ブラック ジャック ルール ディーラー

2023年8月31日

米国の連邦最高裁判所は6月29日、大学が多様化を図るため、マイノリティの志願者を優先的に入学させるシステム「アファーマティブ・アクション(積極的格差是正処置)」を憲法違反と判断した(詳細は、連邦最高裁判所資料PDFブラック ジャック ルール ディーラーイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.67MB)参照)。連邦最高裁は、合衆国憲法修正第14条が「各州の法律は黒人に対しても白人に対しても平等でなければならず、有色人種であろうと白人であろうと全ての人が法律上平等でなければならない」ことを保障しているとした。本稿では、米国のアファーマティブ・アクションの歴史、入学選考時のアファーマティブ・アクションが違憲と判断されるまでの経緯、職場における多様性維持の取り組みの現状、今回の最高裁の判断が企業に与える影響を整理する。

アファーマティブ・アクションの成立

米国では今日、「アファーマティブ・アクション」はほとんどの場合、教育機関と関連付けて語られている。この言葉が初めて使用されたのは1961年のことだ。ジョン・F・ケネディ大統領(当時)が、連邦政府の請負業者向けに出した大統領令で、「応募者が人種、肌の色、宗教、性別、国籍に関係なく平等に扱われるように、アファーマティブ・アクションをとる」よう指示した。また、1964年に成立した「公民権法」は、連邦政府との契約の有無にかかわらず、従業員15人以上の企業による雇用差別を禁止した。同法に基づき、雇用差別を防止する雇用機会均等委員会(EEOC)も設立された。EEOCは1966年に、従業員100人以上の雇用主または50人以上の連邦政府請負業者に対し、雇用している人種的・民族的マイノリティと女性の数を記した報告書を毎年提出するよう義務付けた。1995年には、連邦議会が超党派で創設した「ガラスの天井委員会」が、女性やマイノリティが意思決定を担う地位に就くことを阻む障壁に関する報告書を発表した。同委員会はこの中で、企業がアファーマティブ・アクションを活用して、全ての適格者を能力と実績に基づいて評価するよう提言した。連邦政府が1960~1970年代に、企業に対しアファーマティブ・アクションを推奨したことを受け、大学や大学院の入学選考時にアファーマティブ・アクションが採用されるようになった。

他方、アファーマティブ・アクションに反対する動きもある。カリフォルニア大学医学部を不合格となった白人男性が1978年に、アファーマティブ・アクションを採用する同校を提訴した。同様の訴訟は、1992年、2003年、2013年、2016年に他州でも起きた(注1)。2014年には、人権と市民権の擁護団体「公平な入学選考を求める学生たち(SFFA)」がハーバード大学を相手に、アファーマティブ・アクションが白人とアジア系米国人への差別につながっているとして提訴した(注2)。この団体は同年、同様の理由でノースカロライナ大学も提訴した。この2つの訴訟は、連邦最高裁が2023年6月にアファーマティブ・アクションを憲法違反と判断した裁判となる(注3)。このように、アファーマティブ・アクションは現在、大学の入学選考に関して逆風にさらされている。次に、企業における対応の経緯や、最高裁の違憲判決の影響などに関して紹介する。

企業におけるDEAI導入の急増とその後の減少

前述のとおり、連邦政府の請負業者は、アファーマティブ・アクションを義務付けられている。一般企業や団体は推奨されているのみで、義務ではない。ただし、企業や団体が全ての希望者に入社機会を与え、従業員の多様化を図る際、一般的には、Diversity (多様性)、 Equity (公平性)、Accessibility(障がい者などに対するアクセス可能性)、Inclusion (包摂性)が考慮される。これらはそれぞれの頭文字をとって、DEAI(もしくはDEIA、IDEAなど)と呼ばれる。Accessibilityを除き、DEIまたはDE&Iを考慮する企業・団体もある(注4)。

このような取り組みは1960年代から存在するが、黒人のジョージ・フロイド氏が警官から暴行を受けて死亡し、ブラック・ライブズ・マター運動が発生した2020年5月以降、より積極的に採用されるようになった。人材マネジメント協会(SHRM)のロイ・マウラー氏は2020年8月に公表した同協会のオンライン記事の中で、「DEAI関連の求人数が2020年6月8日以降、同年8月までに55%増加した」と指摘している。また、人材大手のインディードで扱われたDEAI関連の求人数も、2020年9月に前年同月比56.3%増となった(注5)。

ビジネス向け交流サイトのリンクトインにおける最高多様化責任者(CDO)の求人数も、2019年から2022年にかけて約2.7倍と著しく伸びている。他方、2021年から2022年までの1年間だけで見ると4.5%減となっており、経営幹部レベル(C-Suite)の肩書で唯一の前年比マイナスを記録した。ネットフリックス、ディズニー、ワーナー・ブラザースなどの大企業では、知名度の高いDEAI幹部が退職したり、多様性に関わる業務従事者が解雇されたり、人種差別撤廃運動への関与が縮小されたりする動きも出てきている(注6)。米国人材管理会社ペイコーでDE&I部門のトップを務めるエイミー・ハル氏は、こうした現状について、「変化に影響を与えるという企業理念が、真摯(しんし)な取り組みによって守られていないことを示している」と述べている(注7)。また、他の要因として、DEAI関連の肩書を持つ社員が最近の大規模解雇の影響を受けており、新型コロナ禍以降の売り上げ鈍化が企業によるDEAI推進の取り組みに打撃を与えているとの見方もある(注8)。

アファーマティブ・アクションの違憲判断が企業に及ぼす影響

連邦最高裁が大学入学選考時のアファーマティブ・アクションを憲法違反と判断して以降、企業のCDOの中には、自らの職務がより一層のふるいにかけられており、政治的な標的にもなっていると述べる者もいるという(注9)。CDOの需要が2022年以降減少していることに加え、連邦最高裁の違憲判断により、DEAIを推進する動きが減退する可能性がある。

アファーマティブ・アクションの廃止は、職場の人種的多様性に影響を及ぼすとの調査がある。2013年10月のハーバード大学調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、1996年から2008年にかけて、大学の入学選考と州政府の雇用時にアファーマティブ・アクションを禁止していた4州(注10)では、禁止していない州と比べ公務員の多様性が著しく低下した。アジア系女性(37%減)(注11)、黒人女性(4%減)、ヒスパニック男性(7%減)で雇用の減少が目立つ一方、白人男性の雇用は4.7%増だった。ジョー・バイデン大統領は2023年6月29日の最高裁の判断について、「既に多様性の価値に気付いている企業は、この判断を理由に多様化に背を向けてはならない」と述べている(注12)。

また、多様性が生産性の向上をもたらすとの調査結果も出ている。例えば、米国経営学会(AOM)が2021年10月に公表した論文は、「企業の上層部と一般社員の人種的多様性が1%増加すると、企業の生産性は従業員1人当たり年間729~1,590ドル増加する」と指摘している。

米国企業はこうした前提を理解しつつ、ブラック ジャック ルール ディーラー違憲判断を受けて、今後の方針を検討しているとみられる。今後、人材採用の分野で、どのような流れが生み出されるのか注目される。


注1:
1992年にテキサス大学ロースクール、2003年にミシガン大学、2013年と2016年にテキサス大学に対して、同様の訴訟があった。
注2:
本訴訟が起きるまで、白人がアファーマティブ・アクションに対して提訴を行ってきた。本訴訟では、保守派の法律家で白人のエドワード・ブラム氏が、本来マイノリティでアファーマティブ・アクションの対象となるはずのアジア系米国人を味方につけることで、勝訴しやすくしたとの見方がある。原告は、アファーマティブ・アクションがアジア系米国人の入学率を低下させたと主張した。
注3:
バイデン大統領は判決後、最高裁の判断に「強く反対する」とした上で、卒業生や寄贈者の子供など特権を持った志願者を優先して入学させる手法について「『機会』ではなく『特権』(による入学)を拡大している」として、「教育省に調査を指示する」と述べた。その後、ミネソタ大学やコネティカット州のウエスレヤン大学は、このようなレガシー入学の制度を廃止すると発表した。レガシー入学制度については、教育省からの民事調査がハーバード大学で進められている(ロイター2023年7月25日)。
注4:
本稿では、DEAIに統一する。
注5:
SHRMのウェブサイトに掲載されたジェーン・ケロッグ・マレー氏の2023年4月21日付記事に基づく。
注6:
ウォール・ストリート・ジャーナル紙電子版の2023年7月21日付報道に基づく。
注7:
SHRMのウェブサイトに掲載されたマット・ゴンザレス氏の2023年3月15日付記事に基づく。
注8:
ABCニュースの2023年7月7日付報道、レベリオラボの2023年2月7日付記事に基づく。
注9:
ウォール・ストリート・ジャーナル紙電子版の2023年7月21日付記事に基づく。
注10:
カリフォルニア州、ミシガン州、ネブラスカ州、ワシントン州。
注11:
アジア系女性は、元々、総数が少なかったため、大幅減となった模様。
注12:
2023年6月29日にホワイトハウスで行われた記者会見での発言。
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執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所
吉田 奈津絵(よしだ なつえ)
在米の公的機関での勤務を経て2019年からジェトロ入構。