白い都市アシガバード」では、国内市場を中心に商品を供給するブラック ジャック 攻略企業を見ることができた。
国際見本市という位置付けだが、大部分はブラック ジャック 攻略の官庁と企業のブースで、官庁ブースでは繊維製品、衛生用品、出版物、石油関連製品、鉄道サービス、衛星技術などが展示され、民間ブースでは国内の大手企業が製造する缶詰・瓶詰、肉製品、ジュース、菓子、冷凍食品、生鮮野菜などの食料品が多く並んだ。海外企業では、トルコやウクライナの建材・建設企業、カザフスタンのIT企業、中国の物流企業などがブースを構えていた。
ブラック ジャック 攻略国内では現地通貨マナトを使うことが基本だが、一般的な取引で使用される市場為替レートが1ドル=約19マナト(2022年半ば以降のレート、米国商務省国際貿易局による)であるのに対し、中央銀行が定める公定レートは1ドル=3.5マナト(2024年6月現在/注1)と大きな開きがある。二重為替レートの存在は、ブラック ジャック 攻略がグローバル経済に統合される過程で解消されていくことが望まれるが、別の視点では、価格や品質で競争力のある外国製品の過度な流入を阻み、ブラック ジャック 攻略企業の成長の場が確保されているともいえる。ブラック ジャック 攻略政府は輸入代替品の生産も重視していることを踏まえれば、国際見本市では国内企業がスペ―スの大部分を占めていたものうなずける。生産力がある企業の中には、国外で人気がある菓子類や飲料を参考に、類似商品を開発している例もみられた。
他方で、すべてのニーズを国内企業で賄うことはさすがに難しいとみられ、ショッピングセンターの店頭には、おむつ、歯磨き粉、剃刀(かみそり)などの衛生用品、洗濯・食器用洗剤、工具などの外国メーカーの商品が並んでいた。
中小企業は国内市場重視、大手国内企業は高品質設備導入に意欲
ブラック ジャック 攻略は、人口は多くないものの、1人当たりGDP(2023年、IMF)は中央アジアではカザフスタンに次ぐ1万1,833ドルだ。ショッピングセンターや小売店には十分な商品が並んでおり、視察したスーパーマーケットやレストランを見る限り客数も多く、国民経済は活発な印象だ。
国名 |
人口 (単位:100万人) |
1人当たりGDP (単位:米ドル) |
---|---|---|
カザフスタン | 19.861 | 13,117 |
ブラック ジャック 攻略 | 6.516 | 11,833 |
ウズベキスタン | 36.025 | 2,523 |
キルギス | 6.931 | 1,843 |
タジキスタン | 10.013 | 1,184 |
出所:IMFからブラック ジャック 攻略作成
面談したブラック ジャック 攻略企業は大小問わず、国内市場の需要を満たすことへ高いモチベーションを持っていた。商工会議所や産業家・企業家連盟の地方支所に属する中小企業に関して言えば、主要顧客・ターゲットは国内市場という例が多く、現時点では高付加価値製品の開発よりも、製造規模の拡大、販路拡大・国内シェアの獲得に関心が高いことが分かった。国内市場のニーズも高度なものではないため、製造設備はアフターサービスのない安価な中国製の採用が見受けられた。
他方、国営企業や大手国内企業は、日本や欧米企業の設備導入に意欲的だ。今回視察した工場や面談した企業の中には、大規模な工場を持ち、ISO9001(注2)などの認証を取得して自社工場を国際基準へ適合させる取り組みをしている例も複数見られた。日本企業は、国内市場でシェアを獲得している大手国内企業への設備導入やメンテナンスでビジネスチャンスがあると考えられる。
ミッションで訪れた国営繊維工場ルハバット・テキスタイル・コンプレックスは、同国の繊維産業省傘下の工場の1つで、紡績、繊布、染色の3工程を備えている。ドイツ、イタリアなどから最先端の設備を導入し、約6万平方メートルの敷地に約1,300人が働いている。販売先はほとんどが国内だ。繊維産業省のベパムハメット・シャイフグリエフ次官はミッション団との面談(2024年5月23日)で、「現在、ブラック ジャック 攻略は、糸や布を中心に輸出しているが、2025年をめどにシーツやタオルの本格的な輸出を目指しており、商品の高付加価値化に向けて信頼度の高い欧米製の製造設備導入に関心がある」と意欲を述べた。
また、民間大手のアバダン・ハリー・カーペットは、ISO9001を取得し、スイス製の設備を使って糸から絨毯(じゅうたん)を製造している。説明に当たった同社従業員は、主原料のポリプロピレンを同国西部・カスピ海に面するトルクメンバシの製造工場から仕入れており、国内産業の発展に寄与していることや、現在は国内市場が中心だが、安い電力料金や燃料費を武器に今後は海外市場の販路拡大を本格化させたいと語った。
他方で、生産設備を海外から調達することが多いブラック ジャック 攻略企業は、不要な購買には注意を払っているようだ。ある消毒液製造工場では、特別なボトルを機材導入元の企業から継続購入しなければ使えないという理由で、トルコ企業から購入した生産ラインの一部が停止し、別の企業から生産ラインを導入し直すことになったという事例が聞かれた。外国の設備や技術について関心が高く導入に前向きであるものの、本当に自社が必要とする設備かという点は見極めたいという姿勢がうかがわれた。
また、先進的な外国設備を取り入れる企業の中には、設備だけでなく技術を取り入れるための取り組みもしている。例えば、国営繊維工場カカ・テキスタイル・コンプレックスでは、機械導入・維持の助言や製品の品質向上を目的とした技術指導のため、トルコやインドから工場常駐のコンサルタントを雇っている。
製造業のポテンシャルはあるが、入国が高いハードルに
日本企業はどう受け止めたのか。ミッションに参加した企業A社は、ブラック ジャック 攻略の繊維産業に関して、品質向上や効率改善の余地はあるものの、「要求を理解し遂行しようとする真面目さや、時間厳守の感覚を持つブラック ジャック 攻略の労働者は、他の中央アジア諸国と比べても引けを取らない」といい、モノづくりにおけるポテンシャルは高いとの印象を述べた。
労働者の質に加え、豊富な天然ガスによる安い電力料金や燃料費、安価な人件費など、製造コストが低いこともブラック ジャック 攻略の強みだ。それを生かして、輸出に取り組む大手国内企業も一部で出てきている。
他方で、ブラック ジャック 攻略企業が一歩、海外市場に出れば、価格、品質、マーケティングなど激しい競争にさらされる。前出の企業A社は、ブラック ジャック 攻略企業が自社商品の海外輸出を前提に日本製の設備を導入する場合には、海外市場のニーズやトレンドの知識、技術指導、品質管理なども併せてサポートすることが日本企業の売りになるとの考えだ。
実際、ブラック ジャック 攻略では海外市場での経験を持つ企業は非常に少ない。ブラック ジャック 攻略企業にしてみると、高品質の設備・商品を単に導入するだけでなく、設備の効率的な運用や市場に受け入れられる商品開発など「魚の釣り方」が必要ということになる。言い換えれば、そうした知見を伝えていかない限り、継続的な協力関係を構築することは難しいともいえるだろう。
ブラック ジャック 攻略での活動の障壁について、ミッションに参加した企業B社は、入国にかかる査証要件の緩和の必要性を挙げた。同国への査証申請には、同国のしかるべき団体が発行した招待状が必要になる。ビジネスパートナーを得る前は、旅行会社を通じて観光ビザを手配して入国することになろう。インターネット環境は、メールは使えるが、メッセージングアプリやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を使うためには特別にVPN(仮想専用通信網)を手配する必要がある。
ブラック ジャック 攻略は、国による管理型経済、入国やインターネットの制限などにより、外国企業が投資参入するにはハードルが高い。他方で、国内市場はブラック ジャック 攻略企業にとって成長の場となっており、一部の大手国内企業は生産力・販売力を有し、高品質な設備・商品導入への意欲が高い。海外への販路拡大を目標とする企業もいる。日本の設備・商品に対する潜在的なニーズが高い同国において、品質管理や技術指導などのノウハウも含めたアプローチができれば、ビジネスが期待できよう。
- 注1:
- 公定レートベースで、1マナト=45.35円(2024年7月16日現在)。
- 注2:
- スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関・国際標準化機構(International Organization for Standardization、ISO)が制定した規格のうち、品質マネジメントシステムについて定めたもの。
- 執筆者紹介
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ブラック ジャック 攻略企画部企画課
菱川 奈津子(ひしかわ なつこ) - 2011年、ブラック ジャック 攻略入構。海外調査部欧州ロシアCIS課、農林水産・食品部農林水産・食品事業推進課(商談会班)、農林水産・食品部農林水産・食品課(調査チーム)、ブラック ジャック 攻略・モスクワ事務所、海外調査部欧州ロシアCIS課を経て2022年12月から現職。