先端ブラック ジャック 勝ち 方管理・人材流出対策を期し、新法制定(韓国)
違反には重い罰則、今後の詳細規定に注意
2022年5月30日
昨今の通商関係をめぐる国際的な潮流を表現する際、「経済安全保障」というキーワードを目にすることが多くなった。経済安全保障は、その多様性から厳密な定義づけが難しい。一般的には、「経済」と「安全保障」の密接な関連性から生じる国家レベルの損失を未然に防ぐ各般の対策が含まれていると考えられる。具体的には、(1)重要物資(注1)のサプライチェーンに関し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う混乱を回避する対策、(2)主要国間の経済摩擦が過熱する中で、先端ブラック ジャック 勝ち 方の開発・育成・管理に向けで「国」が積極的に関与する施策、などが考えられる。さらには、(3)ロシアによるウクライナ侵攻を契機としてエネルギーや食糧のサプライチェーンを確保することも、この経済安全保障の文脈で語ることができそうだ。このような考え方は、自由貿易体制からの経済システムの変革期に顕著だ。韓国も国際社会の一員として、同様の経済安全保障に対する体制を構築しつつある。
特に(2)については、「国家先端戦略産業競争力強化および保護に関する特別措置法」(以下、国家先端戦略産業法)が重要トピックとして挙げられる。ちなみに当法は2022年2月3日に制定され、当年8月4日から施行されることになっている。本稿では、国家先端戦略産業法が目指す方向性や、ビジネス関係者にとっての留意点について、概要を紹介する。なお国家先端戦略産業法は現在、下位法令などを順次整備中だ。そのため、詳細が不明なところもある点をあらかじめ申し添えておく。
国家先端戦略産業法制定の狙いは、先端ブラック ジャック 勝ち 方の管理強化、育成・保護
国家先端戦略産業法が制定された目的とは何か。同法第1条は、「国家先端戦略産業の革新サプライチェーンの造成とブラック ジャック 勝ち 方力の強化を通じて、産業の持続可能な成長基盤を構築することにより、国家・経済安全保障と国民経済の発展に資すること」と規定する。この目的に立って、当法には(1)国家先端戦略ブラック ジャック 勝ち 方に関する規定、(2)国家先端戦略産業に関して、それぞれ規定される。それらの中で、国家先端戦略ブラック ジャック 勝ち 方保有者に対する規制や、先端戦略産業の育成、保護などの支援について盛り込まれている。
韓国では、重要技術の管理に関して、既に2007年4月に「産業技術の流出防止および保護に関する法律」(以下、ブラック ジャック 勝ち 方)が施行済みだ。その目的とするところは、「産業技術の不正な流出を防止し、産業技術を保護することによって、国内産業の競争力を強化し、国家の安全保障と国民経済の発展に資すること」にある(図参照)。
国家先端戦略産業法とブラック ジャック 勝ち 方の両法とも、一定の重要技術を指定し、指定された技術について一定の制限が課される点で同様だ。そのため、両者の適用関係について、国家先端戦略産業法第4条2項に整理規定が置かれた。すなわち、国家先端戦略産業法に特別な規定がある場合を除き、ブラック ジャック 勝ち 方が適用されることになっている。従って、第4条2項が当たらず法適用される場合に限って、個別の状況に合わせて同法上で判断しなければならない。なおその際には、ブラック ジャック 勝ち 方など他の法律との関係について、国家先端戦略産業法の各条項が定める内容に基づくことになる。
次節で、国家先端戦略産業法とその他の法律の適用関係を整理してみる。
新法が扱う先端ブラック ジャック 勝ち 方の範囲は
国家先端戦略産業法が適用される先端ブラック ジャック 勝ち 方の対象と範囲は、現時点で明確化されていない。法律上は原則的に「産業通商資源部長官は、ブラック ジャック 勝ち 方調整委員会の審議および委員会の審議・議決を経て戦略ブラック ジャック 勝ち 方を指定することができる」(国家先端戦略産業法第11条)と規定されにとどまる。
ちなみに、産業技術保護法では、国内外市場で技術的・経済的価値が高いか、関連産業の成長潜在力が高くブラック ジャック 勝ち 方に流出する場合、国家安全保障および国民経済の発展に重大な影響を及ぼす技術が「国家核心技術」として指定されることが規定されていた(産業技術保護法第2条)。なお、同法に言う国家核心技術は表1のとおりだ。
対して国家先端戦略産業法には、従来なかった仕組みが盛り込まれた。すなわち、企業自らが国家先端ブラック ジャック 勝ち 方への指定を希望できることだ。企業が自社保有ブラック ジャック 勝ち 方について指定を希望する場合は、産業通商資源部長官に申請する。その後、ブラック ジャック 勝ち 方調整委員会と国家先端戦略産業委員会を経て、先端ブラック ジャック 勝ち 方として指定されることになる(注2)。この場合、企業側は、自社のブラック ジャック 勝ち 方が先端ブラック ジャック 勝ち 方の指定を受けることで、第4章で規定するインセンティブが享受できるようになる。その半面、ブラック ジャック 勝ち 方管理に一定の制約が課されることにもなる。
また、国家先端戦略産業法では、「同法に基づいて先端戦略技術を指定・変更・解除した際は、ブラック ジャック 勝ち 方第9条の国家核心技術を指定・変更・解除したと見なす」と規定された(国家先端戦略産業法第11条第7項)。この規定から、ブラック ジャック 勝ち 方上の国家核心技術は、国家先端戦略産業法上の先端戦略技術と重複する場合がありうると考えられる(表1参照)。
分野 | ブラック ジャック 勝ち 方 |
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半導体 (11ブラック ジャック 勝ち 方) |
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ディスプレー (2ブラック ジャック 勝ち 方) |
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電気 電子 (4ブラック ジャック 勝ち 方) |
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自動車・鉄道 (9ブラック ジャック 勝ち 方) |
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鉄鋼 (9ブラック ジャック 勝ち 方) |
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造船 (8ブラック ジャック 勝ち 方) |
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原子力 (5ブラック ジャック 勝ち 方) |
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情報通信 (7ブラック ジャック 勝ち 方) |
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宇宙 (4ブラック ジャック 勝ち 方) |
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生命工学 (4ブラック ジャック 勝ち 方) |
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機械 (7ブラック ジャック 勝ち 方) |
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ロボット (3ブラック ジャック 勝ち 方) |
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出所:ブラック ジャック 勝ち 方第9条関連、ジェトロ仮訳
ブラック ジャック 勝ち 方輸出や合併・買収の際、産業通商資源部の承認が必要
国家先端戦略産業法上、先端戦略技術を外国企業などに輸出しようとする場合、または先端技術の保有者がブラック ジャック 勝ち 方M&A・合弁投資(以下、「合弁など」)を進めようとする場合、事前に産業通商資源部長官による承認が必要になる。また、国家先端戦略産業法に基づき承認を取得した場合、産業技術保護法に基づく輸出・合弁などの承認を取得、または申告したと見なされる(国家先端戦略産業法第12条第5項、第13条第8項)。
ブラック ジャック 勝ち 方では、国から研究開発費の支援を受けて開発した国家核心技術については、原則として、当該技術の輸出または当該技術保有者の合弁を進めるには産業通商資源部長官の「承認」を得なければならない。ただし承認対象外の場合もある。その場合は、産業通商資源部長官に「申告」しなければならないにとどまる(ブラック ジャック 勝ち 方第11条第1項および第4項、第11条の2第1項および第5項)。一方、国家先端戦略産業法では、国による研究開発費支援の有無を問わず、産業通商資源部長官の「承認」を要する。また、当該先端戦略技術の輸出と、当該先端戦略技術の保有者の合併推進など、いずれの場合もその対象になる。一律に、「承認」取得が義務付けられていることから、手続き面では規制がブラック ジャック 勝ち 方より強化されたと言える。もっとも、ブラック ジャック 勝ち 方上の承認手続きと申告手続きは、実務面では大きな違いはない。国家先端戦略産業法でいずれの場合も承認義務を定めたことで、実質的に大きな影響を及ぼすとは言えないだろう。
国家先端戦略産業法では、先端戦略技術の輸出または先端戦略技術の保有者の合併などについて、承認手続き上、ブラック ジャック 勝ち 方と実質的に同様の規定を設けられた。一方、それ以外の承認・中止・禁止・原状回復などの手続きについては、ブラック ジャック 勝ち 方を準用すると定めている(国家先端戦略産業法第13条第9項)。従って、先端戦略技術の輸出または先端戦略技術の保有者の合併などに対する承認手続きは、基本的に国家先端戦略産業法に従うことになる。具体的には、国家先端戦略産業法の下位規定に手続きの詳細が規定されると予想される。そのため、今後の下位規定の制定内容を注視する必要がある。
専門人材の転職制限や出入国情報提供義務などを規定
国家先端戦略産業法は、先端戦略技術の保有者に対し、先端戦略技術の流出防止のための保護措置義務を課す(国家先端戦略産業法第14条)。この場合でも、国家先端戦略産業法に特別の規定がある場合を除いて、ブラック ジャック 勝ち 方に基づく保護措置が適用される(国家先端戦略産業法第4条第2項)。
国家先端戦略産業法の保護措置には、先端戦略ブラック ジャック 勝ち 方を取り扱う人材の離職管理や機密保持に関する契約の締結が含まれている(国家先端戦略産業法第14条第1項第2号)。さらには、先端戦略ブラック ジャック 勝ち 方の保有者は産業通商資源部長官に対し、先端戦略ブラック ジャック 勝ち 方を扱う専門人材への指定を求めることができる。その上で、指定を受けた専門人材に対して、以下の措置を講ずることができる(参考参照)。
参考:国家先端戦略産業法における専門人材の保護規定
第14条(戦略ブラック ジャック 勝ち 方の保護措置など)
-
(4)第2項に基づき専門人材などの指定を受けた戦略ブラック ジャック 勝ち 方の保有者は、専門人材などに対し、次の各号の事項を含む契約を結ぶことができる。
- ブラック ジャック 勝ち 方の同業種への転職制限およびその期間
- 戦略ブラック ジャック 勝ち 方にかかる機密流出の防止
- 退職後の再就職の情報の提供などその他大統領令で定める事項
-
(5)第2項に基づいて専門人材などの指定を受けた戦略ブラック ジャック 勝ち 方の保有者は次の各号のいずれかに該当する場合、産業通商資源部長官に当該専門人材の出入国情報の提供を求めることができる。
- 戦略ブラック ジャック 勝ち 方を扱う専門人材の同意を得た場合
- 戦略技術のブラック ジャック 勝ち 方流出が強く懸念される場合
- その他、戦略技術のブラック ジャック 勝ち 方流出防止のため大統領令で定めた場合
- (6)産業通商資源部長官は第5項に基づいて申請を行った者に提供する目的で、法務部長官に対し当該専門人材の出入国情報の提供を要請することができる。この場合、法務部長官は特別な事由がなければ、当該情報を提供しなければならない。
出所:国家先端戦略産業法第14条を抜粋、ジェトロ仮訳
なお、産業技術保護法でも、国家核心技術には、国家先端戦略産業法第14条と類似した措置がある(産業技術保護法第10条)。ただし、国家先端戦略産業法下では契約などにあたり、より強い制約を受けるという点で、違いがある。ブラック ジャック 勝ち 方同業種企業への転職制限や、再就職の情報提供などは、その一例だ。特に、専門人材の出入国情報の提供を認める措置は産業技術保護法に規定はない。この規定は、国家先端戦略産業法で新たに導入された制度だ。手続きの詳細は、今後規定される下位法令に委ねられる。
ブラック ジャック 勝ち 方下の申告・承認実績などを確認
既に施行されている産業技術保護法の下、技術輸出とブラック ジャック 勝ち 方M&Aについての事前承認などについて、実績を表2にまとめた。
区分 | 判定 | 輸出申告 | 輸出承認 | ブラック ジャック 勝ち 方M&A |
---|---|---|---|---|
2019年 | 88 | 48 | 16 | — |
2020年 | 72 | 34 | 21 | 2 |
2021年(1~9月) | 84 | 43 | 20 | — |
出所:産業通商資源部「第4次産業ブラック ジャック 勝ち 方の流出および保護に関する総合計画」
重い罰則規定も
ブラック ジャック 勝ち 方では、国の研究開発費を受けて開発した技術の場合と、それ以外の場合で、それぞれ「承認」または「申告」の手続きを定めている(表3参照)。一方、国家先端戦略産業法ではこうした区分がない。全ての先端戦略技術の輸出、または先端戦略技術の保有者の合併などに対し、「承認」手続きを求めている。では、先端戦略産業技術の輸出または先端戦略技術保有者の合併などにあたり、手続きの詳細はどこに規定されているのだろうか。それらについては、商品申請書の様式や添付資料とあわせ、国家先端戦略産業法の下位規定で定められることになりそうだ。
表3:ブラック ジャック 勝ち 方上の各書類様式
承認/申告 | 申請書/申告書 | 添付書類 |
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承認 | 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の輸出承認申請書 |
国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の売却または移転契約書(仮契約書を含む) 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の買収者または移転を受けようとする者に関する事項 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の用途と性能を示したブラック ジャック 勝ち 方資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の提供条件と方法 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方を使った関連製品の市場規模と競争力の水準 国から支援を受けた研究開発費に関する資料 |
申告 | 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の輸出申告書 |
国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の売却または移転契約書(仮契約書を含む) 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の買収者または移転を受けようとする者に関する事項 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の用途と性能を示したブラック ジャック 勝ち 方資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の提供条件と方法 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方を使った関連製品の市場規模と競争力の水準 |
承認/申告 | 申請書/申告書 | 添付書類 |
---|---|---|
承認 | 国家核心技術のブラック ジャック 勝ち 方合併・買収などの承認申請書 |
ブラック ジャック 勝ち 方M&Aなどにかかる契約書または計画書 ブラック ジャック 勝ち 方M&Aなどを進める外国人の名称、主な株主状況、売上高、資産総額および事業内容に関する資料 当該ブラック ジャック 勝ち 方M&Aなどの内容および関連市場の状況に関する資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の用途と性能に関する資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の提供条件と方法に関する資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方を使った関連製品の市場規模と競争力の水準に関する資料 国から支援を受けた研究開発費に関する資料 |
申告 | 国家核心技術のブラック ジャック 勝ち 方合併・買収などの申告書 |
ブラック ジャック 勝ち 方M&Aなどにかかる契約書または計画書(産業技術保護法の第11条の2第2項または第6項に基づいて申告する場合は、(国から研究開発費の支援を受けて開発した国家核心技術を有する)対象機関が保有している場合のみとなる) ブラック ジャック 勝ち 方合併・買収などを進める外国人の名称、主な株主条項、売上高、資産総額および事業内容に関する資料 当該ブラック ジャック 勝ち 方M&Aなどの内容および関連市場に関する資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の用途と性能に関する資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方の提供条件と方法に関する資料 国家核心ブラック ジャック 勝ち 方を使った関連製品の市場規模と競争力の水準に関する資料 国から支援を受けた研究開発費に関する資料(ブラック ジャック 勝ち 方の第11条の2第2項の規定による申告を行う場合のみ) |
出所:ブラック ジャック 勝ち 方施行令からジェトロ抜粋
これまで述べたとおり、国家先端戦略産業法の下位法令はいまだ検討中だ。そう考えると、本件を今の時点で報告するのは、時期尚早だったかもしれない。しかし、同法に違反した場合、最大20年以下の懲役または20億ウォン(約2億200万円、1ウォン=約0.101円)以下の罰金が科されることになっている(国家先端戦略産業法第50条、先端ブラック ジャック 勝ち 方を未承認で輸出した場合など)。そのため、予防的観点から本稿を作成してみたものだ。あらためて下位法令の全体像が公布・告示された時点で、内容をアップデートすることとしたい。
- 注1:
- 国・地域が置かれたそのときどきの状況によって、重要物資が示すものは変動しうる。例えば、半導体、マスク、消毒液、原材料など、いずれも重要物資になりうる。
- 注2:
- 企業が自社保有ブラック ジャック 勝ち 方について指定を希望する手続きとして本文に記した内容は、立法予告段階での施行令案に基づく。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ソウル事務所 副所長
当間 正明(とうま まさあき) - 2020年5月、経済産業省からジェトロに出向。同年6月からジェトロ・ソウル事務所勤務。