ブラック ジャック 勝ち 方
競争力強化の要請と財源確保が急務

2024年12月19日

米国のドナルド・トランプ次期大統領(共和党)は選挙期間中、さまざまな関税ブラック ジャック 勝ち 方を打ち出した。例えば、(1)中国への60%追加関税、(2)メキシコからの自動車輸入に対する関税率を200%以上に引き上げ、(3)全世界からの輸入に一律10~20%、関税賦課(米国の譲許税率は現時点で、平均3.4%)、(4)「トランプ互恵通商法」〔外国(注1)が課す関税率と同率を米国輸入時に適用〕、などだトランプ次期政権下で取られ得るブラック クイーン)。こうしたブラック ジャック 勝ち 方案は、通商・外交上の交渉材料に過ぎないという見方もある。

だだし、選挙期間中のトランプ氏の発言からは、関税をより多面的な方向性から論じている様子もうかがえる。本稿では、そうした考えを生む内政的側面に焦点を当てて論じる。

関税は大統領権限で決定し得るブラック ジャック 勝ち 方遂行の安定財源

トランプ次期政権が関税ブラック ジャック 勝ち 方を重視する理由の1つは、財政ブラック ジャック 勝ち 方を実施する上で重要な財源になるためだろう。

選挙期間中に言及したブラック ジャック 勝ち 方を実施するには、今後10年間で約7兆~16兆ドルの追加的な財政負担が必要になり、その手当てをしなければならない。共和党ブラック ジャック 勝ち 方綱領等では、歳入増加策にも言及しているが、その中で安定財源として最大のシェアを占めるのが、関税引き上げだ()。特に重要性が高いと考えられるブラック ジャック 勝ち 方(例えば、トランプ減税の延長)を担保するためには、可能な限り安定した財源を模索していく必要がある。その観点から、関税収入は、トランプ氏にとって魅力的な財源として映るだろう。関税は、議会での債務上限交渉によって決まる国債発行とは異なり、大統領権限によって制御可能な面があるからだ。

国内製造業の競争力強化に複数のブラック ジャック 勝ち 方手段

そのほかの理由として、「製造業の国内回帰と競争力強化につながる」ための重要なブラック ジャック 勝ち 方手段と位置付けていることだ。

今次大統領選の激戦7州で、ウィスコンシン州(WI)、ミシガン州(MI)、ペンシルベニア州(PA)は、ラストベルトと呼ばれる地域に属する。そのいずれも、(1)全米平均と比較して雇用者数において製造業の占める割合が高く(図1参照)、(2)製造業の労働生産性の伸びが全米平均よりも低い(図2参照)という特徴がある。2000年以降の労働生産性の推移をみると、ラストベルトに属する3州の主要産業の労働生産性の伸びは全米平均を下回る水準であることが分かる。

図1:雇用者数に占める製造業の構成比
ウィスコンシン州15.9%、ミシガン州13.5%。ペンシルベニア州9.2%と全米平均の8.2%を上回る。カリフォルニア州は7.3%、ニューヨーク州は4.3%と全米平均を下回っている。

出所:米労働省

図2:製造業の州別生産性推移
2000年から2023年までの推移。全米平均に比べ、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ミシガン州は下回る状況が続いている。シリコンバレーがあるカリフォルニア州は2016年から全米平均を上回る生産性で推移している。

注:2000年の実績を100として指数換算。
出所:米労働省、米商務省

生産性の伸び悩みに加え、2010年以降も主要貿易相手国との間ではドル高基調が続き、こうした為替要因も米国の製造業にとって向かい風となったもようだ(図3参照)。

図3:主要貿易相手国との為替レートの推移(2010~2023年)
 円は2016年から2021年まで120から130のドル高で推移したが、2022年150、2023年160と急騰した。ユーロ、カナダドルは円とほぼ同じ110から130のレベルで推移。メキシコペソは2015年から急騰し、2016年以降150付近で推移、2020年のみ170と一時的な高値となった。韓国ウォンはドル安の90から100付近で推移を続けたが、2022、2023年は110のドル高となっている。

注:2010年の値を100として指数換算。
出所:米セントルイス連銀

さまざまな要因が重なり、ラストベルトで製造業の競争力が低下。雇用などにも影響を及ぼしてきた。2024年大統領選でトランプ氏が訴えたメッセージは、こうした苦境下にある製造業を保護する目的に立ったものと理解できる。2026年に予定されている中間選挙を考慮すると、ラストベルトにおける労働者の支持を維持し続けることは重要な意味を持っている。この観点からは、製造業の競争力を強化し、ラストベルトの労働者が雇用や賃金に関して早期に恩恵を感じられるようにしていくことは優先度の高いブラック ジャック 勝ち 方となる。

共和党政策綱領でも、「不公平な貿易協定とグローバリズムへの妄信的な信仰によって、雇用と生活をブラック ジャック 勝ち 方に売り渡してきた」と過去の政権を批判。「不公正な貿易から米国民を守り、重要なサプライチェーンを国内に回帰させる」とうたっているがこれをどのように実現していくのだろうか。そのための方法について目下、必ずしも体系立った説明があるわけではないが、(1)国内製造業が外国製品に対等に立ち向かえるよう関税を引き上げる、(2)企業向けに減税する、(3)エネルギーコストを削減しコスト増につながりかねない規制を緩和する、(4)ドル安志向などを通じ全体として効果的な産業政策を模索していく、ことなどと予想できる。すなわち、(1)は産業政策全体の中で他の要素に左右され得る変数として捉えるべきだろう。

企業減税や規制緩和で製造業振興を

(2)の企業向け減税に関しては、国内の製造企業を対象に法人税減税の引き下げや、設備投資の特別償却などを計画している()。2025年末ごろに、その全体像が見えてくることになるだろう。第1期トランプ政権下では2017年12月に「トランプ減税」をはじめとする企業向け減税が成立して以降、ソフトウエア投資や研究開発投資が増加した。第1期の実績を踏まえると、このような企業向け減税は、特に知的財産分野に対する効果が大きいと考えられることから、次期政権において企業向け減税が実施できた場合には、人工知能(AI)投資をさらに活発化することになりそうだ。AI投資は、生産性の向上につながるだろう(図4参照)。

図4:第1期トランプ政権下での設備投資の推移
2018年から2019年まで4半期毎に設備投資の伸びを項目別に示したもの。項目には知的財産3項目、機器3項目、構築物2項目がプロットされている。2018年第1四半期はその他構造物が5.5と突出して伸張、2019年第2,3四半期でも3付近と大きく伸びた。知的財産の研究開発とソフトウエアは2年間を通して1から2の安定した成長を続けた。

出所:米商務省

(3)の規制緩和は、まだ全体像が明らかではないが、エネルギー分野での規制緩和に関しては、見直される可能性が高そうだ。先立つバイデン政権では、火力発電の炭素排出規則や石油ガス部門を対象にするメタン料金の賦課など、米環境保護庁(EPA)が所管して環境規制が進んでいた。そうした一連の措置は見直し対象になるだろう。規制見直しに並行して、次のような措置も実施されることになる可能性が高い。

  • 石油・ガスに関する税額控除など、インセンティブを導入する
  • 積極的な鉱区リースなどを活用し、国内エネルギーを増産する

ただし世界的な需要低下に伴って目下、原油価格が低下基調にある。その中で、業界がどの程度ブラック ジャック 勝ち 方に追随するか、微妙なところもある。この点を見越し、トランプ次期政権では原油の戦略備蓄在庫拡充などの需要刺激策も計画中だ。ガスに関しては、データセンターに対する電力需要を賄うためのガス火力発電への需要増や液化天然ガス(LNG)の輸出再開など一定の需要が見込まれる可能性はある。もっとも、世界的に脱炭素化が進む中で、グローバル企業が実際に化石燃料への回帰をどの程度進めるのかは未知数の面もあり、エネルギー関連企業が投資判断に踏み切るに足る安定的需要を生み出せるのかが注目点になる。

インフレ削減法(IRA)はどうなる

産業ブラック ジャック 勝ち 方の観点からは、もう1つ注目材料がある。それが、バイデン政権下で導入された各種ブラック ジャック 勝ち 方の行方だ。バイデン政権下では、産業ブラック ジャック 勝ち 方を積極的に実施してきた。a)半導体など先端産業を支援する「CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)」、b)電力網や各種インフラを整備する「インフラ投資雇用法(IIJA)」、c)再生可能エネルギー(再エネ)や電気自動車(EV)産業などを支援する「IRA」などだ。このうちa)やb)は超党派の合意で成立したことから、多くの施策を維持していくとみて良い。

一方、気候変動対策の色彩が強いc)は、民主党の単独採決で成立したこともあり、見直しの可能性が高いと言われている。IRAの全廃という可能性は高くないと考えられているものの、未執行分の補助金を撤廃したり、税額控除の仕組みを一部改変したりする可能性は、濃厚だろう。

税額控除見直し

具体的に実質的な変更が見込まれるのは、電気自動車(EV)購入や、クリーンエネルギー生産(注2)、太陽光パネル・風力発電用ブレードの生産・販売(注3)などに関する税額控除だ。特に再エネに関する税額控除の見直しは影響が大きいと考えられる。米国での再エネ関連プロジェクトには北東部における洋上風力発電プロジェクトなど、現状、税額控除込みで採算性を算定している例が多いためだ。このため、実際に見直しを実行した場合、採算性が大きく悪化し、プロジェクトの存続自体が困難になりかねない。

片や、世界的には、太陽光や風力など、再エネを活用して発電する場合、1キロワット時(kWh)当たりの生産コストは4セント程度と石炭(約11セント)や天然ガス(17.5セント)よりも、低い水準にある(注4)。仮に税額控除を見直した影響などで再エネの導入が遅れ、かつ化石燃料への投資が想定したほど進まない場合、電力価格で米国が他国に劣後してしまう可能性が否定できない。これでは、トランプ氏の意図と真逆になってしまう。

この点について、トランプ氏がどのような判断をするのかは予断を許さない。

補助金撤廃

IRAに基づく補助金の中で産業競争力強化と関係が深いのが、産業実証プログラムなど産業脱炭素化に対する企業向け支援だ。これを活用して、鉄鋼・アルミニウムやセメントなどの産業では、産業脱炭素化を表看板としつつ、生産性の高い設備を導入しているが(米エネルギー省、産業脱炭素化へ化学関連、ブラック)、こうした支援が廃止された場合、企業がなおも設備導入する意欲を維持し続けるのかは分からない。

ドル安誘導なるか

(4)の為替に関して、トランプ氏は選挙期間中、米国経済にとって「ドル安が望ましい」という姿勢を度々示してきた。

具体的にこれをどのように実現するのかは、現時点で明確でない。ただし、選挙期間中、「連邦準備制度理事会(FRB)の金融ブラック ジャック 勝ち 方に対し、大統領の発言権を強化したい」旨の意向を度々表明しており、FRBに対して利下げ圧力を強めていくことは考えられるかもしれない

ジェローム・パウエルFRB議長の任期は2026年5月まで、アドリアナ・クーグラー理事は2026年1月まで、になっている。後任人事は次期政権が任命することになるため、間接的に影響を及ぼすことは十分ありそうだ。もっとも、実際に金融ブラック ジャック 勝ち 方を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)は、理事7人だけではなく、12地区ある連銀総裁のうち、持ち回りで5人が参加する仕組みだ。理事の任命人事だけで金融ブラック ジャック 勝ち 方を決定的に左右するのは困難だろう。

そのほかには、主要な対米貿易収支黒字国を為替操作監視対象として締め付けを強める方法も考えられるかもしれない。第1期トランプ政権下では、2019年8月に中国(米財務省、ブラック ジャック オンライン)を、2020年12月にスイスとベトナム()を為替操作国に指定した実績がある。今後問題視しそうな国としては、やはり中国を指摘できる。a)直近の為替ブラック ジャック 勝ち 方報告書(米財務省、ブラック ジャック ディーラー)で大幅な対米貿易黒字(財・サービス貿易黒字額が年間150億ドル以上)の条件を満たしている上、b)経常黒字や為替介入などに関し、データに透明性がないという指摘もあるためだ。次期政権下であらためて検証した上で、その是正を求めていく可能性があるだろう。

こうした方法を用いながら、ドル高是正を進めていくことになると考えられる。しかし、トランプ氏のブラック ジャック 勝ち 方の中には、関税引き上げ、厳しい移民対策、財政拡張、国内製造業優遇策、など、むしろドル高を誘発しそうなものも多く含まれている(注5)。結局のところ、思惑どおりには、ドル安に動かない可能性も高い。

ブラック ジャック 勝ち 方の空回りが関税引き上げを呼ぶ可能性も

このように、トランプ次期政権のブラック ジャック 勝ち 方が、製造業の競争力強化にプラス・マイナスどちらの方向で働くのか、予断を許さない状況だ。仮に意図したとおりに製造業の競争力が改善しない場合、そのツケが関税引き上げに回される可能性もあり得る。


注1:
正確には、「米国へ輸出する国」と表現。
注2:
クリーンエネルギーを生産した場合、現行制度下では、内国歳入法(IRC)45Yに基づいて税額控除を受けることができる。
注3:
太陽光パネルや風力発電用ブレードを生産・販売する場合の税額控除は、IRC45Xに規定がある。
注4:
Lazard社「COST OF ENERGY」に基づく。
注5:
関税引き上げ、厳しい移民対策、財政拡張などは、インフレ率の高止まりを呼ぶ可能性がある。これらは、(1)利下げスピードが鈍化する、(2)ターミナルレート(FRBが金融緩和するに当たって、最終到達点として想定する金利水準)が上昇する、などの結果をもたらしそうだ。
また、関税戦争や国内製造業優遇策などの結果として、対米投資が拡大する可能性がある。その場合、ドル需要の高まりにつながる。
ブラック ジャック 勝ち 方
執筆者紹介
ジェトロ ニューヨーク事務所 調査担当ディレクター
加藤 翔一(かとう しょういち)
2009年、内閣府入府。骨太の方針の策定や世界経済の分析、子育て支援に従事したほか、内閣官房や農林水産省、消費者庁などに出向し、地方活性化に向けた施策等を担当。2023年7月から現職。