コロナ新変異株発見以降、航空貨物に混乱(南アフリカ共和国)
日系物流業者に事態打開のヒントを聞く
2021年12月9日
南アフリカ共和国(以下、南ア)政府の報告を受け、11月26日に世界保健機構(WHO)は、新型コロナウイルスの新たな変異株を「オミクロン」株と命名した。その後、中東や欧州の航空会社が南ア発着の航空便を即座に停止。世界各国がオミクロン株流入を防ごうと直ちに水際対策を強化した結果、南アは瞬く間に世界から孤立を強いられてしまった。
こうした国際社会の動きは、現地の物流や日本企業のビジネスにどの程度の影響を及ぼしたのか。阪急阪神エクスプレスが出資する南アの物流企業、イントラスピードでセールスマネジャーを務める森河淳氏に話を聞いた(12月3日)。
- 質問:
- オミクロン株の発見から現在(12月3日時点)まで、南アフリカ共和国の物流にどの程度影響があったか。日本企業のビジネスへの影響は。
- 答え:
- 海上貨物への影響は、中規模の船会社が抜港した程度で軽微だった。一方、航空貨物では、国際線就航の一時停止など、大きな影響が出た。利用日本企業にも影響が出ている。
- もっとも、日本の一部メディアで報道されていたような騒動はない。12月3日時点で、南ア側での港・空港・陸路国境での大きな混乱は見られていない。
- 質問:
- 航空貨物への具体的な影響は。
- 答え:
- 今回の変異株発見に伴い、航空会社や各国政府が対応を迅速な決定した。そのため、物流業者・輸入者は大きな混乱に陥った。
- もともと、2021年は新型コロナ禍による世界的な海上貨物の混乱や半導体不足などの影響で、航空貨物のニーズが高まっていた(注)。加えて、クリスマス前は物量が大きい時期に当たるため、今回の影響は大きい。日本発の航空貨物を例にとると、1~6月の航空貨物量は前年同期比60%強増えていた。これは、コロナ前の2019年1~6月と比べて20%ほど多い水準だ。
- 日本政府の規制強化や要請により、航空便各社は運航停止または減便を余儀なくされた。その中でコロナ前より大きい物量の貨物を輸送しなければならないため、現場の混乱が広がっている。
- 状況は、航空会社により異なる。だとしても、現実に旅客便の座席部分を貨物スペースに活用するPAXフレイターや、貨物専用便などで対応している航空会社がある。そもそもコロナ前からニーズが高まっていた航空貨物業界では、今回の減便などにより需給バランスが崩れてしまった。このことで、航空会社で積み残し貨物が発生。新規の予約受託を一定期間受け付けない航空会社まで出てきている。
- 質問:
- 南ア周辺国への物流の影響はどの程度か。
- 答え:
- 南アは、南部アフリカ開発共同体(SADC)のハブでもある。その南アに貨物が時間通りに到着しないので、当地を経由した周辺諸国への輸送も遅延が発生してきている。
- なお、現時点では、SADC間での国境閉鎖は起きていない。ただし、今後の感染者拡大によっては、さらに物流が混乱するリスクも大いにある。
- 質問:
- 今後の物流リスクは。
- 答え:
- 1つ目のリスクは、感染拡大にともない、南ア政府がロックダウンのレベルを引き上げることだ。次に、トラッカーや港湾労働者、陸路国境の物流現場作業者、税関などの間に感染が拡大していくこと。2020年と同様に(新型コロナウイルス感染拡大で、ブラック ジャック)、現場で実際に貨物を動かす人たちがいなくなると、物流の混乱がさらに広がっていく可能性は否めない。
短期的には在庫増、中長期的に調達先・物流多角化などが課題
- 質問:
- リスク回避のために日本企業が準備すべきことは。
- 答え:
- 当社の南ア法人は、南ア企業を買収した出資経緯から、非日系の顧客実績が多数ある。非日系企業各社は短期的な対応として在庫を増加させてきた。この点は、日系企業にも参考になるだろう。また、保税倉庫を活用して在庫拠点を新たに作り、物流混乱のリスクヘッジを計画している企業も多い。
- 一方、中長期的な対応としては、(1)サプライチェーンの多元化にともなう調達先の多角化、(2)三国間貿易の拡充、(3)物流の透明性確保などが考えられる。実際、物流会社を複数起用する動きもみられる。ブラック ジャック やり方 カジノ取得の観点から、1社集中購買を脱しようというわけだ。このような具体的な動きは、日系企業より早い。日系企業も後れをとらないよう、早めの対策が必要と感じている。
- 残念ながら、海上貨物や航空貨物の混乱はすぐに落ち着くことはない。今までのようなリードタイムやコストレベルに戻るのは、当面先になると思われる。アフリカでは、物流インフラが脆弱(ぜいじゃく)だ。リスクヘッジの観点からも、サプライチェーンの抜本的な見直し時期に入っているのではないかと考えている。
- 注:
- 海上物流の混乱としては、半導体不足などとも絡んでコンテナ不足、港湾での処理停滞、輸送の遅延などについて報じられている。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
堀内 千浪(ほりうち ちなみ) - 2014年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ浜松などを経て、2021年8月から現職。