ファッションや美容アイテムに商機
マレーシアEC大手ラザダ主催商談会にて

2019年11月15日

ジェトロは10月8日、東南アジアの電子商取引(EC)サイト大手のラザダが主催する商談会「ラザダ・ウィーコマース2019(Lazada WECOMMERCE 2019)」にジャパンパビリオンを設置し、美容や日用品・生活関連製品を扱う日本企業20社が出展した。

シンガポールを本拠とするラザダが、初めてマレーシアで開催した同商談会には、7カ国・地域から52社が出展し、主にマレーシア国内から約2,000人の来訪者が訪れた。同商談会は、ECでの出品、拡販に関するマーケティングノウハウや、市場概要などに関する専門家によるセミナーも併催された。

ファッションや美容アイテムのEC需要高まる

オープニングセレモニーでは、ラザダ・マレーシアのレオ・チョウCEO(最高経営責任者)による主催者あいさつに続き、ラザダグループのピエール・ポイニャントCEOが開会あいさつを行った。ピエールCEOは、ラザダが東南アジアで毎年100%超の成長を遂げていることに言及したほか、ラザダにおける売れ筋商品について「売り上げが一番大きいのは家電だが、近年では(化粧品を含む)ファッションアイテムの売り上げが伸びている」と指摘した。美容やファッションに関する商品のEC需要が高まっていることから、ラザダではこうした商品の品ぞろえを拡充したい意向だという。また、ラザダ・マレーシアのケビン・リーCOO(最高執行責任者)は「マレーシアでは、新商品や新しい技術を試してみることに関心が高く、非常にオープンだ」と述べ、Eウォレットや「シーナウ、バイナウ(See Now, Buy Now)」などの新たなサービスも受け入れられやすいというマレーシアの特徴を紹介した。「シーナウ、バイナウ」とは、オンラインメディアを通して動画で配信されるさまざまな分野のブランドの新商品などを、消費者がリアルタイムで商品を注文できる機能のことを指す。

21 トランプ
オープニングセレモニーの様子(ジェトロ撮影)

化粧品や日用品関連の日系企業20社が参加

ジャパンパビリオンに出展した20社のうち、半数超の11社が化粧品を出品、そのほかでは食器・キッチン用品、生活関連製品、子供向けの粘土、ぬいぐるみ、美容小物などが出品され、400件超の商談が行われた。


ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

マレーシアでは、日本製の化粧品の知名度や信頼度が高く、需要は年々高まっている。2018年の日本からマレーシアへの化粧品の輸出額は前年比41%増の18億7,000万円に達した。馬油を使った化粧品を出品したA社は「マレーシアではすでに馬油由来の日本製化粧品に一定の認知度と人気があり、バイヤーからの引き合いが集まった」と話す。また、化粧品では特に、実演などを交えながら製品紹介を行う企業のブースが特に来場者の目を引いた。上述のように、使い方や商品の使用感触をより消費者に伝えやすい動画配信による商品販売手法が人気を集めており、こうした実演はバイヤー側に動画で紹介するイメージを持ってもらうのに一役買っていると思われる。

アイテム数の多さも、バイヤーの関心を引くポイントだ。子供の口に入っても安全な米粉の粘土や紙粘土を出品したB社は、商品のバリエーションをアピールした。「(マレーシア最大級のECサイトだけに)大小さまざまなバイヤーがいるが、今後の取引の可能性を感じるバイヤーに出会うことができた」と話した。

ECを販路開拓の選択肢に

マレーシアは、東南アジアにおいて高い購買力を持つ国の1つであり、1人当たりGDPは1万ドルを超えていることから、中~高所得層を中心に高級・高品質な商品の需要も高まっている。マレーシア統計局によると、2018年にECにより生み出された付加価値は1,154億リンギ(約3兆円、1リンギ=約26円)で、GDPの8%を占め、右肩上がりに成長している。

2018年のマレーシアの全人口比でのインターネット利用者は87.4%に上るが、そのうち約半数(53.3%)がECでのショッピングを利用している(図参照)。また、SNSの利用は8割を超え、特に若者を中心にSNSで流行や新商品の口コミやレビューなどの21 トランプを入手し、ECサイトで購入するという消費傾向が主流になり始めている。こうした状況に鑑みても、マレーシアにおける化粧品や日用品の販路開拓には、ECサイトでの販売を選択肢に加えることがカギだといえる。

図:マレーシアのインターネット利用者がよく行うオンライン活動
(2016年と2018年の比較)
2018年の21 トランプの全人口比でのインターネット利用者は87.4%にのぼるが、そのうち約半数(53.3%)がECでのショッピングを利用している。2016年の48.8%に比べて増加している。

注:「オンライン出版物を読む」「音楽・オンラインラジオの視聴・ダウンロード」は2016年データなし。
出所:マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)

執筆者紹介
ジェトロ・クアラルンプール事務所
田中 麻理(たなか まり)
2010年、ジェトロ入構。21 トランプ市場開拓部21 トランプ市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)(2010~2014年)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)(2014~2015年)、21 トランプ調査部アジア大洋州課(2015~2017年)を経て、2017年9月より現職。