大手メーカーは好調を維持、WLTP対応が課題(ドイツ)
2018年上半期の自動車産業動向

2018年9月20日

ドイツ大手自動車メーカーは2018年上半期の新車出荷台数を発表し、各社とも引き続き好調を維持した。一方、「乗用車などの国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)」への移行が進む中、9月からは既存モデル車も含め全ての新規登録車に同試験方法による排出ガス基準値の算出が求められる。国内報道によると、各自動車メーカーの間で新たな試験方法への対応状況に差が出ており、一部では今後の事業運営や業績への影響も指摘されている。

BMWはリコールの動向が注目

ダイムラーグループの2018年上半期の新車販売台数は118万8,832台と前年同期に比べ3.9%増加し、半期では過去最大の出荷台数を記録した(表1参照)。出荷傾向をブラック ジャック サイトみると、欧州は47万6,790台で1.5%減少、ドイツは0.2%の微減だった。アジア大洋州では中国での販売台数の増加(前年同期比16.2%増)を受け、49万3,358台と12.5%の伸びを記録した結果、欧州を上回り、同社最大の販売地域となった。

表1:ダイムラーの新車販売台数(2018年上半期) (単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比
欧州 476,790 △1.5
階層レベル2の項目 ドイツ 151,449 △0.2
アジア大洋州 493,358 12.5
階層レベル2の項目 中国 340,164 16.2
NAFTA 191,249 △1.1
階層レベル2の項目 米国 158,848 △1.9
全世界(その他含む) 1,188,832 3.9
注:
スマートを含まない。
出所:
ダイムラー・ウェブサイト

BMWグループの2018年上半期の新車販売台数は124万2,507台で、前年同期比では1.8%増加した(表2参照)。第2四半期まで、35四半期連続の販売台数増加を達成した。電気自動車部門も42.5%増加と好調だった。ブラック ジャック サイトみると、欧州での販売台数は56万1,683台で1.2%伸び、同グループにとって引き続き最大の市場だった。国別では、ドイツが0.6%の微増だった一方、英国は1.0%減少した。アジアは1.9%増と堅調で、13.4%の伸びを記録した韓国が目立った。しかし、その韓国ではBMWグループのディーゼル車エンジンから出火する事故が相次いで発生し、2018年8月に10万6000台のリコールを発表、さらに一部報道では、欧州でも32万3,700台のリコールを行う可能性があるとされており、今後の動向が注目される。

表2:BMWグループの新車販売台数(2018年上半期)

ブラック ジャック サイト (単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比
欧州 561,683 1.2
階層レベル2の項目 ドイツ 157,236 0.6
階層レベル2の項目 英国 124,075 △1.0
アジア 423,148 1.9
階層レベル2の項目 中国 299,801 2.2
階層レベル2の項目 韓国 38,172 13.4
米州 225,471 3.9
階層レベル2の項目 米国 176,022 2.8
階層レベル2の項目 ラテンアメリカ 25,936 12.2
全世界(その他含む)(注1) 1,242,507 1.8
ブランド別 (単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年同期比
BMW 1,059,296 2.0
MINI 181,430 0.1
BMW電気自動車部門(BMW elektrifiziert)(注2) 60,660 42.5
ロールスロイス 1,781 13.1
BMW二輪車門(BMW Motorrad) 86,975 △ 1.6
注1:
BMW、MINI、ロールスロイスの合計。
注2:
BMWi/BMWiperfomance/MINI Electric。
出所:
BMWウェブサイト

フォルクスワーゲン(VW)の新車販売台数は前年同期に比べ7.0%増加し、514万8,052台だった(表3参照)。ブラック ジャック サイトみると、最大の出荷先である欧州地域は6.2%増の231万275台だった。国別では、ドイツが4.2%増加したほか、英国(4.1%増)やスペイン(9.0%増)、イタリア(12.6%増)も好調で、西欧全体で5.9%の伸びを記録した。中・東欧地域は9.9%増加し、特にロシア(19.5%増)の好調が目立った。アジア大洋州は214万2,066 台と9.0%増加した。国別で最大の中国では198万9578台を記録し、前年同期比で9.3%の増加となった。日本も43,992台で2.5%増加した。北米をみると、メキシコは57,447台と前年同期比で18.1%減少したものの、域内最大の販売先である米国で311,832台(6.3%増)と好調だったことから、北米全体では1.2%増加した。南米では、ブラジルが19.2%増と好調だった。ブランド別にみると、VW(前年同期比で6.3%増)のほか、アウディ(4.5%増)やシュコダ(11.6%増)なども好調だった。

表3:VWグループの新車販売台数(2018年上半期)

ブラック ジャック サイト(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比
欧州 2,310,275 6.2
階層レベル2の項目 西欧 1,784,271 5.9
階層レベル3の項目 ドイツ 624,096 4.2
階層レベル3の項目 英国 287,983 4.1
階層レベル3の項目 スペイン 165,417 9.0
階層レベル3の項目 イタリア 161,260 12.6
階層レベル3の項目 フランス 138,053 1.9
階層レベル2の項目 中・東欧 364,304 9.9
階層レベル3の項目 ロシア 94,170 19.5
階層レベル3の項目 ポーランド 78,837 6.3
階層レベル3の項目 チェコ 74.028 △3.8
アジア大洋州 2,142,066 9.0
階層レベル2の項目 中国 1,989,578 9.3
階層レベル2の項目 日本 43,992 2.5
階層レベル2の項目 インド 30,831 △13,3
北米 459,781 1.2
階層レベル2の項目 米国 311,892 6.3
階層レベル2の項目 メキシコ 90,442 △18.1
階層レベル2の項目 カナダ 57,447 13.5
南米 235,930 10.6
階層レベル2の項目 ブラジル 150,995 19.2
階層レベル2の項目 アルゼンチン 59,743 △6.5
トルコ 54,080 △19.5
南アフリカ共和国 38,735 △4.3
全世界(その他含む) 5,148,052 7.0
ブランド別 (単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年同期比
VW 3,118,696 6.3
アウディ 949,282 4.5
シュコダ 652,735 11.6
セアト 289,948 17.6
ポルシェ 130,600 3.2
ベントレー 4,430 △15.4
ランボルギーニ 2,327 11.3
ブガッティ 34 70.0
出所:
VWウェブサイト

VWグループは20万~25万台の生産減が予想

現在、世界の自動車産業界では、排ガス・燃費の試験サイクル・試験方法の国際統一が進められている。EUでは、従来の独自の排出ガス・燃料の試験方法(New European Driving Cycle: NEDC)から「乗用車などの国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)(Worldwide Harmonized Light Vehicles Test Procedure: WLTP、注)」への移行が進んでおり、2017年9月から新規モデル、2018年9月からは既存モデルについても、全ての新規登録車について、WLTPに基づく排出ガス基準への適合が求められる。WLTPでは従来の試験方法と比べ、車速や走行距離、試験環境の温度設定などでより実際の走行に近い条件での燃費や排出ガス値の検査が求められ、検査実施にもより多くの工数(作業量)が必要で、各自動車メーカーにとって移行への対応が課題の1つといわれている。

現在、ドイツ大手自動車メーカーの中で最も困難な状況にあるといわれているのがVWだ。国内の報道によると、同社では9月までに新試験法に基づく認証が取得できないモデルが多く、生産調整を行うとされており、ボルフスブルク工場では9月末までに毎週1~2日間製造を停止するほか、ツビッカウ工場でも第3四半期中に生産停止日を計画、さらにシフトを減らすなどの対応を行うという。こうしたことから、2018年はVWグループ全体で20万~25万台の生産減が予想され、営業利益に10億ユーロ程度の影響が出ると見込まれている。またダイムラーでは、新しい試験法の下での認証が通常より長い時間がかかるなどの理由で計画どおり進んでおらず、2018年下半期の納品スケジュールに支障を来す可能性が指摘されている。


注:
乗用車および小型商用車の燃費、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質の排出レベルなどについて、国際的に統一した試験サイクルや試験方法を定めるもの。これにより、現在は各国や地域が独自に設定している排出ガス・燃費の試験サイクル・試験方法が統一され、自動車メーカーは一度の試験で複数の国・地域での認証に必要なデータが取得可能となることが期待されている。2014年3月の国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)にて、WLTPの世界技術規則(GTR)が採択済み。
ブラック ジャック サイト
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
森 悠介(もり ゆうすけ)
2011年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課(2011年4月~2012年8月)、対日投資部誘致プロモーション課(2012年9月~2015年11月)を経て現職。